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小規模個人 VS 大規模スケール

私は、食事を食べるなら大規模チェーンより孤高の個人経営店が好きだ。

ここでいう個人経営店とは、商品価値に徹底してこだわり、小人数小規模に経営する店を意味する。

ラーメンのチェーンといえば、日高屋、天下一品、一蘭など一定の品質を味わえるが、私は絶対的に、べんてん、としおかなどの個人経営のラーメン派だ。

もちろん、地理的な理由でチェーンに行くこともあるが、絶対的な体験の価値としては個人店が作るもののほうが優れていると思う。

今回は、ノウハウを言語化し、大規模にスケールすることのメリットとデメリットを様々なステークホルダー目線で考えてみたい。

スケールのメリットとデメリット

客目線

■供給量
いろんな場所で、その商品を享受できるのはメリットになる。全国に吉野家があるようなものだ。出張中に食べられることはメリットになるだろう。品質が変わらない場合、供給量が増えて、困る客はいないだろう。

■コスト
コストを抑えられるのはメリット。普通に考えればスケールすることで、その商品に作るものを規格化し、大規模に生産することでコストを抑えられる。
しかし、常に拡大を志向し、広告宣伝費などが商品価格に転嫁されることもあるので、一概には言えない。口コミだけで小規模にやっているところのほうが安いかもしれない。ましてや、採算度外視の昭和のノリの定食屋みたいなところのコスパには原理的に勝てない。

■品質
多くの顧客のフィードバックを取り入れた商品を享受できる。スケールしてたくさんの顧客を持つ商品であれば、顧客からのフィードバックや販売やサービス提供の現場から多種多様な声が上がってくる。これを商品の開発や改善に使い、よりよいものが作られる可能性がある。

とはいえ、フィードバック量と品質が正比例するわけではない。
また、熱心な創業塾長がこだわりを貫いた授業はよいものであるかもしれない。

(さらに)とはいえ、大手教育チェーンの末端の先生の質は下がるかもしれないが、その全国展開のノウハウ共有により、結果的には熱意ある個人経営の塾長の授業よりよいものができるかもしれない。

経営者目線

■売上・利益
スケールしたほうが絶対的な売上や利益は大きくなる可能性が高い。これは、シンプル。ラーメン屋なら、店舗が多いほうが利益は増えやすい(必ずしもそうではないが)。

もちろん、個人でも達人の域までスキルを磨きあげれば、単価を上げ多く稼げる。ただ、スケールするよりは稼げないだろう。

作り手目線

■品質
スケールするとよりよいものを作れる可能性がある。経営者ではなく、実際にその商品を手を動かしつくる作り手、職人にとっての話だ。

よいものを作りたいというマインドを持った作り手であれば、様々な角度から声を聞き入れることがその助けになるとわかる。ただ、フィードバックが多いことが常によいとは限らない。雑音になることもある。

社会目線

■価値の総和
社会的にみれば、功利主義的な発想でメリットは大きい。ほんとうによいものが社会に普及すれば、富は増えるといえるだろう。おいしい個人経営のラーメン屋が100人に100点の満足を毎日提供するよりも、100万人に60点のラーメンを提供するほうが社会的な価値は大きい。

でも、本当だろうか?その功利主義的発想が間違っているかもしれない。体験は数値に還元できないのだから。GDPで国民一人ひとりの幸せを測るようなものだ。

結論

ということで、スケールすることの良し悪しの結論はよくわからない。

上記の議論で何度も出てきている「よい」とか「価値」というのは結局、誰の目線かによって変わる。客、経営者、作り手、社会とざっくり分けたが、実際はそれらをさらに構成する一人ひとりの主観によって異なる。また、ラーメンのような飲食物と教育のようなサービスでも観点が変わってくる。

つまり、どの立場で、何を評価するかでスケールの良し悪しはかわる。

小さい規模で限られた人数を最高に満足させることに意義を見出す人もいれば、そんな小さいことせずにもっと全国の人に向けてサービスを提供することのほうがすごいと考える人もいる。

逆もある。

そして、その「すごい」というのは、その判断をしている人であり、それが最終根拠だ。

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