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Antibalas / Fu Chronicles

Antibalasは1998年結成のNY,ブルックリンのアフロビートバンドです。フェラ・クティ系統の多人数、ポリリズムで反復的なアフロビート。ただ、曲は比較的コンパクト。フェミクティと同じ方向性ですが、NYのバンドだけあってもう少しさまざまな要素が加えられています。後、そこまできちんと詩を訳してはいませんが、アルバムタイトルやビジュアルから、アメリカの社会問題を反映したようなテーマが多い印象もあります。古くから知っていたバンドですが新譜が出ているのを発見して久しぶりにしっかり聞いてみました。やはりいい。キャリアを重ねているだけあって音楽の豊饒さが増していて、アルバム全体を聴いた時の満足感が上がっています。スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Amenawon
幽玄な響きの立ち上がり、控えめなリズム、涼し気なオルガン
ボーカルがユニゾンで入り、力強いコーラスが入ってくる
ベースが入ってくる、それぞれの楽器の演奏は控えめ
ドラムが立ち上がる、クールながら熱を帯びてくる
ギターはアフロビートマナーのギターリフを弾いているが音数は少な目
ボーカルは力強い
管楽器が立ち上がる、じゃがたらの「みちくさ」のようだ
フェラクティを東京で解釈したじゃがたらの音楽がNYでアフロビートを解釈するAntibalasと似るのは必然なのかもしれない
上品なジャズ的な音像、UKジャズのマイク・ウェストブルック「メトロポリス」辺りも思い出す
管楽器隊によるアフロビート的なフレーズが出てきて勢いづく、象の群れの鳴き声のようだ
ボーカルと女声コーラスとの掛け合い
ふたたび管楽器によるメインリフ、ドラムとパーカッションも手数が増えている
だんだんと音が減っていき終曲、8分半
★★★☆

2.Lai Lai
控えめなリズムとすこしたどたどしくひっかかるギターリフ
少し左右で拍がずれてポリリズムになる、ボーカルが緩やかにアジる
リズムが入ってくる、ややオリエンタル、アジア的な感じを受けるのはジャケットの印象からだろうか
そういえばこのバンドは多国籍バンドだったかもしれないな
ボーカルと女声コーラスの掛け合い、管楽器が吹き上げる
エコーが効いたベース、響きがどこか瑞々しく、管楽器はヌケが良い
アフリカンポップス、キングサニーアデとかユッスーンドゥールとか、アフロビートの濃密さで塗りつぶすのではなくポップスの余白を感じる
リズムが整理されているからだろうな、音のレイヤーが多いが各パートが整然としているから余白がある
約9分の曲、適度に長いが曲展開はしっかりある
曲を貫くのはLai Lai Ohの女声コーラスとの掛け合いか
コーラスが終わって少しベースがゆったりとしたテンポに、管楽器が再び入ってくる
オルガンが余白を埋め、雰囲気を作り出す
揺れるようなボーカルメロディ
★★★★

3.MTTT, Pt.1 & 2
MTTT、マラティカティックトック、の略だそう、最初に曲名コール
ちょっとレゲエ、ダブ的なゆるやかなリズム、そうか、このバンドの余白感は少しカリブ音楽の影響もあるのかもしれない
リゾート・ミュージックまで優雅ではないが、キューバあたりの景色が似合いそう
途中から入ってくるギターと管楽器はアフロビートマナー、フェラクティ的なオルガンソロ
ボーカルがクレイジーケンバンド的だ、ちょっと掛け声的な合いの手を入れてくる
銅鑼を打ち鳴らしそうなメロディ、中国的と言えるかな、管楽器のフレーズ
アフリカンなギターリフと「チックタックチック」の女声コーラス
レゲエなベースが入ってくる
リズムはアフロビート、ポリリズム、ドラムとパーカッションか
ドラマーはもともとジャズの人な感じがする
ミドルテンポながらじわじわと盛り上がる、「ハーッ!」の掛け声から語りで、中国的フレーズで終曲
やはりCKBっぽい
★★★★

4.Fight Am Finish
オルガンの響き、マイクを置いたような音、と思ったらこれがリズムになるのか
重いものを地面に置いたような音だ、こういうパーカッションか
管楽器がオルガンのフレーズに重なってくる
やはり中国的な響き、音階が入ってくる、ジャケットの通りオリエンタル、中国音楽辺りを少し意識しているんだな
そういえばかなり社会的なメッセージもあるバンドだったがこのアルバムでは米中摩擦もテーマだったりするのだろうか
ずっと聞いているとこのバンドのリズムになじんできてすっかり気持ちよくなってくる
渦を巻くような管楽器、語りのようなボーカル、女声コーラスが入る、フェラクティスタイル
管楽器フレーズをギターがなぞる、ギターの音が少し玩具っぽくていいアクセント
ライブ感があるというか、生活音的なノイズのような音がところどころに入るのが空間を感じさせて風通しが良い
ホワイトノイズもけっこう乗っている、ライブ録音なのだろうか
★★★☆

5.Koto
こちらもホワイトノイズから、ボーカルに乗っているのかな
聞き苦しい感じではなくむしろライブ感があって好ましい
太めのボーカルからスタート、男性コーラスとの掛け合い
ベースがブンブンうなってくる、キレの良い管楽器、たどたどしいギター
ギターのたどたどしさというのは下手ということではなく親指ピアノみたいな、少し偶然性のある音というか
Kotoというのは古都なのか琴なのか事なのか、あるいはアフリカの言葉だろうか
特に琴の音は出てこない
静かに様子をうかがうような、身を低くして揺れているような曲
管楽器にときどきすごくだみ声のような音が混じる、音を割って吹いているのだろう
動物の鳴き声のようで面白い響き、サウンド全体にいい汚し効果が出ている
途中から祝祭的なリズムにテンポアップ、ベースが踊る
パーカッションが盛り上がる、ボーカル、コーラス、掛け合いが続く
様子をうかがう感じから疾走というか、盛り上がる印象
クライマックスかと思ったらまだ曲半ばか、10分という長めの曲
かけていく、馬駆けのリズムだが、乗馬ではなくシマウマの群れが走っていくというところか、野生の疾走
テンポがもとに戻る、ベースが唸っている
途中で「シブヤ」という言葉らしきものが入る、その前にニューヨークニューヨークと言っているからニューヨークとシブヤがなんらか対比されているのか
言葉の発し方が力強い
ふたたび少しテンポアップ、動物が走り出すような
ボーカルラインも走り出す、呪術的な響きもあるコーラス、クライマックスに向かい盛り上がっていく
★★★★☆

6.Fist of Flowers
力強い女声コーラスと語り
カンフー、という言葉、カンフーファイティング的な曲か
少しファンキーなギターリフ、ベースが入ってくる、ポリリズムのドラムが入る
踊れる感じだがディスコ調ではない、クールなサウンドのキーボードが入る
スムーズでパワフルな管楽器、夜のクルーズ、潜るサウンド、浮かび上がり照らし出す管楽器はヘッドライトか
花たちの拳、という曲名と始まりの女声コーラスからすると女性のパワーについての曲なのか
ジャズマナーなサックスソロを経てボーカルが入ってくる
最初は整理されているなぁと思ったリズム隊だがだんだん説得力が増している
耳が慣れたのか、演奏の熱量が後半になるにつれて増えるよう意図的なプロダクションなのか
何かを叩くような音、Fistか、ボーカルとコーラスの掛け合いパート
最初のクワイア的な女声コーラスが戻ってくる、吹き上げる管楽器
この曲の管楽器の音色とフレーズはどこか勇壮な、心を盛り上げる響きがある
ベースは跳ね気味、キーボードはクールな音を出している
カンフーの掛け声的な「ハッ! ウッ!」みたいな声が入る
特にメロディにはオリエンタル感、中国音楽感は少ないが、女声クワイアがややそっち系とも言えるか
アフリカ的発声というよりアジア的な発声をしている
7分42秒で終曲
★★★★

全体評価
★★★★
全6曲、48分40秒、どの曲もそれなりに長尺だが間延び感なく心地よく聞ける
ライブではもっと延ばすのだろうか、このままやるのだろうか
ベテランバンドらしい安定感のある演奏だがスリリングさも失われず、英語が理解できて歌詞がダイレクトに刺さるともっと説得力があるのだろう
コーラスとの掛け合いや管楽器の入り方など次々と展開して娯楽性も高く、リズムもしっかりして強靭なので気が付くと体が揺れている
さまざまな景色が浮かんでくる音楽、旅先で聴いたら風景と共に記憶に焼き付くかもしれない
5曲目はアップテンポなパートもあり名曲、こういう勢いのあるパートがもう少し多いとより個人的には好み

リスニング環境
夕方・家・ヘッドホン

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