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日本語教師必見!中国における【日本語教育サービス5選】沪江网校、早道日語(倍普日语)、桜にほんご、新世界教育、日本村

以前、noteで中国の日本語教育市場についてまとめた。

中国大陸において、2019年のオンラインとオフラインを含む日本語教育市場は86.4億元(1,296億円)で、オンラインが30億元(450億円)、オフラインは約56億元(846億円)とかなり大きな市場があることを確認した。

今回は、その中国における日本語教育サービスとして多くの人に使われている5つのサービスを紹介したい。

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日本語教師で、特に中国人向けに教えている方々は、このような競争力のある優れたサービスがある中で、語学学習におけるネイティブ講師をどのように位置づけるか、その観点で是非参考になれば幸いだ。

これは私が2016年から中国人向け日本語教育に関わっている間に、学習者からよくその名前を聞いたサービスをもとに選んでいる。

(日本語を学ぶ場合、高校、大学などの教育機関で学ぶ場合と、民間の語学学校、教室で学ぶ場合の2パターンあるが、今回は後者に焦点を当てる)

以下、まず中国大陸における日本語学習者の実態を見て、オンラインとオフラインでそれぞれ以下のサービスを、メインプロダクトとターゲットの観点で紹介する。

オンライン

→沪江网校、早道日語(倍普日语)、日本村

オフライン

→新世界教育、桜にほんご

序:中国大陸における日本語学習者の実態

■中国における日本語学習者数

中国における日本語学習者数は(ある信頼できる統計では)約100万人とされているが、これは大学や高校など一部の学習機関の情報をもとにしたものであり、民間のオンライン語学や語学学校などで学ぶ学習者は含まれていない。実際には、これよりも圧倒的に多くの学習者が日本語を学んでいる。

■中国における日本語学習者の属性

あるメディアの記事によると学習者属性の割はは以下の通り。

学生 37.6%。(学生)
日企员工的 9.2%(日系企業勤務)
其他企业员工 20.64%(その他の会社勤め)
自由职业者 31.6%。(自営業、フリーター、経営者等)

また、次のレポート※によると、社会人(仕事している人)が62%であり、これは学費を払える能力と関係していると思われる。また、全体の62%は女性である。学士の学歴が70%で高校以下の学歴の人は25%。上海、北京、深圳の大都市の学生が多く、27%、19%、10.3%となっている。また、日本語学習の目的は趣味28%、アニメ好き25%、仕事19%、留学8.5%、旅行7%、日本語専攻5.5%となっている。

※「日本村」というオンライン日本語サービスの運営元による自社サービス利用者の分析レポート。日本村は、2013年からオンライン日本語を提供し今では全世界に2000人以上の日本人講師を雇用してる。

(1)沪江网校

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■メインプロダクト

沪江网校では、「課件」というオンデマンド動画を見ることをベースに自習で学ぶプログラムがメインのサービス。

「課件」とはPPTのような解説資料をベースに日本語教育経験の豊富な教授や先生が作り込んだ動画のこと。また、掲示板のようなところに質問をすれば、数時間以内に回答がいつでももらえる。

以下の「0からN1」プログラムは、540の「課件」を見ることで初心者がN1合格を目指すものです。

これでお値段が3,821元(約65,000円)だから安い!

中身を見ればわかるが、このオンデマンド動画の作り込みとクオリティの品質は相当高い。動画中にクイズがあったり、楽しめるような構成になっている。日本のudemyや、ただの講義を録画したものとは比べ物にならない。

(ライブ授業やネイティブと1v1もあるが、メインはこちら)

■ターゲット

沪江网校の主な利用者は、ライトな学習者が多い。オンラインで日本語を学ぶとなれば、まずは沪江网校というくらいブランドが確立されている。

無料の辞書など日本語学習ツールはおそらく中国の日本語学習者なら100%の人が使ったことがあるのではないか。

安くてよいサービスなので、まずは最初の一歩として購入する人が多い。

ただ一方で、オンデマンド動画で一人で学ぶと知識偏重になり全然“話せる、聞ける”ようにならない、という認識も広まっている。実際に私も沪江网校で1年でN1合格したけど全然話せない、という人にあったことが何度かある。

(2)早道日語

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■メインプロダクト

早道は、オンラインで日本語を学ぶなら沪江网校の次くらいに認知度があると思われる。

ここのプロダクトの特徴は大きく2つ、ライブ授業&実践的な日本語だ。

まず、1点目はライブ配信だ。オンデマンド配信と比較して受講料は高めだが、“話せる、聞ける”日本語力の習得が期待できる。授業中に講師と交流できるほか、AI技術を活用して飽きないよう施策をとっている。

2点目は「実践的な日本語」を重視していること。日本語教育の名門である大連外国語大学や国内の有力な出版社と連携し、実用性のある日本語を授業内容に取り込んでいる。会話能力を重視する受講者には、別ブランドでの1v1レッスン(300人の日本人講師在籍)も提供している。

N1まで12,780元(約22万円)程度。

■ターゲット

沪江网校のようにオンデマンド動画を自習形式で見るだけではなく、先生とのインタラクションありきでより確実に使える日本語を身につけたい人向け。

日本語専攻でない社会人数年目のサラリーパーソンが、コスパを検討しつつ一定の会話できる日本語力を身につけたいという人が選んでいる印象。英語学習での経験があるなどリテラシーが高い人が選ぶ傾向がありそう。

(2+)倍普日语

https://www.ibeipu.com/index/index.html

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倍普日语は、早道日語が提供しているネイティブ(日本人)講師との1v1サービス。

(3)新世界教育

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■メインプロダクト

元祖、日本語塾。オフラインで通学して日本語を学ぶならここ、という感じ。

中国全国に18の都市に合計98の学習センターがある。

全日制などのコースもあり、ガチでやる人向けに、経験のある中国人講師がビシバシ指導してくれる。集団授業がメイン。

JLPTなどテスト対策が有名。

■ターゲット

高校生や大学生などが多いイメージ。JLPTを確実に取りたい人に信頼されている印象。

(4)桜にほんご(樱花国际日语)

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■メインプロダクト

リアル教室、日本人のネイティブ講師メインの授業スタイルで確固たる地位を築いている。会話力と文化体験を重視している。

最大4人までの少人数クラスを軸に、学習を進めていき最大12人までの応用クラスも受講できる。

会話能力をベースに12のレベルがあり、1レベルあたり4〜5,000元程度とかなり高額。10〜12レベルがJLPTでいうとN1に相当する。基本的にカリキュラムはオリジナル教材だが、内容はほぼ「みんなの日本語」。

桜にほんごは、前述の新世界教育グループの1つの事業であり、中国全土36都市で、51校を開校している。

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■ターゲット

会話能力を高めたい人、日本人講師との交流をしてみたい人、文化に興味がある人、など。

留学を目指す高校生、大学生から主婦、サラリーパーソンまで幅広く集客している。また、少し情弱気味でとりあえずネイティブがいてブランドがあるところが最高!みたいな考えで選ぶ人も多いイメージ。

(5)日本村

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■メインプロダクト

日本村を一言でいうなら、オンライン版の「桜にほんご」というイメージ。「みんなの日本語」をベースにした日本人講師による少人数レッスンで最高レベルL10を目指して学習を進める。

■ターゲット

こちらは、オンライン語学サービスとしてはかなりハイエンドな部類。価格もネイティブが中心になっている分、早道日語よりも高め。

一見レアジョブみたいなオンライン会話かと思ってしまうが、中国では目的意識の薄いただの会話サービスはあまり売れない。しっかりとしたカリキュラムベースが好まれる。

まとめ

各社、日本の語学教育サービスとは比べ物にならないほどプロダクト作りに投資をしている。

また、競争により顧客の奪い合いが激化している。どこのサービスも、無料版や利益率の低いサービスから、利益率の高いプロダクトの有料ユーザーを確保する必要がある。また、一定の関心のあるユーザーの発掘して裾野を広げていくことも継続して求められる。

日本文化に興味を持つ若者が集まるbilibiliなどで宣伝したり、よりハードルを低く第1ステップを踏み出せるような50音図の無料アプリ等を通じて、まずは日本語に少しでも関心のある対象を探している。

さらに、日本語の学習意欲をかきたてるため、声優、音楽、日本料理などの体験などのイベントを定期的に開催する学校もある。(最近話題の高考の日本語選択者が増えているのも日本語学校の宣伝に依るところが大きい)

どこの学校もやっていることは変わらない。操作性の良いツール、教材開発、教授法の改善、学習者のアウトプット(音声、作文)の蓄積、良い中国人講師、日本人講師の採用。さらに、日本留学、日系企業での就職に向けた支援へと拡げている。

いくらアニメで気を引いたり、AI技術を駆使したアプリを開発してもそれらは手段でしかない。結局、顧客の潜在ニーズを理解し、その本質的な解決をする企業が選ばれるだろう。

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