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Conception / State of Deception

Conception(コンセプション)は1989年結成、1991年デビューのノルウェーのバンドです。中堅実力派バンドとしてコアな人気を集めていましたが1998年、ボーカルのロイ・カーンがUSのシンフォニックメタルバンドKamelotに引き抜かれ、解散。2018年に再度メンバーが集結し、本作は23年ぶり5枚目のアルバムとなります。よりプログレッシブ色が強まり、独特なメロディラインを歌唱力でねじ伏せるように歌っています。本作はファンからのクラウドファンディングも活用して作られたファンとのコミュニティによる作品。そのせいかテンションが高く挑戦的で実験的なアルバムに仕上がってはいますが、少しプロダクションには粗さがあります。ライブ感を出したかったのかもしれませんが、かなり要素が多い音楽なのだからもっと整理したほうがよかった気がします。とはいえ、曲、演奏は一級品。Conception復活作として期待に応える作品です。

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.in: Deception
始まりを告げるSE、砂漠的なオリエンタルなフレーズが微かに立ち上がる
弦楽器で映画音楽、大河ドラマ的なフレーズが響く
オーケストラの打楽器が入る、音が重なっていく
手数の多いドラムが入り、終曲、イントロ
★★☆

2.Of Raven and Pigs
前曲を引き継いでスタート、緊迫感のある歌メロ、テンションがかかっている
ギターも入ってきたがそこまでザクザクしていない、グランジオルタナ的な、少しダークで丸みがある音
リフそのものはキレがいい、リズムもハキハキしているが音は丸め
変拍子的なリズムで進む、ボーカルラインはところどころ語り掛けるような響き
テンションのかかったコードが和音感が強くなり、メロディが展開していく
うねる蛇のようなフレーズ、蛇行しながら曲が進んでいく
じっくりと歌うギターソロ
アジテーション、演劇的なボーカルが入る、バックの蛇行が強くなる
さまざまな音が入ってくる、革命の鬨の声か、「Revolution」の声がする
演劇的な曲
★★★★

3.Waywardly Broken
ミドルテンポ、引きづるようなドラムに、ささやきかける道化師のような声
朗々とした声に変わる、裏声が入る、かなりシアトリカルな歌い方
ギターは粘り気のあるリフ、グランジ感もあるがtoolっぽさもある、何か生々しい
独特の世界観と、プログレ的な老成感と音の密度、迫力はメタル的なスリリングさが同居している
切り込んでくるギターソロ、その後展開するボーカル、どちらかと言えばとっつきづらいメロディだが開放感がある
ギターが粘りながら刻んでいく、飛び跳ねる魚のようだ
ベースとドラムはちょっとプロダクションが90年代のUSプログレメタルを彷彿とさせる
★★★★

4.No Rewind
少し勢いがある曲、アップテンポというより、曲の展開がハキハキしている
ボーカルもハーモニーを使って言葉を並べていく
ギターも手数が多い、刻み感の強いリフ
ドラムの音が渇いている、もう少しヘヴィでもいい気もするが
ギターソロ、粘っこくどこかオリエンタルなフレーズ
ボーカルライン、転調しまくっているというか、不可思議なメロディ
音程だけで言えばフリージャズ的というか、変わった循環コードだがボーカルの歌唱力で歌いこなしてしまう
ドラムが連打して終曲
★★★★☆

5.The Mansion
ピアノとボーカル、静かに始まるがボーカルの歌いまわしが耳を惹く
自在に音が飛び回る、バンドが入ってくる、ポップというより美しいメロディ
スティーブ・ホガース自体のマリリオンのような
パワーバラードだが裏声が多用される、不思議な曲
女声のコーラスが入る、だいぶ声質やバッキングは違うがコンセプトはピーターガブリエルのUSあたりに近いか
Don't Give Upとか
★★★★

6.By the Blues
音圧高いリフからスタート、その後は反復フレーズにささやくような声
Tool感、グランジ・オルタナを通過した音だが音の緊迫感の作り方が上手い
ややアップテンポ、ギターはブリッジミュートを効かせつつ刻んでいく
抑制が効いたアグレッション
ボーカルの振れ幅が大きい、ボーカルとギターの絡み合いが魅力的
このバンドのボーカルはフレージングがギター的なのかもしれない、チョーキングみたいな音階もよく使う
ややブルージー、タイトルほどブルースは感じないがこのバンドなりのブルース
★★★☆

7.Anybody out There
荘厳なフレーズでスタート、砂漠の宮殿的だがエジプトよりはメソポタミア、中東かあるいは北アフリカか
弦楽器とボーカル、風が吹くSE
女声が微かに旋律を奏で、バンドが入ってくる
このバンドにしては素直な盛り上がるサビ、オケが鳴り響いてコーラス終了
ヴァースへ、ボーカルがかなり自由に展開していく、物語を紡ぐ
一聴して耳に残そうとしているメロディ、ドラムの打音がユニゾンでかなり強調される
ヴァースから間奏へ、間奏はテンションがかかったオリエンタルなフレーズ
プログレ的ではあるが、アグレッションが高い、ボーカルとギターが枠をはみ出してくる
★★★★

8.She Dragoon
弦楽器から、かなり演劇的な、訴えかけるようなボーカルが入る
オケが音圧を上げバンドが入ってくる、キレのいいオリエンタルなリフ
ブリッジでは分かりやすいコード展開、刻み、シンプルなアグレッションと展開早めのプログレメタル
ギターのカッティングやちょっとしたノイズなど装飾音の使い方が上手く、それが生っぽさにつながっているのか
コーラスはコードが展開していきスリリング、ギターの刻みがかなり強い
Rushのアレックスライフソンのソロアルバムもこんな音だったかも
けっこう音圧強めでカッティングしているのだがギリギリバンドサウンドの枠にはまっている
ボーカルもギターも枠を飛び出してくる感じが面白い
間奏、ギターリフ、ボーカル
ギターリフとボーカルが絡み合う瞬間がスリリング
コーラスが入り、多重的なボーカル、よくこれだけの音を重ねて整合性を取れるものだ
芯にメインボーカルがある、名曲
★★★★☆

9.Feather Moves(Remaster)
リマスター、とあるが昔の曲なのだろうか
浮かぶような浮遊感のあるドローン音、キーボードとギターのアルペジオ、その上でボーカルが踊る
夢を見るようなフレーズ、静かだが音程は飛び回る
ドラムが入ってくる、ドラムがやや前のめり
さっきまではかっちりしたリズム隊で、その枠をボーカルとギターが広げ、超えていた
今度はドラムも曲を引っ張っている、ベースも存在感が強い
ボーカルが歌い上げる、逆にギターはバッキングに徹している
コンセプト、アレンジの違いだけでここまで変われるならすごいが、たぶん録音時期が違うのだろう
間奏、ギターは切り込んでくるがベースも主張が強い
ボーカルが空間を埋める、何かの祈りのようだ
★★★★

全体評価
★★★★
作曲能力が高い、分かりやすいフックはないが心地よい
ギターとボーカルが絡み合い、枠を超えようとしてくる、世界観に説得力がある
惜しむらくはプロダクションが悪い、後、ベースとドラムがあまり前面に出てこない
枠がかっちりしている、安定感はあるが主導して曲を展開していく印象がない
ギターとボーカルが主導している
9曲目だけは表情が違う、バンドサウンドになっている
9曲目のテンション、プロダクションで全曲録音していたら間違いなく名盤になっていただろう

リスニング環境
朝・家・ヘッドホン

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