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どう使う?マーケターが知りたい行動経済学のあれこれ

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マーケティングの大家、コトラー教授は「行動経済学はマーケティングの別称である」と言ってます。専門用語が多くてとっつきにく印象のある行動経済学の理論を取り上げてマーケティング施策へ…
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2023年3月の記事一覧

誰かを救うストーリーで顧客の心を揺さぶろう 身元のわかる犠牲者効果-行動経済学の理解と実践15

突然ですが質問です。 あなたの製品やサービスは誰を救いましたか? この質問に具体的な人物像までストーリーとして語れることが人を惹きつけるヒントとなります。 この記事はこのことを証明する「身元の分かる犠牲者効果 (Identifaiable vicitim effect」です。 身元の分かる犠牲者効果とは? 災害などで犠牲者が何人出たという数字の事実よりも、特定可能な個人の被害に対してより強い関心(恐怖、怒り、同情、悲しみなどの感情)を覚えるという事実のことを「身元の

仲間意識をマーケティングに活かすコツ 内集団バイアス-行動経済学の理解と実践14

スポーツ観戦が好きでよくスタジアムに応援に行きます。当然、贔屓のチームの応援席側で応援をするのですが、熱狂的なファンの方は本当に全体力を振り絞って応援しています。 サッカーではゴール裏と言われる席から応援するサポーターは時折エキサイトして相手側サポーターに攻撃的になってたりします。一人ひとりは善良な市民だと思うのですが群衆心理もあって気が大きくなってしまうんでしょうね。一方で、全然知らない人でも味方チームがゴールすると周りの席の人たちとハイタッチをしたりして一体感に溢れます

保守or革新?答えはバランスです。MAYA理論-行動経済学の理解と実践13

マーケティング・マネジメントで語られるものにイノベーター理論があります。 革新的な新商品が市場に投入されると最初に飛びつく少数のイノベーター、そして、しばらく経って購入するアーリーアダプター、普及段階に入るマジョリティ(アーリー、レイト)、そして、最後に購入するラガード(遅滞者)と分類されます。 イノベーター理論は、製品戦略や顧客別アプローチなど活用の領域は広いですが、この記事では「イノベーティブな製品にすぐに飛びつく顧客は少ない」という点だけにフォーカスしてみましょう。

自分で作ると価値が上がる!DIY効果とは?-行動経済学の理解と実践12

大阪には自分で焼かせてくれるお好み焼き屋さんが結構あります。 子供の時に近所のお好み焼き屋さんでうまくひっくり返せた時の快感をよく覚えています。 最近は、効率化もあってか仕上がったお好み焼きを目の前の鉄板に置くお店が多いです。失敗する心配もないので味も保証されていますので焼いてくれた方がいいに決まってますが少しつまらない気もします。 今回の記事は、自分が手を加えることによって価値が上がるDIY効果についてです。 DIY効果とは、自分がちょっとでも手を加えたものは愛着が出

サンクコストの沼から顧客を救ってあげよう-行動経済学の理解と実践11

買った本を少し読み出してつまらなかったって感じた時、あなたならどうしますか? せっかく買ったしもったいないから最後まで読むか、時間の無駄ということで読むのやめるかの2択です。 前者を選んだ人は「サンクコスト」の沼にハマっているかもしれません。 すでに投入して回収できない費用(サンクコスト=埋没費用)を無駄にしたくないという思いから、損することが分かっていてもやめられなくなってしまうことを。 サンクコストは、Sunk(沈むの過去分詞+Cost(お金)のことで、沈んでしまって戻

顧客が喜ぶインセンティブってどんなの?-行動経済学の理解と実践10

インセンティブは報酬のことで、選択することでなんらかの報酬を提示することで行動を促すものです。ナッジが無意識の行動を促すことを目指す一方で、インセンティブは自主的な行動を促すものとなります。 報酬といっても、金銭的なものだけでなく、社会性、道徳性、群衆心理的なところにも働きかけます。 社会性:他者からの承認欲求につながるものです。 道徳性:環境保護など社会の役に立てていると実感することです。 群集心理;みんながやっていることに遅れてはいけないと意識させることです。 金銭的

楽しい「仕掛け」で顧客を惹きつけろ!-行動経済学の理解と実践9

回転ずしチェーン「くら寿司」のビッくらぽんは、お皿5枚単位でガチャガチャができるサービスです。人気アニメのコラボの際には売上アップにも寄与しているそうです。 家族くら寿司を利用して、全員で18皿で満腹なのにガチャガチャのためにあと2皿頑張って食べたなんていう経験をしたことのある人もいるのではないでしょうか? ナッジ理論における「仕掛け」とは、「ユーザーがついついやってしまいたくなるひと工夫を加えて行動を促す方法のこと」をいいます。 「仕掛け」でもっとも有名な例は、男子ト

デフォルトで顧客をラクにさせてあげよう-行動経済学の理解と実践8

今回は、行動経済学を実際の商品・サービスに応用するナッジの一つデフォルトについて説明します。 ナッジとは、「小突く」という意味で人を正しい方向に向かうように軽く押してあげることを指します。 デフォルトとは、はじめから何かを選ばれている状態にしておくことで、選択する人がその選択をしやくすることをいいます。 選択をする側から見るとデフォルトに設定されているものは、そうとは言ってなくても「これが普通の選択」もしくは「これがおすすめの選択」と理解することで頭を悩ます必要がなくなり

同調効果とブランディングの関係とは?-行動経済学の理解と実践7

自分の考えを周囲の人に合わせたり、周りの人と同じ行動を取ろうとすることを同調効果(同調現象)といいます。 日本人はよく同調効果の傾向を示す、と言われています。 マスクの着脱に関しての同調圧力というのもよく耳にしますね。 同調効果と類似のものにバンドワゴン効果があります。バンドワゴン効果とは、行列があるとさらに人が集まってしまったり、最初の人の意見に賛同しやすくなる傾向のことをいいます。 バンドワゴンとは、音楽隊の行進を先導する車のことで、バンドワゴンに音楽隊が続いて歩

顧客のメンタルアカウンティングを理解する意義とは?-行動経済学の理解と実践6

なんの苦労もせずに手にしてしまったお金のことを「あぶく銭」っていいます。 ギャンブルなどで不意に入ってきたお金は使ってしまった方がいいみたいな考え方は昔からあります。 お金に色はついてないのに色をつけて使い方を決めてしまうことをメンタルアカウンティング(心の会計)といいます。 ギャンブルで稼いだお金は、リスクの高いものに使われてしまう傾向があることからハウスマネー効果と言われています。投資の世界でも同じことが言えて、株で稼いだお金はよりリスクの高い投資へ向けられる傾向が

顧客に好印象を引き出すフレーミング効果とは?-行動経済学の理解と実践5

フレーミング効果とは? 野球に詳しい方はご存知だと思いますが、キャッチャーがストライクゾーンギリギリのボールをストライクになりやすいように捕球する技術のことをフレーミングと言います。 フレームとは、絵画や写真の枠組みのことで、見せ方や全体の大きさを決めるもののことです。同じ言葉の意味で行動経済学でもフレーミングは使われています。 フレーミング効果とは、表現の仕方を少し変えるだけで印象が変わって、選択に影響を与えることをいいます。 栄養ドリンクのラベルに「〇〇〇1000

サブスクがやめられない理由は損失回避性にあり!?-行動経済学の理解と実践4

100万円をもらえる喜びか失う悲しみ。 おおかたの人は、後者の方の精神的なダメージが大きく感じます。 それは、プロスペクト理論の「価値関数」で表現されています。 人はあることに対する喜びが1とすると、同じ程度の悲しみは2.25倍に感じるのだそうです。そのため、できるだけ損失を避けたいと願う「損失回避性」を持っているとされています。 「スポーツクラブの会員になって当初は週3回以上通って元をとっていた。でも、しばらくすると熱意が冷めて月2-3回になった。入会金も払っている

代表性ヒューリスティックを理解してビジネスに応用しよう-行動経済学の理解と実践3

前回の記事で利用可能性ヒューリスティックについて説明しました(記事はこちら)。 今回は違うタイプのヒューリスティックについてです。それは、代表性ヒューリスティックと言います。 代表性ヒューリスティックとは、代表的なものを見て、全体も同様であると結論づけてしまうことを言います。例えば、人種や国籍、血液型などで、一人ひとりの人格まで結論づけてしまうようなことは代表性ヒューリスティックの一例です。 別に、これは全て間違っているということではありません。日本人には日本人の国民性

利用可能性ヒューリスティックについて理解しよう-行動経済学の理解と実践法2

スーパーで買い物をしているときに、このブランドを買うって決めてなくてもテレビCMとかで見たことがある商品を選んでしまう、という経験をしたことがある人も多いと思います。 記憶にあるものを信用して選択することを利用可能性ヒューリスティックといいます。 ヒューリスティックとは、意思決定をする際に直感や経験則で判断することです。反対語は、システマチックです。 ヒューリスティックな意思決定をしていると、限られた情報でバイアス(偏見)がかかり、間違った意思決定をしてしまうということ