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Hellripper / The Affair of the Poisons

Hellripperは2014年結成のUKのパワー/ブラックメタルバンドです。TIDAL(使っているストリーミングサービス)のレコメンドで出てきたので思いっきりB級なジャケットに惹かれて聞いてみました。これがなかなか良作。全8曲、30分弱ながら激烈に駆け抜けていき爽快感があります。どうも一人プロジェクト、宅録DIYメタル系ですね。メタル好きなんだろうなぁ。こういう味わいが好きな方にはたまらない良盤です。メタルマニアによる、メタルマニアのための作品。スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.The Affair of the Poisons
奔流のようなドゥームリフ、うねる泥流のように押し寄せてくる
そこからスラッシーな刻みリフでテンポアップ
完全にオールドスクールスラッシュマナーで曲が疾走
ボーカルもがなり型、ハードコア、パンク直系のスクリーム
リズムはかっちりしている
コーラスでハーモニーが入ってくるとややカオス味が増す
80年代後半~90年代初頭のスラッシュバンド発掘音源のリマスター版と言われたら信じるかも
ギターの音が当時っぽい、確信犯
ツービートで疾走、コーラスが終わり間奏でテンポダウンしミドルテンポに
曲がけっこうきちんと構成されている
もう一度最初と同じ小刻みなスラッシュリフから疾走、ギターソロへ
弾きまくるというよりきちんとメロディがある
やけくそのような、昔のスラッシュのような暴走型と思わせつつ曲は練られている
★★★★

2.Specters of the Blood Moon Sabbath
軽快なスラッシュリフ、前の曲よりは少し緩やか、高速ロックンロール感もある
なんだろう、懐かしい感じ、デストラクションとかメコンデルタとかタンカードとかあのあたりだろうか
ずいぶん聞いていないので具体的な質感が思い出せないが、90年代のB級スラッシュの質感
ただ、曲構成はしっかりしていて構成力が高い
こちらもしっかり構築されたコンパクトなギターリフ
90年代スラッシュマナーだが、80年代、70年代のパンク、ハードコアルーツを強く感じる曲
演奏はきちんとしている
★★★☆

3.Vampire's Grave
Motorheadっぽい、歌い方も似せている感じ
Bastardsあたりに入っていそうな曲
交互に出てくるギターソロ、比較的長めだがきちんと落としどころが作ってある
このギターリフからドラムとボーカルがなだれ込んでくる感じがMotorhead
コーラスではツーバスだが、ドコドコ感は薄く軽快で疾走感あり
ライブが楽しそう
★★★★

4.Beyond the Convent Walls
スラッシュ刻みリフからツービートで疾走
ギターの刻みが心地よい、小刻みで音程移動があるリフ
ボーカルラインとギターリフが絡み合う、ボーカルもメロディアスではないがきちんとフックがある
単にアジる、叫ぶのではなくテンポの緩急でコールアンドレスポンスの見せ場や印象的なパートがある
ベースはあくまで疾走スラッシュだが少しブラックメタルの単音リフを想起させる瞬間もある
途中でテンポダウンしてミドルテンポで、KISS的なロックンロール的なパートへ
疾走に戻りギターソロ、ルームリバーブのような生々しさ
きちんとツインリード、ツインリードのタイミングはちゃんと合っている
そのあたりの演奏技術や録音はしっかりしている
★★★★

5.Savage Blasphemy
つづけて疾走、小刻みなリフに疾走パターン
今度はボーカルが跳ねる、Motorhead的なだみ声とキングダイアモンドやクレイドルオブフィルス的な爬虫類声が混じる声質
休むことなく疾走していく、コーラスを終えて間奏へ
間奏の構築力が高い、リフで少し進んでからギターソロへ
リズムの載せ方が楽器隊もボーカルもかっちりしていて気持ちいい
音作りは古いものの歯切れがいい
★★★☆

6.Hexennacht
Motorhead、ロックンロール型の暴走曲
というか今まで前曲疾走感はある
声質はAC/DCにも近いかも、ダミ声だが高音
なんだろう、全体的にはオールドスクールで懐かしい感じなのだが、新しい感じもある
こんなに完成度が高い曲ばかり出てくるアルバムってそうそうなかったからな
ただ、新しい音楽を生み出しているかというと懐古主義なのは間違いなく、そのあたりが難しい
★★★★

7.Blood Orgy of the She-Devils
こちらも暴走系ロックンロール、ギターが刻みよりメロディというかコード的なノリを出している
ドラムは変わらず軽快に走る感じ
歌メロもリズムの作り方がややゆっくり、言葉を吐き出しまくるというよりはフレーズを歌っている
間奏で雰囲気を変えて、再びコールアンドレスポンス系のコーラスへ
★★★☆

8.The Hanging Tree
少しテンポダウンしてスタート
パンク、ハードコアっぽい、不協和音感のあるコード進行でヴァースが展開
そこからテンポアップして暴れ始める
コード進行、音のつなぎが無理やりな力業の感じで、これも当時のB級スラッシュっぽい
なんというか、けっこう変なコード進行がどんどん探求されていた印象がある
ギターリフを平行移動させるとスケールからはみ出る不協和音が出てくるがそれを意図的に使う感じ
ミドルテンポに戻って間奏、けっこうメロディアスで勇壮なギターソロ
タイトルは「吊られている木」だが、ロクなものは吊られていないんだろうな
最後にややヨーロピアンなアルペジオギターフレーズ、ソロといいこの曲はヨーロピアンメタルを意識したのだろうか
ボーカルはハードコア的だったが
★★★☆

全体評価
★★★★
全8曲、30分弱、疾走して駆け抜けていく
どの曲もレベルが高く、きっちり構成している、こういう良曲がそろっているアルバムは珍しい
このバンドならではの新しい音像や個性と呼べるものがはっきり出ているわけではないのが惜しい
やけくそ気味に疾走する、ハードコア直系のスラッシュ曲が多い
その割に演奏はけっこうかっちりしていて、破綻やリズムの走りはない、演奏力はあるのだろう
短くて心地よいから気に入る人は気に入るし、掘り出しモノ感があって愛聴盤にもなるだろう
オールドスクールスラッシュメタル好きなら聞くとニヤニヤする良盤

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