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冬は陸にいます

長雨が一段落して、ようやく晴れ間が見え始めた今日この頃。
今朝、私は自分の海道具を、秋の柔らかな日差しの下に干した。
今シーズンの私の漁は終わり。いつもより1か月以上早い。

今年の夏にnoteを始めて、漁の記録をいっぱい残そうと思っていたのに、なに、この体たらく。
全然海のことを書けない。
今年はいつもの年の1割くらいしか海に行っていない(気がする)。

漁に行けなかった一番の理由は、もらってきた船の整備が私たちの想定以上にやっかいだったこと。
春に沖縄から乗ってきた船は、夏の漁が落ち着く9月頃から稼働して、新しい仕事で稼ぎ整備費を賄い、実質ゼロ円‼になるはずだった。
それが今まで整備に時間がかかり、やっと先日稼働させることができたところだ。整備費の回収はまだまだ時間がかかるだろう。

もともと乗っている船も調子が良くない。
これは毎年のことなのだが、何かが漏れたり、何かが故障したり、何かが外れたりして、対処療法でなんとかしのいでいる。
島では船の整備ができる業者さんが少なく、個人で修理を請け負っている人もいるが腕のいい人は引く手あまたで、しっかり直してもらうほど時間をとれる人が少ない。
夫は自分でいろいろ考えて直したり、中古部品を探してヤフオクで買ったりしているが、2隻の船を見ていると漁に行く時間が無くなってしまう。

8月の終わりごろにめどがついたので、さあ漁に行くぞ!と思った(そしてnoteを始めた)ところ、9月の始めに台風が立て続けに来て、また船の調子が悪くなり、キビ植えもやらないといけないし、今度は長雨で、となんだか全然漁に行けなかった。

ほかにも、コロナでモズクが在庫余りということで、天然モズクはほとんど取引がなかったことも家計的に大きい。
私たちは養殖ではなく勝手に生えているモズク=天然モズクをとっている。モズクの仲買さんたちは、今年は約束している養殖モズクを引き取るのに精いっぱいで、天然は買えないゴメン、と頭を下げていたようだが、経費と手間のかかる養殖モズク漁師さんたちを優遇するのは当然だし、養殖のおかげであちこちにモズクが勝手に生えるようになっているのだから、私たちは足を向けて寝られない。
モズク漁は春なので、まあこれが無くても夏がんばればいいか、と思って、あのころはまだのんきに自家消費用のモズクをとって親せきに配ったりしていた。

そんなこんなで10月になり、私は焦り始めた。
例年だと、9月をピークに稼ぎはぐんぐん減っていく。
海が荒れ気味なって漁に行ける日が減るし、単価の高いイカやエビがとれる量が減っていく。タコは需要が多いがまだあまり取れなくて、シャコガイは単価が安い上にサイズの規制が厳しくなったので前より量がとれない。
いつもなら、それでも、春~夏の蓄えを少しずつ使いながら家族の誕生日やクリスマスや年末年始などを乗り越えるのだが…

今年は、ヤバい。
クリスマスのパーティバーレルはムリそう。

というようなわけで、この家の家計管理を担っている者としては、もはや「漁に行きたいよう!」と駄々をこねて指をくわえている場合ではない。
安定収入による平穏な家庭の維持のため、ちょっと早いがバイトを探すことにした。

私は、冬になると寒くて海に入れないので、例年冬は陸の仕事をする。
去年は、我が家のサトウキビ収穫をやった。これは私が漁の次に好きな仕事だ。
娘の冬休みに家族3人で3反の畑を手刈りしたのだが、もう本当に楽しかった。
土砂降りの中、泥に足をとられながら、パラソルの下で身を寄せ合って弁当を食べたりしながら、キビの山を作っていく作業は最高だった(あまりに楽しかったので、本当は一記事分語りたいところだ)。
でもこれをすると、一冬に不定期で1~2週間の休みなし作業が数回必要になる。
その間夫は漁に行けないし、私もそれ以外の日のバイトを探すのが難しく稼ぎのない無駄な時間を過ごすことになる。
それで、経費はかかるが機械刈りにして畑は畑で稼がせ、同時に我々は別で稼ぐことでさらなる収入アップを目指そう、ということにしたのだ。

私が探すバイトの条件とは
一、3月末までの期間限定・・・4月頃からモズク漁が始まるはずだから
一、時給がいい・・・金のためのバイト探しなのだから!
一、制服スカートとか化粧が必須の仕事はしない・・・好きじゃないので毎日がつらくなることが目に見えている
一、できれば体を使う仕事・・・冬の間のブランクが春からの海での肉体労働を一層苛酷にするため、体力維持したい

そうして探したところ、11月から、デスクワークと在宅PC使用の2つのお仕事を始めることになった。
体は一切使わない仕事だが、こんなアラフィフを雇ってくれてありがたい!
在宅の仕事は時間は自由なので、役に立つことを証明して、できれば長く続けたい!
即戦力になるべく、必死に頑張っていたら、気づいたら11月も半分過ぎてしまった。

そして気づいたら、だいぶ太ってしまった。
新しい仕事や新しい人との仕事ではストレスもあるし、何しろ寝不足でついついお菓子をつまんでしまうし、私のワードローブでは数少ないオフィスカジュアル風のパンツがすでにきつくなり始めた。
せめて現状維持で、この後春まで服を買わずに乗り切りたい。着ない服を買うために働いてるのではないのだ。

そして春になったら、天然モズク漁で海に復帰するぞ!
衰えた体力も、緩んだ腰回りも、ヒィヒィ言いながらも海に行けばすべてが元通りになるはずだ。
海での熱い気持ちもワクワクも。

きれいに乾いたウェットスーツを取り込みながら、
直しながら粘って使った破れフィンを納戸にしまいながら、
ちょっと涙がにじむような、さびしい気持ちを感じながら、
次のシーズンに思いをはせています。





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