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週間プレイリスト 2022/8/19

少し涼しくなってきましたが、湿度が高いですね。汗ばむ季節が続いています。でもそろそろ夏も終わりが近いかも。残り少ない夏を楽しみましょう。

フジロックもダウンロードジャパンもサマソニも終わり、フェスシーズンも終わりですね。でも日本はいつまでマスク声なしライブやるのかなぁ。世界の多くの地域(僕が6月に行ったUKは完全に解禁されていたし、欧州メタルフェスの映像をいくつか見る限り完全にコロナ前に戻っている。アジア圏は不明)ですでに解禁されているんですよね。

とはいえ、あとはタイミングでしょう。それぞれの国で事情も環境も違うからローカルルールがあるのは当然のことですが(たとえばアメリカでは屋外で飲酒禁止です。公共の海岸でバーベキューやって酒飲んでると警察が来ます。日本がいろんな面で「特に厳しい」わけではありません)、ライブについてはやがて世界標準に日本も近づいていくと思います。音楽業界は海外との交流が盛んですからね。海外アーティストの来日も国内アーティストの海外ツアーも多いし。自然と平均化していくんじゃないでしょうか。

なお、サマソニにしてもフジロックにしてもダウンロードジャパンにしても、「海外アーティストは普通に声出しを煽っていた」みたいな書き込みを見ることもあったので思ったんですが、それは仕方ない面もあると思うんですよね。それに乗るかどうかは聴衆の問題で。

というのも海外(の大物)アーティストって世界中をワールドツアーしているわけで、たとえば1年とか2年がかりのツアーを世界数十か国とかでやるわけですね。英語圏のバンドならUS内と欧州を回る期間が多い(USだけで数十か所回ったりする、広いから)と思いますが。で、その長いツアーの中で日本にいるのはせいぜい数日です。なので、日本だけパフォーマンスの内容を変える、ということはほとんどしない(というか多分できない)んですね。コールアンドレスポンスって現代のライブパフォーマンスではもう土台として組み込まれているものだから、アーティスト側はそれぞれの決まり文句で煽ることが多い。アーティスト側は「日本は声出し禁止なんだ」ということが頭でわかっていても体に染みついたパフォーマンスだからやってしまう人もいれば(ライブは全力勝負だから全部コントロールできない)、最初から意思疎通があまりできないタイプ(そもそもアーティストはプロモーターの話をきちんと聞いたり、各国のルールを理解して守れるタイプの人間ばかりじゃない)もいるんじゃないかなと思います。もちろん、色んな文化・環境の国でライブをするわけですから、そうしたことにきちんと対応、適応できるアーティストもたくさんいますが、全てのアーティストにそれを求めるのもちょっと無理があるんだろうなと思います。

一つ思い出した映像があります。北朝鮮でライバッハがライブした時の映像がこちら。これはドキュメンタリーなので実際の映像です。2015年。

基本的に椅子に座って、声も出さない。というか、憲兵が会場内に立っているので声を出してはいけないんですよ。これ、旧ソ連のことを描いたLETO
という映画
でも似たようなシーンが描かれています。

で、日本だって1945年の敗戦まではこうだったんですよね。歌謡曲のコンサートとか座って聞くものだった。参加しても手拍子とか。戦時中の歌謡とかこんな感じ。

ただ、日本だってロシアだって(少なくともコロナ前とウクライナ戦争前は)海外のロックミュージシャンが公演を行い、同じように乗っていた。「憲兵が見張るライブ」「着席するライブ」から「飛び跳ねるライブ」に変化ですよ。海外と交流していくことで海外のノリに近づいていく。

音楽って相互の文化交流ですから、そういう効果もあるんだと思います。洋楽のアーティストを観るのは、そうした「ライブの楽しみ方」みたいな周辺のスタイルを含めて海外文化に触れることでもあるんですよね。もちろん、各国の差異はある程度残るけれど、やっぱり世界的に標準化されていく。

なので、来日アーティストが増えていくと、だんだんと海外と日本の差が埋まっていく気はしています。9月には入国時のPCR検査の義務解除、訪日人数上限増ということもあり、アーティストだけでなくだんだんと海外からの旅行者も増えるでしょう。そうなると日本のライブシーンもだんだん元に戻っていくんじゃないですかね。そんなことを思いました。

前置きが長くなりますが、せっかくこんな話題を出したので「今のロックコンサートのノリ」がいつごろ生まれたのか、ちょっと振り返ってみましょう。1956年のアメリカのライブはこちら。

すでにスタンディングで熱狂しています。

で、戦後日本は進駐軍の影響でほぼほぼリアルタイムでアメリカの音楽が入っていたから、「ロック文化」の普及はむしろ世界でも早かった方らしいです。こちらは日本の1958年の映像で、みな座っていますが歓声は上がっていますね。

そして伝説のビートルズ来日、観客の絶叫で演奏が全く聞こえないといわれた武道館公演につながっていくわけです。こうしてみると、日本は昔からロック先進国なんですね。60年以上の時をかけて蓄積してきた日本のライブコンサート文化、盛り上がりは近いうちに復活するでしょう。

前置きが長くなりました。今週のプレイリストです。今週はメタルはいつも通りですが非英語圏のアーティストは少な目。日本語アーティスト1名以外は全部英語です。それでは今週も行ってみましょう!

TIDAL

Soilwork / Övergivenheten

スウェーデンの大物メタルバンド(と言っていいでしょう)ソイルワークの新譜。アルバムタイトルÖvergivenhetenの意味は「放棄」。もともとメロディックデスメタルスタイルでしたが、だんだん王道のパワーメタル、プログメタル、欧州メタルに寄ってきて、プロダクションもスケール感が増してきました。ドイツのクリーターみたい。クリーターもスラッシュメタルからスタートして今は正統派メタルバンドとして頭一つ抜けた感じがします。ソイルワークの魅力って歌メロがいいんですよね。リフもいいし。20分強の長尺曲を聞かせきる作曲能力がある彼らの持ち味が生きた作品。ただ、アクは薄れ気味なのでそこが評価が分かれるポイントかも。歌メロやリフに妙な引っ掛かりがあるのが特徴だったので、今作はちょっと王道を狙いすぎかも。良質なメタル作品なのは確か。


Sprit Adrift / 20 Centuries Gone

USのドゥームメタルバンドの新譜。前作の出来が素晴らしく界隈では話題になりました。ドゥームと言ってもそんなに暗鬱で重苦しい感じではなく、ミドルテンポでけっこうハキハキしています。好きなバンド。けっこう最近のアイアンメイデンっぽいんですよね。「戦術」にも近いところがある。ボーカルスタイルがだいぶ違うのでフォロワー感はあまりありませんが、時々入ってくるツインリードやドラムのパターンなどメイデン色があります。


Blacklab / In A Bizarre Dream

初めて知ったバンド。日本、大阪のウィッチドゥームバンド。二人組のようです。ウィッチドゥーム(魔女のドゥーム)って言いえて妙ですね。まぁ、ロザリーカニングハムとかルシファーとかだと思うんですが、このバンドはボーカルはもっとスクリームするところは唸る感じ。ドゥーミーでハードコアです。スラッジメタルな感じ。世界的Doom/Stoner Rockの祭典Desertfest Londonなるものがあるらしく、2022年、つまり最近出演したとのこと。確かにレベルが高いドゥームメタル。アルバム全体のバラエティもあります。


Eli Winter / Eli Winter

シカゴのギタリスト/作曲家のイーライ・ウィンターのアルバム。インストですがいいアルバムです。テクニカルとかいうより、音がいい。メロディ展開もいい。適度にアメリカンながらちょっと音響的なところもあり(シカゴだから? シカゴ音響派の人脈とかあるんでしょうか)、実験的なところも。生々しくて聞いていて心地よい音。朝にふさわしい音楽だけど夜も聴ける。


Voodoo Kiss / Voodoo Kiss

ドイツのB級バンド。95年結成ながらアルバムを出しておらず、なんと本作がデビューアルバム。結成27年でデビューか! で、なぜこれを取り上げたかというとこのバンド、サマーブリーズオープンエアの主催者なんですね。ドイツの大型メタルフェスといえばヴァッケンが著名(約8万人動員)ですがサマーブリーズもそれに次ぐ規模で4万人動員。今年のサマーブリーズはYouTubeで生中継されたことで話題も呼びました。そんなオーガナイザーがついに自分たちのアルバムを出した、ということで、さすがその名に恥じないメタル愛を感じるアルバム。正直B級ながら、メタル愛はしっかり感じます。彼らがいなければサマーブリーズオープンエアはなかった。ヴァッケンと同じく、もともと地元のバンドが自分たちのために始めたフェスなんですね。


Five Finger Death Punch / Afterlife

B級からS級へ。正統派に入るかどうかはさておき、USメタル界の人気者、ファイブフィンガーデスパンチ(5FDP)の待望の新譜。ディスターブド、5FDP、アヴェンジドセブンフォールドあたりが今のUSメタル界のトップか。あんまり欧州メタル愛も過去のメタルレガシーの継承感もメタルという音楽の開拓野心みたいなものもないためマニア受けはしませんが、聞くとやっぱりカッコいいです。ダウンロードUK2022でも(出演しないのに)一定数Tシャツを見かけたので、「支持されてるんだなぁ」という印象。メタルというより「アメリカンハードロックバンド」といった方がいいかも。曲によってはけっこうメタリックなものもありますが。


あいみょん / 瞳に落ちるよレコード

あいみょんは歌メロがいいですね。ボカロ文化以前の「人間が口ずさみやすい」メロディなんだけれど、きちんと2022年的なフックもある。90年代的なJ-POPの雰囲気を持ちながら、今のアーティスト感がある稀有な存在です。今作もメロディが良質。TIDALでも配信しているので(Aimyon名義)、世界進出しているんですね。まったく海外を意識していない音作りだと思いますがどれだけ届くんだろう。シティポップ文脈とかで解釈されるのでしょうか。RYMの評価は今のところ芳しくありませんが、RYMで受けたからって市場評価とはかけ離れていますからね。


Hammer King / Kingdemonium

ドイツのハンマーキングの新譜、昨年4thアルバムを出したばかりなのに新譜が出ました。創作意欲が活発ですね。バンドの状態がいいのでしょう。勇壮なパワーメタル、いかにもなジャーマンメタルですが、ボーカルの声はけっこう軽やかでやや線が細め。重厚感には欠けますがそれが独特の軽さ、聞き疲れなさを生み出しています。曲作りもだんだんレベルアップしていて成長中のバンド。


Thundermother /Black And Gold

ご機嫌なハードロック、スウェーデンの女性4人組のバンド。スウェディッシュハードR&R。バックヤードベイビーズにも近いし、ちょっとUKロックの翳りもあります。本作はクオリティが高い快作。聞いているうちにテンションが上がっていくアルバムです。


Pat Travars / The Art Of Time Travel

ギターが若い! 1970年代から活躍するカナダのギタリスト/ヴォーカリストのパットトラバースの新作。声はさすがに年相応(68歳)なところもありますが、ギターフレーズは若々しい。Mr.Bigのポールギルバードが「ギターの神」としているのがこのパットトラバースで、確かにポールのルーツの一つと言われれば納得感がある、メロディアスでフレッシュなギターサウンド。ベテランの熱量を感じるアルバム。この世代のアーティストはMV作らない人も多いですね。音で勝負。70年代的な「ハードロック」をアップデートし続けている方。


Conan / Evidence Of Immortality

激重&酩酊。ストーナーバリバリのアルバム。UKはリバプール出身のドゥームメタルバンドで、ひたすらヘヴィネスを追及しています。ふと思ったけれど今週はドゥーム系多めですね。偶然そういうリリースが多かったのでしょう。その中でもこのコナンが一番ダウナー&ヘヴィです。素面で聞くのはなかなかつらい。ただ、サウンドドラッグ的な音です。ちょっと酔っぱらって聞くといい感じ。あいみょんと同じプレイリスト入れてるのどうなんだって話ですが。世界にはいろんな音楽があるんですよ。いろんな人のいろんな感情があるから。あ、あとこれも偶然だけどナパームレコードのアーティストが多いかも。


Panic! At The Disco / Viva Las Vengence

「emo」と呼ばれるシーンから出てきて、現在では最大の存在になったといえるパニックアットザディスコ。娯楽性が高くて何気に好きです。エモにくくられるアーティストの中では個人的に一番好き。本作はエルヴィスコステロ meets (アダムランバート期の)Queenみたいな。大仰なんですよ。だけどパンキッシュ。で、そのメロディはコステロみたいにひねくれてる。最初はきちんとしたバンドだったんですが、喧嘩が続いて現在のボーカルであるブランドンユーリーのソロプロジェクトに。そこで潰れず独特の存在感を増したところが凄い。本作もクリエイティビティの衰えは感じません。ここ数作キレッキレ。マニアからの受けは悪い(RYMの評価は散々)ですが、このはじけるようなポップさってよほどの覚悟がないと出せない。


SRSQ / Ever Crashing

だいたいこのプレイリスト、後半になるとメタル以外が出てきますね。「〈Dais〉に所属するユニットThem Are Us TooのメンバーであるKennedy Ashlyn WenningのソロプロジェクトSRSQ、プロデューサーにChris Coady (Beach House, Slowdive, Zola Jesus)を迎えた2ndアルバム。」とのこと。ポストパンク、シューゲイズなサウンドとされていますが、聞いたときに耳に刺さったんですよね。「お、これいいな」と。音のバランス、メロディ展開、雰囲気が僕の好みです。


David Paich / Forgotten Toys

TOTOのデビットペイチの初ソロアルバム。TOTOの創設時からずっといるメンバーって実はペイチだけなんですよね。スティーブンルカサーはちょっとあとに入っている。まぁ、デビューアルバムリリース前だからほとんど創設メンバーなんですが。長いTOTOの歴史は、全体を通してみるならばスティーブルカサーとデビッドペイチの歴史である、ともいえるでしょう。ロックダウンで時間があったから作られたアルバム、ということでDIY的でアットホームな感覚もありつつ、さすがデビッドペイチだけあって音楽は一流。リラックスしながらも匠の作曲。肩の力を抜いて聞けるけれど決して物足りなくはないミニアルバムです。


Mellow Mood / Mañana

この夏はプレイリストに必ずレゲエを入れていた気がします。夏はレゲエが合いますよね。今週のレゲエ枠。このメロウムードというバンドはイタリアのレゲエバンドだそう。イタリア! なかなか珍しいですね。そこが耳に残ったのかな。ただ、歌詞は英語のようです(そう聞こえる)。2005年から活動しており、本作が6枚目のよう。ビートが生き生きしていていいサウンド。


Terence Etc. / V O R T E X

Terence ETC.はテレンス・ナンスという映像作家(監督)の音楽プロジェクトらしく、映像作家がメインのキャリアのよう。HBOで放送されているRandom Acts of Flynessの監督のようです。そういわれれば映像的な音かも。とにかくシーンが目まぐるしく変わっていく、プログレッシブポップ、アートポップな音。テンポが速くて、かつけっこう情感が籠っていて面白い音楽です。


以上、今週は16枚のアルバムが耳に引っ掛かりました。それでは良いミュージックライフを。


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