見出し画像

絵を描き始めたきっかけ(3)迷って結局絵の勉強に

まだ二十代でパワフルだった頃、将来について悩みに悩んでいました。大好きな絵に関係する仕事をしたものの、仕事内容は事務的なこと、東京で通訳の仕事をしたものの、関心が持てない通信技術の会社。でも本当にやりたい事は実は絵を描くことでしたが、もう遅い、絵を描いてどうする?という気持ちがずっと絵を描くことをブロックしていました。

さて、派遣から準社員になった通訳の仕事を辞めて、フランスのパリに語学留学しました。最初はCクラスに入り、次のタームでBクラス、また次のタームでAクラスに入り、文法を中心に学ぶため毎日二時間学校に通いました。一番最初のレベル判定筆記テストで、わからない問題に突き当たり、私がうーんと唸っていると、隣のブラジル人の女の子が、先生の目を盗んで答えを教えてくれました。ついでにほかの回答もみて、あんた、これまちがってるわよ!と直してくれようとしました。そんなことして不相応なレベルのクラスになんて入ったら大変!なので、柔らかくお断りしました。スペイン語やイタリア語等同じラテン語系統なら言うまでもなく、少し系統が違う英語でさえ、母国語がアルファベット言語だと、日本人や韓国人に比べてフランス語を取得するのは、すごく簡単らしいです。確かに、難しい概念の単語になるほど、英語とフランス語は共通していました。

そんな感じで、フランス語もまあまあ話せるようになってきたかな、と感じた一年半後、残りの一年を語学学校以外の学校に通いたいと思いました。前回お話ししたように、イギリスにはサザビーズの短期学校がありましたが、できれば、パリにもう少し残っていたいな、と思い始めていました。

その頃語学学校で知り合ったアジア人の友達、特に台湾人は、語学学校を終えると美術大学に編入したり法律の大学院に進むなど必ず長期の計画を立てていて、少なくとも卒業は必須と言って必死で勉強していました。語学学校にふらっとやってきて、お金が無くなったらまた日本に戻って派遣の仕事でもしよう、という(私もその一人)日本人留学女性が多い中、そうした台湾人の学生たちは立派に見えました。ただこれにはお国事情があり、台湾は教育に非常にお金をかけるため、親がお金持ちの場合は、子供たちを海外に送り、海外の大学などの卒業資格を持って帰ることで、より給料の良い仕事につきやすいというのがあるのでした。

さて、またまた話がずれてしまいましたが、そんな海外留学生を見ていて、私も迷い始めました。アメリカの大学に行ったけど、マスターはとっていないので、アメリカの大学のパリ分校のMBAをめざそうか、と思い、すでに校長先生とも面談、条件は満ちているので、9月からすぐに入学できるとのことでした。でも、家で英語の単語帳を開いて、勉強し始めてみると、あれあれ待てよ?英語で仕事していて満足できなかったから、フランスに来たんだったよな?何やってんの、私…

そこで、ドルオー(Drouot)というフランスのオークション会社が主催するオークショナーを育てる学校を見つけ、その学校の校長に話を聞きに行きました。校長先生はとても感じの良い女性で、私が日本人だと知ると、以前この学校で学んだ日本人女性がいるから話をしてみたら、とその人の電話番号をくれました。そしてその彼女に話を聞いてみたんです。すると、開口一番、「あの学校には行かないほうがいい」と。学校で学んだ内容自体は、とても興味深く面白かった。でも、結局ギャラリーも美術館も、雇ってくれるところはないのよ、日本のバブルは終わったし、ギャラリーなんて家族営業だから他人が入るスキはない、私は今フランスの大学で経済学部に入って学んでいるのよ、とのことでした。

うーん、ちょっとがっかりしました。けれど、今まで学校=仕事のスキル、と思っていたけれど、そういう風に考えるから、いつも仕事をしながら、最後はこれじゃないって思うんじゃないか?て気が付きました。せっかく稼いだお金でフランスに来て、絵画について学んでも、もうギャラリーに就職は無理だろうな。それなら、一層の事純粋に本当に学びたい事をしたらいいんじゃないか?本当に今やりたいこと? 

結局、小さい頃から憧れだったアートスクールに入ることにしました。昔から、絵を描くことが何より好きでしたが、絵と仕事が結びつかなかったんです。実力がない、そんな非現実的なことでは生きていけない、だから、英文科に進んで、アメリカでビジネスを学んで、、、、堅実に歩んできた私にとって、(と言いながら、仕事を辞めて語学留学する時点で、変わり者?)絵を描くことをきちんと学ぶというのは、大それた決断でした。それでも現実的に考えて、このパリという土地に将来暮らす機会なんかないだろう、それならこれがパリで絵を習う最後のチャンスにちがいない!

ああ、やっと「私が絵を描きだしたきっかけ」についてお話することができそうです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?