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Wayfarer / A Romance With Violence

ちょっとカントリー風味もある、アメリカのルーツミュージックを取り入れたメタルバンド。こばいあさんの記事で知りました。

カントリー・ミュージックの郷愁が神秘的な轟音によって見事に引き立っているが、これは間違いなく彼らの集大成のサウンドだ。

おお! カントリー×メタル! 聴いてみよう! ということで聴いてみました。Pride & GrolyとかOngoing Conceptみたいなアメリカのルーツミュージック×轟音系が好きなんです。聴いてみた結果そこまでルーツミュージック色は強くなかったものの、音楽としては空気感・世界観に浸れました。長尺曲をしっかりと聞かせきる力量があるし、ほの暗い感情をしっかり描き切るドラマ性もある。北欧勢ほど荒涼とした、人間を拒絶する厳しい大自然的な世界観ではなく西部劇的などこか人間味も感じる音像です。

2011年結成、2014年デビュー、USのバンド。アトモスフェリックブラックメタルとカテゴライズされています。あとフォークメタルとも。「あさって...」さんによるとBlood Incantationのドラマーがいるらしい。なんとなく共通点を感じたのですがそうだったのか。

US出身のアトモスフェリックブラックメタルバンドです。
今作リリース後、Baがチェンジしたようです。
ここのDsはBLOOD INCANTATIONのメンバーでもあります。
サウンドは雄大でいて神秘的な雰囲気と纏ったブラックメタル。
スピードに頼ることはあまりせず、長い尺を使ってゆっくりと自然崇拝系のギターメロディを中心に展開させていくAGALLOCHリスペクトなスタイルです。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.The Curtain Pulls Back 01:12
イントロ、古い音楽、ホワイトノイズ、ラジオノイズのような音
アコースティック楽器で古い映画音楽のようなメロディ
美しいがどこか不穏な雰囲気
★★★

2.The Crimson Rider (Gallows Frontier, Act I) 10:40
轟音と共に曲が入ってくる、うねるような、ニューロシスとかの歪んだ轟音だがどこか美しさがある
ドラムとベースはゆったりしている、ヘヴィなテンポ
からテンポアップして疾走、BPM同じで手数が2倍に
ボーカルはグロウルスタイル、轟音だがメロディは感じるというか、和音感は美しい
音の塊の中で和音が展開し、ベースの音が動く、ドラムはどこか温かみというか土っぽさがある
土煙を上げて荒野を走るバッファローのような、ツーバスの連打からミドルテンポに変化
ボーカルはグロールを続けているがサウンドに溶け込んでいる
ギターは刻みよりかき鳴らす系だが展開は細かい、トレモロ的
和音がドラマを作っていき、ドラムが場面を作る、ドラムのテンポチェンジはけっこうある
ところどころギターがメロディを奏でる、地から湧き上がっていくような
途中でややアコースティックな響きが出てくる、だいたい6分15秒ぐらいからか
エレキがアルペジオを奏で、ベースが反復してうねる
少しブルーグラス的なフレーズかも、バンジョーの反復をゆっくりにしたような
ドラムの手数が増える、荒野を歩く、西部劇的な
ただ、「アメリカのバンド」という前印象で聴いているからかもしれないなぁ
けっこうドラマが展開していく、11分近い曲なので、かなり雄大にドラマが展開していく
とはいえ一つ一つのパートに冗長さはあまりない、しっかりと展開していく印象
急に高速ブラストに、雄大といってもシンフォニック感は少ない、弦楽器によるオーケストレーションはない
あくまでギターの音、ベースの音がオーケストレーションの主体
北欧的な冷たさはあまり感じないかもしれない、前回のYukikaにも書いたがヘッドホンを新調したので音の癖が変わったせいかもしれないが、、、
雄大な音楽、描き切って終了
11分近いのに長ったらしさを感じないのは見事
★★★★

3.The Iron Horse (Gallows Frontier, Act II) 06:28
ノイズが混じったアルペジオからスタート、けっこうマイナー調
一瞬トレモロリフが入り、グロールと共にドラムがアップテンポなブラストビートを奏でる
なだれ込んできた後一息いれてミドルテンポに、ベースがうねる
ところどころブレイクが入る、ベースやギターのフレーズがリズミカルに断絶してボーカルと絡み合う
リフ感がある、この曲はブルース的な骨格がある
ペンタトニックのリフらしきものがところどこに聞こえる、そこにトレモロリフが乗ってくるのだが
ボーカルのテンションが上がっていく、ちょっとピッグスクイール的というか、倍音が入ったスクリームが入った
ホーメイ(喉笛)とか、倍音が入ったスクリームは好きなんだよね
ちょっとメロディアスなソロ、抒情性はあまりないがメロディがある
あまりテクニカル、手数が多い感じではない、どちらかといえばブルージー、ベイエリアスラッシュっぽいソロ
ドラムの刻みが途中けっこうパワーメタル的に、ツービート疾走ではなくリフに合わせて機関銃のように正確にたたく
最後うねるように終曲、ただ、あまり邪悪さや暗黒面は感じない
ファンタジックというよりは生身感というか、人間の感情を感じる
★★★★

4.Fire & Gold 04:19
前の曲からそのまま次の曲へ
少し不穏だが哀愁も感じるアルペジオ、じっくりと展開していく
ややクリーントーン、というかエフェクトがかなりかかった声が入ってくる
少しゴシック的、笛の音のような音が入ってくる、フォークメタル的ともいえる音像
だんだん音のひずみが消えていき、アコースティックでクリーンなトーンになっていく
アルペジオがアコースティックに、笛の音のように聞こえるがもしかして喉笛だろうか
荒野、中央アジアも感じるが、基本はアメリカなのだろうな
音程は完全にアメリカ、明快なメロディと和音
遠くから血数いてくるようなギターフレーズ、過去。あるいは遠くから呼ばれているような
★★★☆

5.Masquerade Of The Gunslingers 10:01
ブライトなトーンのギターカッティングが入る、光が差し込むようだ
コード進行はややマイナー調、そこまで哀切ではないが美しさがある
そこにドラムとベースが入ってきて、音が塊化するがギターの明るさは変わらない
けっこう高音部分をかき鳴らしている
ミドルテンポに変わりトレモロリフとボーカルの絡みに変化
空間を感じる、ギターが高音でベースが低音なので、中音域の見通しがいい
天上が広い洞窟の中で吠えているかのよう
曲はミドルテンポながら手数が増えてブラストに、疾走感は少ないが音圧は強まっている
これも10分の長尺曲、じっくりと展開していく、一度ドラムが手数を減らしてリズムの骨格だけを描く
そこから少しづつギアを入れていく、バスドラの手数が増える、ギターがトレモロリフになる
そこからツービート疾走を織り交ぜ始める、曲が進んでいく
ギターのメロディが出てくる、リフ、音の塊、流れていてアトモスフィア、音空間としてのギターがリフを奏でると風景画変わる
昨年はBlood Incantationの作品が話題になったが同系統で、ざまざまな要素が入っていてこのジャンルのファン以外にも楽しめる音楽性かも
クリーンなトーンのボーカルが入ってきてメロディを奏でる、やや讃美歌的な美しさ
前も書いたがヨーロッパ的なシンフォニックさ、弦楽器やクワイアコーラスはない、あくまでバンドサウンド
そこが硬派で面白い
ギターのアコースティックな響き、それが空間音になっていてドラムが鳴り響く
音が鳴りやむ、ホワイトノイズが曲をつなぐ
ブラストへ、ギターは高音、どこか音が軽いというか、高い、高音強調型
この高音がこの曲の聴感上の特色になっている気がする
ドリルで掘り下げるようなリズム、ギターは刻まず音の塊だが、ベースとドラムがドリルのような音で掘り下げる
終曲
★★★★

6.Intermission 02:01
つぶれてひずんだアコースティックギター
音自体はクリアだが、録音のレベルが高くて一部ゲインが出てしまったような音
音の粒はきれいだが、別でゆがみ成分だけ足しているのだろうか
こういうホワイトノイズの使い方が上手い、ラジオやレコード、あるいはより古い50年代の録音物を想起させる
どこか色あせた感じがする
ピアノがメロディを奏でる間奏曲
メロディセンスはカントリーだなぁ、欧州とは違う
分かりやすい
太いオルガン音で終曲
★★☆

7.Vaudeville 10:17
パーカッションというか、何かを細かくたたく音、タムの縁かな
ややインド的な音階、まぁたまたま同じところを使っているだけでカントリーだろう
ソとラを反復で使うから、単にインド音楽でもこういうフレーズがあるだけでイメージはカントリー
アコースティックギターが入ってくる、かなりアーシー
ボーカルもクリーントーン、エフェクトがかかっていてどこか深いところで漂っているような声だが
不思議な音像、カントリーとブラックの融合色が強い
ドラムの手数がだんだん増えていく、基本はカントリーからまだ外れていない
後ろで幽霊の声のような、微かな高音のフレーズが鳴る、シンセだろうか、エフェクトをかけたギターなのかな
ちょっとケルティックなメロディが出てきてツーバス連打に
ケルティックと表現してしまったがアパラチア山脈、南米音楽の影響だろうか、フォークロア
コンドルは飛んでいく、とか、ああいう
マイナー調で分かりやすいメロディ
だんだんと音のレイヤーが増えていく、気が付くと風景が変わっている
アコースティック色はなくエレキのアルペジオ、あるいはどこか寂しさのあるコードカッティング
コードが展開し、ドラムがブラストになる、山脈のようだ
称えるかのような雄大なコード進行、微かにコーラスのような、女声のような高音のハミングがかぶさる
メインボーカルがグロールで戻ってくる、声がコダマのように多重に重なる
バスドラの手数が多いが手はだいぶ落ち着く、ドラムの音がだんだんと後景に退き、ギターと声、雄大な響きが前面に出てくる
ドラムは手数は減らないものの音量が減っていく、静かにドラムがフェードアウト
コードとコーラスが残る、コーラスが前に出てくる、これはなかなか感じたことがない感覚だ
あまりアメリカのバンドを聴かないからな、北欧の山や自然とはまた違う大自然の描写を感じる
★★★☆

全体評価
★★★★
長尺曲が多いがそうした長尺曲も見事に聞かせきる力がある
ただ、アルバム全体は45分と比較的コンパクト、2019年のBlood Incantationのアルバムもちょっと思い出した
色々な音楽要素が入っていて、何度も聴くと楽しい
先日聞いたEnslavedのような、一つの世界観を描き切る力量を感じるが、Enslavedほどの熟練度や孤高の世界観はない代わりにフレッシュさや娯楽性が高い
和音構成などが分かりやすく、人間味がある
アコースティックな音像、カントリー的な音像がところどころにさしはさまれるが、いわゆるフォークメタルほど露骨ではない
気が付くとそういうシーンが曲の中に挟み込まれている、というレベル
そうしたシーンから激走シーン、轟音シーンへの切り替えが自然でうまい
面白い感覚だった、耳に残る歌メロやフックは少ないが、全体としての起伏や展開で飽きずに聞くことができる
オーケストラやクワイアを使わず、あくまでメインはバンドサウンドでドラマを築いていくのもいい
西部開拓というか、「自分たちの力でやるんだ」的なところを感じる、硬派

ヒアリング環境
昼・家・ヘッドホン

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