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介護職を目指したきっかけと元彼

気が付けば早いもので、僕が介護職に転身してから現在6年目に突入する。
今回は、僕が介護職を志したきっかけを書きたいと思う。

10代から30代はじめまで続けていた仕事

せっかく10年以上も勤続していたのになぜ辞めたのか?と採用面接などの際に聞かれることが多いが、僕は今でも辞めて良かったと思っている。
一応、履歴書には通販関係の仕事をしていたようなことを書くが、勤めていた職場はアダルト企業だった。
大人のお店や飲み屋の経営、その他性的なコンテンツを幅広く取り扱っていた。

毎日毎日おびただしい量の性的なコンテンツを目にする。
涼しい顔でとんでもないスケベなワードを口にする従業員。
別にセクハラではない。
そういう商品名だったり、サービス内容なのだから。

30代を手前にして、嫌気がさした。

人生、仕事が全てでは決してないが、人生の多くの時間を仕事に費やすのは紛れもない事実なのだ。
一生スケベな商品名を涼しい顔をして口にして、お給料をもらって暮らしていくのか?
そもそもこの仕事が誰の何に役立っているのか?

10代の頃、経済的理由で進学することもできず、家庭の都合で家を飛び出し、住む場所もない僕を拾ってくれた会社には感謝している。
でも、だからと言って、10年後40歳を迎えたときに、不本意な仕事を不貞腐れた表情でしている自分を想像したときに、やはりどうしても嫌気がさして
しょうがなかった。

そして思った。
“辞めよう”と。

アダルト企業退職後

退職後、僕は失業したことをきっかけに職業訓練校に通う。

そこでITについての勉強をするが、学び始めた年齢が遅かったせいか、はたまた元々センスがなかったのか、1年学ぶところをわずか数か月で挫折した。

職業訓練校でITパスポートというITに関する初歩的な資格を取った。
しかし今日この日までその資格が就職活動などの場で役に立ったことは、残念ながら一度もない。

その後、大して仲良くない怪しい知人に紹介された、ベンチャー企業に就職をする。
その会社は、居酒屋経営からAIに関する事業まで、カネになればなんでもやる会社だった。
そこで僕は、ネット回線の販売促進やスマートフォンの販売を行う会社に派遣され、家電量販店の売り場で働くことになる。

具体的な仕事内容は携帯電話の大手キャリアやネット回線事業者のユニフォームを着て、家電量販店に買い物に来ているお客様にアンケートを取るのだ。
そして携帯電話のキャリアや回線事業者を乗り換えることで料金が安くなりそうな人を見つけて、「一度プランを見直しませんか?」などとお声がけし窓口に誘導し営業を掛ける。

その時自分が担当している事業者やキャリアに乗り換えさせることができれば、成績になるし、自分が担当している事業者やキャリアへの乗り換えが難しそうであれば、お得になるであろう事業者やキャリアの担当者に話を振り、“貸し”を作る。

まあ、販売というより営業に近いだろうか。

耳にはインカムがついており、僕の営業トークや売り場での振舞いが悪いと指摘が入る。
パワハラなんて当たり前で、慣れない頃は「てめぇぶっ●すぞ」と怒鳴られたこともあった。

この仕事では僕の欲しいものは手に入らない。
そう思うようになり、結局その仕事は1年足らずで辞めようかどうしようか再び悩むことになる。

販売を辞める後押しとなった社内恋愛の失敗

その当時、僕には付き合っている彼氏がいた。
その彼氏とは、ゲイでは珍しく社内恋愛であった。
彼は社内でゲイであることをオープンにしており、それをきっかけに仲良くなり、付き合っていた。

しかし後日、彼に多額の借金があることが分かる。
どうやら借金を一切返していなかったらしく、携帯電話も自分名義で契約できない状態だった。
彼は携帯電話を仲の良い同僚の名義で契約していたようだが、経済的に困窮し、携帯電話の料金数か月分(確か5万円以上)を払わずにいた。そして同僚の回線まで止めてしまう事態になってしまう。
ここまでならアホな彼氏で話は済むかも知れないが、その後の彼の対応が最悪だった。
同僚が彼に連絡しても返事をせず、電話をしても電話に出ず、待ち伏せをして直接会いに行ったら無視された挙句逃げられる…という、友人や同僚に決してしてはらない対応をしたのだ。

僕は、そのことを理由に彼と別れる決心をしたタイミングで、元彼に出会う。

別に特別モテるタイプでもないのだが、なぜだかその時は、タイミング的に前の彼氏と重なることもなく、まるで計画的に移行するようなかたちで彼氏ができた。

仕事内容もさることながら、新しく好きな人ができたのに、別れた男と同僚でいるのも辛かった。
社内恋愛の失敗が僕の転職活動を後押ししてくれた。

元彼のアドバイス

2016年の夏。
僕は33歳にして再び進路に悩んでいた。

アダルト企業も嫌だし、IT業界は挫折、営業や販売などは性分に合っていなかった。

自分でもただのわがままな気がして、自己嫌悪に陥りそうになったとき。

元彼が
「やすくんは優しいし、人当たりも良いから、介護とか向いてそうだけどな」
と言った。

彼は大学を卒業してからずっと看護師をしている。
恐らく介護士と一緒に働いた経験があった。
だからなんの気なしにそのように口にしたのだろう。

でも当時の僕は、介護業界に良いイメージを持っていなかった。

僕が10代の頃。
おそらく2000年代はじめ頃だろうか。
とある知人が障害者施設で介護職員をしていた。
彼は飲みの席で、職場でのできごとをよく愚痴りながら話していた。

「障害者の中には変な奴がいて、暴力を振るってくるのもいる。だから教育の一環として、スリッパなどでたたき返すことがある。シモの世話が必要な奴もいて最悪だ」

そんなことを話していた。

当時介護業界に疎かった僕は、一生そんな仕事をしたくないとその時感じた。

念のため申しあげるが、そのような介護は法的にも人道的にも到底許されないことであるし、あってはならない虐待行為だと思う。
昔のことでもう彼と接点を持つことはできないが、今なら「介護は向いていないと思う。もっと別の仕事を探してみては?」と伝えるだろう。

そんなこともあり僕の介護業界へのイメージは最悪だった。
しかし大切な人が僕に勧めてくれる仕事はどんなものなのか知りたくなった。

介護業界が3Kとも5Kとも言われていることをその時の僕は知っていた。
過去にスリッパで利用者を叩いた知人の話しはしなかったと思うが、自分に務まるか心配であることを彼に話す。
「初任者研修という資格のようなものがあって、まずは勉強をしてみてはどうだろう?それから考えても遅くはない思う。」
そうアドバイスをくれた。

僕は早速、介護職員初任者研修を受講しようと思い資料を集めることにした。

介護職員初任者研修

初任者研修の資料が手元に揃い、受講日程や受講料を見比べる。
どこが良くてどこが良くないのかさっぱりな僕に、いろいろとアドバイスをくれた。

今はどうだか分からないが、当時の受講料はかなりピンキリで、安いもので3万円台。高いもので8万円台のものもあったように思う。

元彼のアドバイスもあり、日程的にも都合の良い3万円代で受講できる会社のコースを受講することにした。

週に2回の講習を2ヶ月間ほど受けつつレポートをこなし、簡単なテストに合格すれば、めでたく修了となる。

結論から言って、僕はこの初任者研修を受講して良かったと思う。

講師はもちろん介護職経験者なわけだが、自身の豊富な経験を受講生に伝えながらカリキュラムが進められていく。
様々な会社から出されている教科書には、分かりやすさなどの差こそあるかも知れないが、きっと同じようなことが書かれているだろう。
しかし、講師の話はそうはいかない。
同じ介護職とは言え、それぞれ経験してきたことが違うわけだから当然だ。

僕が介護を志そうと思った、大きなきっかけとなった、とある講師の話は昔の障害者施設のものだった。

「今から2~30年前の介護業界というのは、本当にひどいものでした。まだ私は介護士として新人だったある日、綺麗な長い髪の10代の女の子が施設に入所することになりました。女の子は、長い髪を大切にしていました。施設では入浴などのケアももちろん行っていました。女の子の長い髪は、洗髪した際、乾かすのに手間がかかります。職員にとっては都合が悪く、管理がしにくいため、他の利用者と同じ髪型にされてしまいました。利用者は皆同じ髪型でした。この話しを聞いた皆様はどう思いますか?尊厳とはなんでしょう?」

そんな内容だったように記憶している。
その話を聞いて僕は再びスリッパで利用者に暴力を振った知人の話を思い出す。

今の時代の介護業界なら、僕も役に立つことができるかも知れない。

そう思うようになり、スクーリングが終盤に差し掛かった頃、別の講師がこう話した。
「このスクーリングを受けて、実際介護士になる人、ならない人様々かと思います。でも、介護士になるベストなタイミングは、介護に関心を持った今かも知れません。一度よく検討してみてくださいね。」

今思えばこれは、40代、50代以上の受講者に向けた言葉だったのかも知れないが、その時の僕には全く違う意味に聞こえていた。

今のこの僕の気持ちとモチベーションがあって、介護業界全体が昔より良く変わった今がそのタイミングかも知れない。
そう感じた。

最後に

介護士になるか迷いのある方へ

その後、有料老人ホームで2年ほど働いた後に、特別養護老人ホーム、デイサービスと職場を変わることになり、この4月からは訪問介護に転職予定です。
職場はいろいろ変わりましたが、介護業界に転身したことに後悔はありません。
もしこの記事を読んだ人の中に、介護士になるか迷っている人がいるのであれば、まずは初歩的なことを学んだうえで様々な経験者の話を聞いてみてください。
あなたなりの答えがきっと見つかると思います。
もし介護士になるのに抵抗があるのであれば、それは今はまだタイミングではないということなのかも知れません。
年齢を重ねた上でも、介護に何らかの形で携わることは可能だと思います。
ぜひ検討してみてください。

僕の個人的な思い

最後に元彼が熱心にアドバイスをくれたこと、本当に感謝しています。
様々な事情があって、もう会うことはありません。
しかし彼が今もどこかで看護師としての仕事をとおして、誰かの役に立っていることを願います。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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