ことばや

矢島です。言葉売りをしております。 音楽や小説や詩などを書きます。 お仕事依頼は wo…

ことばや

矢島です。言葉売りをしております。 音楽や小説や詩などを書きます。 お仕事依頼は wordstore.official@gmail.com まで。

マガジン

  • 詩のようなものもの

    自分で書いたものの中の、詩のような短いものです。シとはいうものの、死的ではなく、ですが私的に近いものではあります。恣意的かどうかは想像にお任せします。

  • よろこびのたね

    ちいさなことばたちです。 詩にも散文にもならない、ちいさなことば。 読む人の喜びの種になることを願って。

  • 小説

    今までにnoteに投稿した短編小説のまとめです。

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u n t i t l e d (lyric)

Word Writing by YAJIMA NOA Composed by HIRONAKAURA, YAJIMA NOA Vocal Recording at Half Green Sea - 半緑の海- (By Colin Leitch) Mix Engineer: Hiroyuki Kishimoto (umu) Mastering Engineer: Tsubasa Yamazaki (Flugel Mastering) Produced by Hiroko.W

    • 星を抱いて睡る女

      星を抱いて睡る女よ、その涙を溜めておいて小さな海を創ろう。窓際に止まった鳥がさう云ひ、風は梢を揺らすのに必死だつた。 暗紫色の眸をした男は読書の途中で顔を上げ、小銀河の回転に合はせてワルツを踊る。(銀色のシンク、スポンジの泡、ひとこと分だけ噛られたビスケット)。ザブンと飛び込んだ水飛沫が砕けて、それぞれに極微少なる太陽系を産む。 姫蔓蕎麦から取れた金平糖を袋にたくさん詰めて、行商は賣り歩く。白く丸るい石で舗装されている道を。燕子花のような青さの夕暮れ、行商の聲だけが淡く切

      • アイネクライネナハトムヂヰク

        枕元の小さな讀書燈に 照らされた手の甲の蕁麻疹を觀てゐた 顎にも痛む面皰がある ヱツセンシヤルオヰルの匂ひ 勿忘草が搖れる 黃金色の丘の上 わたくしの沈默と本の能辨さ 未發達な昆蟲たちの夜の騷めき 碧翠り色にぼんやりと光る植物は 睡たげに星の光を頸に受ける 誰ももう何も云はなひ アイネクライネナハトムヂヰク 幼い頃に聽いたままの其れは優雅で甘美で とても涼やかな大理石を思はせる 宮廷にいたのだ 確かに あの涼やかな宮廷でくちにする果實の 甘さ 瑞々しさは 今もあのひ

        • 8/17

          ザンザンと降る雨粒の凝り 午后の煌めきの搖らぎと 赤や白やきみどりにひかるすぐり 甘めかしいから浴槽のふちに あんまりに愛してゐすぎる 下唇の上に極微小な蜂鳥は かんびな蜜の匂ひを嗅ぎわける 葡萄酒の襟を正した背筋の キリッとしたその辛口に 傾げた首は 色を染めるのでせう 透き通つた植物たちの翳のしたを 我々は ザクザクザンザンと步き 未成熟に年老ひながら明星を探してゐる 偏光に滲んだ雫を1/f 柘榴石に集う蟲たちの話し聲 樹液ださうです あのひかり α Cygniを尾

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        u n t i t l e d (lyric)

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        • 詩のようなものもの
          126本
        • よろこびのたね
          30本
        • 小説
          69本

        記事

          八月十五日 雨が来ると皆が云ふ夜に

          美しい夢を見てゐた氣がする。天氣を見るために開けた窓から入つてきた蟲を逃がす時に見た星の明るさは、息をするみたいに切ないダアリアのポオトレヱト。 いつかクロアチアに旅したいと呟いた唇を思い出す度に圖書室の隅に咲いてゐた梔子が色濃く馨るのです。闇に溶ける山々の連峰の向かふで鮮やかに燃へてゐる星々。眞菰をもう一杯くださいますか? 斗宿の下、日本製の眼鏡をかけてゐる。流星群を見れない代わりに薰香を焚きます。透ける葉脈は靑々と怪しげに、この小さな街の夜をひとびとの夢に反映した。決

          八月十五日 雨が来ると皆が云ふ夜に

          夏の区役所

          遠ひ街に行きたくなる夜がある 行ったことのない駅で降りて 見知らぬホテルの部屋でひとり 無音の甕の底 無色透明になりたひ 翌日も予定をうしなつた手帳の白紙と よく晴れた知らない街のレストランで 食べたこともないメニユウを註文したひ 読みかけの本の続きは 頻尿の親爺の排泄物のやうに 本を開くとだらだらと流れる 発酵した果肉のついたままの珈琲豆を 焙煎して濾して 冷たく飲む理由は あんまりにも夏が曹達すぎる所為 礼賛してよ 裸の心で 猫と欠伸とほとほと歩いて バナナフイ

          夏の区役所

          百日紅の花は空に昇る

          だうしてかなど誰にわかろうものか 岩肌を露わに泰然とした山々を視るたび 胸が苦しく けれども息のしやすひ その理由などは 滲んだあかりを星に見立てて 賣る者の聲のかぼそいことは 少女の淚に 匹敵するほど ぬらぬらと碧翠りの ひかりを放つ石たちが水音の闇に うつらうつらと白晝夢を浮かべます 神樂錫ヂヤンヂヤン 植物 植物 植物 見渡す限りに 夜空に編隊を組み飛び回る宇宙船 惚けた瞳孔に 映してゐました 頬に觸れる第二關節 夏は夕暮を連れて山を赫く染める 夕餉の支度の音と

          百日紅の花は空に昇る

          夏の夢の詩人を撫ぜる指先

          巨大な古代の菩提樹 薄翅蜉蝣のやふな彼と 橫斷步道 カアテンの隙閒から光線が這入りこみ 遠い約束を蝶々結びした藥指 猛暑に搖らぐ土癧靑の上 こぼれた水がアメヱバのやうに 陰翳を懷に伸び縮みしてゐる 植物たちの曲線の在り方 鑛石のひそやかな密談 粘度の高い夏をべたりと塗られた カンポデルシエロ隕石 幾億光年も超へて旅してきたのだ 氣づけば繭は碧く光つてゐる 立方體の風と油彩畫に似た色を 胸いつぱひに吸ひこんだのだよ 野菜は水と陽光を彈く 透明に 薰陸を燃やし消へ

          夏の夢の詩人を撫ぜる指先

          美しさの底

          それは美しさの底だつた。透明な水を光が切り裂くやうに彩り、誰かの聲が聞こえた氣がしてならなひ。 翠り色の斜面やあまりに碧い海原を眺めては、一枚板で出來た机で手紙を書くのが好きだつた。いつだつて貴女は、私の前で機嫌が良さそうに、もしくはあまり良くなさそうにじつとりと汗をかいた肌を探してゐた。 自我を失った人々は都會で泣くことすらできずにいて、『とことはのまたたき』氏はそのことについていつもなげいてゐる。 私はトレミーの48星座を寢ながら見てゐて、戀のキユーピツドで音樂家の

          美しさの底

          生活圏内非日常

          少し濁った透明 水際の霧の深き早熟 果實といえど 絞つたダスタアが 銀色シンクの上で徐々に緩む 輕率な乘り換へ 快速の方が早いからね 健やかでいてくれと みなに祈りながら撫でる 猫の顎の裏のごりごり 腐つた柘榴が落ちた音 ぼとりと 濕つていて重たひ 首筋に鼻と唇を押し付けて 溜め息 燻んだ色の空と屋根の波 乾きかけの洗濯物と 汗ばむ皮膚 憂鬱なのは頭に蔦が這つてゐるからで ここもまた誰かの生活圈 都會じゃ睡れない 電磁波ぎざぎざだし 見逃した初夏 生まれたての

          生活圏内非日常

          悲しい日はパブロに

          夕闇に搖れる苹果の樹 赤と靑の混ぢつた陰翳の美しさ 遠くで鳥の囀り 名も知らぬ子の 脚元の草花で 靴が濡れる 空は把握出來ないほどに廣く 步道橋と虹が パツチワアクされる 都會の騷めきの波形だけ截られて おとはいつさいない よく耳をすませば レコオドノヰズが少しだけ それが悲しみの音なのだと云ふ なにかしらのなにか 球體になつている地平線 緩んだ夢と捻じ曲がった螺子 制汗劑の匂ひか知ら、靑 ......冷房が效きすぎてゐて憂鬱 血液に夏が混ぢつて 沸騰したの 七月の

          悲しい日はパブロに

          夏と海と南瓜

          町に夏がやつてきた かもめの書いた戀文に使われた 靑の洋墨壺を引き連れて 遠ひ海鳴りにうさぎごけの袋の內側で 蟲が酵素や微生物に消化される音の混ぢる 翡翠色のボタニカル音節 ピアノ・フオルテとからだの癒着した鍵盤彈きが 蔦に覆われた深い森の最奧で曲線を彈く 彼はもうこの森からは出られなひが それでよいのだと云ふ それでよいのだと いづれは植物が埋め盡くしてしまふだらう ざざあ ざざあ と 腐葉土を踏む音が徐々に淡くいろづき 氣がつけば波音に變化してゐる たれもいない

          夏と海と南瓜

          海風苹果

          数式星とアネモネ原論 (大富豪すら愛を欲しがってゐる) 靴すらないひとの見る原色の夢 牧歌的な叢を歩いて すこしばかり 鐡のにおひ 掻き壊した皮膚から 流れる赤い血の川 美しい歩き方 鮮やかな色の植物の下 葉の翳が模様を作つて 腕や腿を彩る きつねが走り去る影 尻尾の先の残像 空が見えないほどの流星群 あのすべてが宇宙船なんだよと 昼顔が ひかりの帯に笑いかける ひかりがあつまって ふとい帯になつていて 天の川みたいだ 凍らせた液体琥珀を 水で細かく割って 小さくし

          寝惚けた水菓子グルクン

          冷たい画家が赤を一筆 鷲の空を飛ぶ時のやうに さあつ と鮮やかに走らせるみたひに 寝過ぎたわたしは 整髪料を髪に すらあつ と 撫で付けて 起きて五分で飛び出す 一塊の困惑と 負荷を抱えて 乳飲子を産んだばかりの父親のやうな貌つきで わたしが走り抜けるすがたは はやすぎて 誰にも 見えはしない (瞬間のガラガラ 雷雨ではなく玩具の其れ) 毛細血管ぢみた街角 ひかりとかげの明滅 (回路の繋がり また切れる) 熒惑は夏日星 車窓の外に歪む色彩は印象派的で 實に印象派的なの

          寝惚けた水菓子グルクン

          子どもと星と戀

          竜舌蘭と五月晴れ 若竹の伸びゆく翠りに 星たちの透明な沈黙 水を飲んで 何万光年も先まで スピリツトクオウツの定理 シユトルウベ家のこどもたち 誰もが巨大な天体望遠鏡を持ち 火花の散るロングスカアトを見てゐる 窓からひかりが差す 常用薄明に白い一等星 なんだかやけに切ない氣がする 古い観察日誌に書かれた 幼い筆蹟は時間旅行者だ 老けもしなければ変化もしなひ 暦に書かれていない原生林 草笛と活動銀河核に 山椒魚の戀を踊らせて 子どもたちは輪になつて 土地に伝わる童唄を

          子どもと星と戀

          アアクトウルス鉱石と睡るアンモナヰト

          口述筆記、海沿いのカフエェ、海鳥と曇天。 赤い実をぶらさげた樹と百日紅の花。 波打ち際に揺れる音程。 目眩と白い喉に食い込んだ指のあと。 革靴は少し重たくて、英国製なので頑丈な造りをしてゐる。 報酬に木の実をみっつ。 麻布の指感触りを愛おしく名残り、変則的な唇の見る夢。 絹布、雀、水筒《すゐたう》、珈琲とラタトゥイユ。 書き損じさへ愛おしくなりそうな板張りの船底。 倒錯的でありながらも、清らか。 舌の根を奥に引っ込ませ 堰き止めた何かの正体をひとびとは知らない。 ノヰヂ

          アアクトウルス鉱石と睡るアンモナヰト