Deftones / Ohms
Deftonesは1988年結成、1995年デビューのアメリカのオルタナティブ・メタルの一群に位置付けられるバンドで、メタル界のRadioheadともたとえられるようです。独自の音響世界があり音の使い方が繊細で作りこまれています。じっくりヘッドホンで聞くとアルバム全体の中でも1曲ごとに音の表情が違う、アルバム全体で音響が計算されているような感じも受けます。ぼんやりとした霧がかかったような音像でありながら精緻な作りこみを感じる不思議な音楽、まず聴いてみて「心地よいかどうか」で判断すればよいのでしょう。さまざまなところにフックはあって、それを手掛かりに全体像を探っていくアルバム。
2020年リリース
★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補
1.Genesis
浮遊するキーボード音からスタート
空間的なギターのアルペジオが入ってくる
波間を漂うなような音世界
カウントからドラムイン、いきなりハードなボーカル
エフェクトが効いたスクリーム
ギターはディストーションが効いたヘヴィなリフだがプレイはけだるげ
ひきずるようなリズムだが力強い、ときどき蠢くように早くなる
コードが展開し、フックがあるブリッジへ、ギターメロディもある
コーラスでは元のテンションに戻りシャウト
あるいはヴァースに戻ったのか
テンションの高いtoolのような
ギターが有機的、うねっている
ベースがグルーヴを支える、走り出す
ボーカルがささやくように歌う
各パートのみずみずしさがある
ややメロディアスなボーカルパートからヘヴィなリフパートへ
強いスクリーム
★★★☆
2.Ceremony
何かを掘るようなギターの反復リフ
声が入ってくる、ドラムも途中で入ってくる、変拍子的
バンドサウンドになりコードが展開していく、コーラスが入る
ベースがけっこう目立つメロディを奏でる
ギターは反復リフからコードへ
テンション音を繰り返すソロ
静かなパートへ
けっこう00年代Rushなどにも通じる音作り
ベースが刻む
★★★☆
3.Urantia
空気感が変わる、曲の雰囲気がきっちり変わっていくのは良い
ギターの刻みが入る、かなりザクザクしている
疾走感はなく、ゆったり進む感じだが着実に進んでくる力強さがある
リズムが正確なのだろう
ボーカルは表情豊かでメロディアス
コーラスが終わり、少し無機質なパートへ
ふたたびヴァース、刻むリフの上で少しドリーミーだが不穏な音とメロディ
グランジ・オルタナの世界観
コードやシーンは展開していく、うまい
Incubasもこんな感じだったか、あれはもっとメタリックだったか
刻みパートで終わり
★★★☆
4.Error
ノイズっぽいギターからボーカルが入り、リズムイン
リズムはやや軽快
スクリームからバンドイン、飛び跳ねるリズム
ジャンプ系のノリ
ボーカルはつぶやくようなドリーミーな感じ
BMTHもこうか
ジャンプリズム、ジャンジャンジャジャッ、これは心地よい
ちょっとMarillionのような煮え切らないが抒情的なメロディがブリッジで
ノイズギターに戻りボーカル、ドラム、ギターノイズ
ノイズ感が強いがコードは奏でている
ふたたびグルーヴィーに
開放感のあるギター、メロディアス
だんだん音作りや語法に耳が慣れてきた、メロディセンスにも
有機的なバンドサウンドに展開していく曲調、ブラストはないが刻みはある
スクリームもやや耽美的でリバーブなどが強くサウンドに溶け込みがちだが煽情性は高い
★★★★
5.The Spell of Mathematics
ヘヴィなリフだが音作りがマイルド
ドラムはミドルテンポ、時計のような刻むギター
泳ぐような、空間的な音作り、遠いわけではないのだが、つかみどころがない
ボーカルはスクリーム、ギターもヘヴィなのだがあまり重圧がない
不気味さが少ないというか、攻撃性が向かってこないのだろうか
変化する生き物のような、海を泳ぐ大きな光る魚、鯨か
人工の何かなのだろうか
人工感、はそうかもしれない、ボウイとかに近いのかも
グラムロックの耽美性がある
そうか、耽美というのはキーワードかもしれない
音に沈み込む、音世界に埋没する
全体として流れていく、大きく耳を惹くパートが出てくるわけではないがずっと刺激され続ける
ハンドクラップ音が出てきた
こうしたちょっとした変化で耳を惹く
突然曲が突き放す感じはない
先の展開は読めない
★★★☆
6.Pompeji
包み込むようなギター音、ささやくような、訴えるようなボーカル
ただ、近づいてくる感じよりはそこで何かを訴えている
スクリームに、ピエロ的
何かがきしむような音、低めでメロディアスなボーカルからスクリーム
リズムは安定している、手数の多めのタム回しからコーラスへ
ベースのグルーヴが効いている
メジャーなコードになり間奏へ、追憶だろうか
幼年期から思春期を思い出させるような音
音世界に飛び込んで、溶け込んでしまえば気持ち良い
そういう耽美、酩酊音楽なのか
ドローン音、潜るような、水の音、残響音
カモメがないている、海か
終わりかと思ったらこれが間奏部のようだ
水辺で何かが起き上がってくる
感情だろうか、陽だろうか
落ちてきたのか上がっていくのか
絵で言えば印象派の水彩画
★★★☆
7.This Link Is Dead
そのまま次の曲へ、クールに音世界をつくるバンドにスクリームするボーカルが乗る
ボーカルが表情豊か、かなりエフェクトで音を溶け込ませている
ああ、こういうのがジャンルとしてのエモか
かなり音作りは洗練されていて、叫び声が耳に刺さることがない
リズムがやや早くなる
だんだんとリズムの手数が増えてくる
音程移動が大きいリフ
★★★
8.Radiant City
コードカッティング、ボーカルのスクリーム
煽情性が少ないメロディ、ブリッジで展開する
テンポも歯切れも良いが、攻撃性はそれほど感じない
ボーカルはスクリーム、角が丸いギターサウンドと言うか
この音が好きかどうかで好みが分かれるのだろう
要素としてはかなりヘヴィなのだが、音作りがメタルの方向性とは違う
もっと全体をなじませようとしている、各楽器パートは整理されてそれぞれ聞き取れるのだが溶け合っているというか
コード進行の展開は速い
唐突に終曲
★★★☆
9.Headless
夜明けのような、穏やかな朝のような音
つぶやくようなボーカルにヘヴィなリフ、場所が変わる
バックはかなり不穏な感じだが、ボーカルは穏やか
スクリームが少し入りコーラスへ、全体的に夢見るような、浮遊する音作り
リズムがしっかりしている
ヘヴィなリフパートに戻るが和音感が強くなっている
ボーカルメロディへのハーモニーが変わった和音感
たゆたうようなギター、間奏
ちょっとオリエンタルなフレーズが出てくる
浮遊するコーラスパートへ
歌メロが展開していく
★★★☆
10.Ohms
勢いのよいコード感の強いリフ、弾きまくる、音が急に明るくなる
ギターの存在感が強い、前に出てくる、ヘヴィロック
ボーカルが入ってくるとベースとドラムは後ろに下がるがギターは出たまま
ギターとボーカルがせめぎ合う、押しのけ合う
ぶつかり合う音は珍しい、他の曲と印象が違う
歌メロは空間的というか、煮え切らない抒情性
だが耳に残るフックはある
歌ってみたい
エレキギター弾き語りにベースとドラムが入ったような印象
なるほど、ライブではこんな感じなのかもしれない
今までなかった肉体感がある
★★★★
全体評価
★★★☆
不思議な余韻のあるアルバム、最終曲だけ生々しい音作りなのも確信犯だろう
そうなるとそれまでの音響も全部計算されていることになり、一度聞くだけでは分かりづらい
あまり聞いてこなかったジャンルなので語法が分からないところもある
ヘヴィ・ロックの手法、たとえばヘヴィなリフ、パワフルなドラミング、スクリーム、グルーヴィーなベース
そうした要素はあるのだが、全体として見た時にどこか霧がかかっている、よく見えるがつかめない
耽美性、酩酊感を感じていたが、それが最後には受肉する
けっこう煽情性が強い音楽をやっているのだろうが分かりやすい歌メロは少ない
リスニング環境
朝・家・ヘッドホン
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