日本語の重音節による韻③/仕組みの解説

 こんばんは。Sagishiです。

 今回は「日本語の重音節韻」について、仕組みを解説しようと思います。




1 重音節の定義

 「重音節」(Heavy syllable)とは、音声学などで使われる用語で、CVVやCVCなどの構造をもつ音節です。Cは子音、Vは母音を意味します。要するに2モーラをもつ音節のことです。

 対して、「軽音節」(light syllable)というのがあり、こちらはCV構造をもつ音節です。こちらは1モーラ音節です。

 日本語の音節は基本的にほとんどが軽音節ですが、一部重音節になるケースがあります。それが、特殊モーラが発生する場合です。

・日本語の重音節の例

撥音:カント kȧntȯ
長音:カート kȧatȯ
促音:カット kȧQtȯ
二重母音:カイト kȧıtȯ
無声化母音:カクト kȧktȯ


2 日本語の重音節同士の押韻

 日本語の重音節同士で押韻をした際に、重音節の後部要素が異なっていても、一定レベルの「響き」を得られます。

 上記に例を出していますが、「カト/カト/カト」のように、重音節の後部要素が異なっているペアを発声してみると、たしかにrhymeとしての「響き」があることが分かると思います。

A:カント kȧntȯ
B:カート kȧatȯ
C:カイト kȧıtȯ

 これは子音や母音を入れ替えても同じことがいえます。

D:遷都 sėntȯ
E:生徒 sėetȯ

 口に出した際に、DE同士が自然に響き合うことが分かると思います。

 なぜ重音節の後部要素が異なっているのに、ABCやDEのペアから「響き」を得られるのでしょうか?(また、なぜわたしたちは「響き」を知覚できるのでしょうか)

 これは、日本語の「特殊モーラ」(重音節の後部要素)には音節核がないからだといえます。

 音節核がない音は、音節核がある音よりも相対的に「聞こえ度」(sonority)は低いと推測されますし、認知的にも重視されない音になっているとわたしは考えます。

 そのため特殊モーラを異なる特殊モーラ要素で置き換えても、押韻による「響き」が実現されることができるのだとわたしは考えます。

詩を書くひと。押韻の研究とかをしてる。(@sagishi0) https://yasumi-sha.booth.pm/