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Rhapsody Of Fire / Glory For Salvation

総合評価 ★★★★★

シンフォニックパワーメタルの良作。きちんと作りこまれていて、しっかり王道を歩いているけれど進化している。トップレベルのバンドによるトップレベルの作品。イタリアのバンドらしく、こういうオペラティックなメロディを作らせると上手い。疾走感よりはミドルテンポ主体で、その分メロディの煽情性に重きが置かれている。この「歌心」がボーカルはもちろんギターフレーズにも徹底していて、とにかくメロディアス。また、オーケストラも多用されているがベースとなるのはバンドサウンドと勇壮なボーカル。クワイアコーラスの壮大さは胸を打つ。最初から盛り上がりはするものの序盤は「まぁ、こういうパターンかな(ちょっとビートは弱いな)」ぐらいの感覚だったが(何作も出しているベテランだから、新規性というのはどんどんハードルが上がる)、6~7曲目あたりの中盤からグワッと盛り上がり、コーラスの分厚さとか音の迫力も増して感じる。面白い物語を読んでいると途中からどんどん引き込まれるような感覚。ファンタジックなパワーメタル好きなら必聴。ラプソディは今も変わらずいいバンドです。


1 Son Of Vengeance 5:46 ★★★★☆

シンフォニックなオーケストラからスタート。ミドルテンポでオーケストラとバンドの融合度が高いイントロ。勇壮な歌メロ、ボーカルのオペラティックなハイトーンは見事。やはりイタリアのバンドらしい歌心がある。クラシカル風味も器楽的というよりオペラティック。ソロも歌心がある。「歌」と「メロディ」が主役。クワイアコーラスが入ってくる。その分ビートはやや抑えめというか、堅実な展開。良質なシンフォニックパワーメタル。

2 The Kingdom Of Ice 4:25 ★★★★☆

1曲目よりはアップテンポな曲。ギターリフはメロディアス。「歌う」ギターリフ。クリスマスソング的な、というと語弊があるか、まぁ、きちんと作曲されたオールディーズ感もある丁寧な歌メロ、に高速化するビート。クワイアコーラスが大仰なので讃美歌的な雰囲気もある。コーラスのツーバスが高速だがものすごくバタバタしていてちょっとかわいらしい音響。このパタパタした音は意図的な音作りなのだろうか。ギターサウンドはややバイオリン的。

3 Glory For Salvation 5:04 ★★★★★

シンセリフが入ってくる。そこからクワイアコーラスとツーバスへ。大仰だな。シンフォニックで大仰。歌メロはやはり独特なメロディアスな感覚がある。リズムはけっこう引っ掛かりがあるというか、激走してはストップする、ストップアンドゴーを頻繁に繰り返す。面白い曲。ベテランならではの高い完成度。

4 Eternal Snow 1:33 ★★★☆

尺八のような音。横笛だな。語りが入る。そういえば3部作の2作目、という位置づけらしい。相変わらずファンタジックでオペラティックなメタル。

5  Terial The Hawk 4:46 ★★★★☆

前のインタールードのメロディをそのまま引き継いでバラードへ。途中からミドルテンポでツーバスが響く勇壮なパワーバラードへ。重厚感と軽快さがある。スコットランド、またはアイルランド伝統音楽的な音階が入る。

6  Maid Of The Secret Sand 5:07 ★★★★★

ツーバスが連打されるがそこまでテンポは速くない。メロディアスさの方が重視されている。ボーカルとギター、どちらもメロディアスなサウンドを奏でているが、この曲のメインのバッキングはオーケストレーションが担っている。オーケストレーションのバックにドラムとコーラスが乗る。ツーバスで連打するドラムがなければひたすら勇壮なオペラとも言える。途中からかなりテンションが上がっていく。こういうドラマの最高到達点の高さは流石。

7  Abyss Of Pain - Part II 10:44 ★★★★★

大曲。オープニングからかなり盛り上がる、荘厳なオーケストレーションとザクザクしたギターリフが互いに絡み合う。S&M2のようなオーケストラとバンドサウンドのせめぎあい。ボーカルが入ってくるとオーケストラはやや影を潜め、バッキングに徹する。前の曲よりギターが前面に出てきた。ボーカルはオペラティック。途中、イタリア語のパートも出てくる。やはりイタリア語の母音は独特な感覚がある。荘厳なコーラスが響く。Nanowar Of Steelが「イタリアンフォークメタル」と多少パロディでアルバムを出したが、これは本気かつ最高峰のイタリアンメタル。白眉。

8  Infinitae Gloriae 4:31 ★★★★★

全曲の大仰な雰囲気を引き継いたアップテンポな曲。テンションはそのままにアップテンポ感が続く。ドラマの盛り上がりが続いている、良い小説は読んでいるうちに読む手が止まらなくなるが、そういう感覚。中盤あたりから一気に盛り上がってきて勢いが出てきた。次がどうなるのかワクワクする感覚。この曲も一部イタリア語らしきものが使われている。適度にイタリア語と英語が混ざっているのがうまい。

9  Magic Signs 4:52 ★★★★☆

ドラマティックなメロディのイントロから。泣きメロというか、映画音楽的なドラマ性がある。そこからアコースティックなパートへ移行、バラードに変わる。盛り上がるバラード。

10  I’ll Be Your Hero 5:29 ★★★★★

クワイアコーラスと、ユニゾンのリズム。とにかく大仰でドラマティックでシンフォニック。最初のうちはなんとなく音が軽めに感じたが後半にはその感覚はすっかり払しょくされている。メロディアスで盛り上がりのある曲。リードトラックらしい。メロハー的な、印象に残るフックがある。ちょっとヘアメタル的なわかりやすさ、ポップさも感じる曲。サビがちょっとメイデンのRun To The Hillsっぽい。リズムも意識してるし。

11  Chains Of Destiny (Quingdar) 3:55 ★★★★☆

アップテンポ、今までで一番BPMは早いかも。いわゆるメロスピ的なパワーメタル。おお、王道メロスピなコーラス。ベタだけどこういうのは盛り上がる。これで本編修了。

Bonus Tracks

12  Un’Ode Per L’Eroe 4:51 ★★★★☆

ここからボートラ。これは収録曲のイタリア語バージョンかな。9曲目のイタリア語バージョンっぽい。タイトルは「英雄への頌歌」という意味らしい。こういうオペラティックな発声、メロディはイタリア語は合うなぁ。

13  La Esencia De Un Rey 4:51 ★★★★☆

あ、これも同じ曲か。こちらはスペイン語バージョン。この曲でグローバルに攻めていこうとするのか。こうして言語違いのボートラは面白い。スペイン語はやや細目というか、ヴァースでは喉を締める感じがする。

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