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Persuader / Necromancy

Persuaderは1997年結成、2000年デビューのスウェーデンのパワーメタルバンドです。主要メンバー2名(イェンス・カールソン(Vo)、エミル・ノーベリ(G))が元ブラガのトーメンとSAVAGE CIRCUSというバンドを組んでおり、音楽性的にもブラガを彷彿させるファンタジックで曲展開が複雑ながら勇壮感と突進感のあるパワーメタル。とはいえスウェーデンらしいメロディセンスも感じられ、(個人的北欧ブームもあり)最近のブラガより好みでした。あと、この音楽性なのにメロハーの殿堂、イタリアのフロンティアレコードからのリリースなんですよね(日本ではAvalon)。その影響か、歌メロがけっこうフックが効いている曲もあります。なんにでも”フロンティア・スピリッツ”を注入してくれる素晴らしいレーベルですね。メタル界のAvex(レーベルの特色が音に現れる)的な。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.The Curse Unbound 6:36
太いベース音、全楽器の音がいきなり飛び出してくる
ミドルテンポ、硬派な音作り
フロンティアレーベルとのことだが果たしてフロンティアらしさは出てくるのか
そこから猛烈な疾走、小刻みでメロディアスなリフ
ここまで疾走するとは予想外
メロスピ的なハイトーンボーカル、ただ、メロディはけっこう引っ掛かりがある
歌メロはややブラガを彷彿させる、高音の歌いまわしだろうか
バッキングのパターンがメロデス的
ブリッジからコーラスへ、展開が凝っている、この辺りの展開は曲自体がブラガ的
ただ、疾走感はかなり高い、やや一本調子になるリスクもあるがやけくそな勢いを感じる
疾走曲は勢いが大切、勢いがあるからスリルが出る
そうか、フロンティアらしい分厚いコーラスも出てくるが、ブラガ方向にコーラスを振るとは
ちょっと高音で透明感があるのはプロダクションか
間奏で雰囲気が変わる、郷愁を誘うようなメロディ、この音作りはちょっとチープだが味わい深い
からのギターソロ、ギターソロも練られている
勢いを保ったまま終曲、6分半という長さを感じさせない勢い
★★★★☆

2.Scars 4:58
ややミドルテンポで複雑なリフから
と思ったら疾走に、ツーバス連打
ちょっとBPM自体は遅いのかな、前の曲より体感では遅く感じる
コーラスは勇壮、コーラスに至るまでのブリッジも練られている、ハーモニーの入り方などが少しずらしている
複数のメロディ、歌メロが立ち上がって鬨の声のようになる
この辺りはブラガ的手法ではあるが、完全なフォロワーかというとそうでもない
やはりメロディセンスが違うし、音作りもちょっと違う気がする
リフとか疾走感のところ、やけくそ気味の勢いやアグレッション、若さといったものを感じる
★★★★

3.Raise The Dead 5:51
メリーゴーランド、サーカスのような前奏
こういうSE的なキーボードの音がかなりチープというか独特のなつかしさがあって面白い響き
そこからモダンなヘヴィリフが入ってくる
歯切れのよい、というか言葉に力のこもったボーカルが入る
コーラスでツーバス連打になるのだがその後のタム回しがくどいぐらい続く、面白い
パワーメタルのツーバスというより、ドラムについてはデスや一部ブラックメタル的な響きも感じる
性急な感じがして好ましい
メロディも次々と展開していく、展開が早くていろいろなものが詰め込まれているが破綻していない
きちんと歌メロで回収する、サビで盛り上げる、リフで盛り上げる、それぞれのパートが機能している
バンド全体がうねる感じがある、編曲の力か、アンサンブルの勢いか
一丸となって疾走する、グロウルっぽさ、00年代以降のエクストリームミュージックをきちんと取り入れている
★★★★☆

4.Reign Of Darkness 5:56
展開の速いリフから、この曲もアップテンポ
ここまでずっと勢いが良い、なんというかスラッシュ・デス的なノリもあるな
メロスピとは違う、スピードパワーメタル感、ここまで勢いがありつつしっかりパワーメタル的な硬派感があるのは珍しい
この曲はハーモニーが効果的、高音コーラスがテンションを上げる
リフでリズムチェンジするところはテクニカルデス的な表情もある
ボーカルはメロディアスだがハイトーンのクリアボイスではないし、けっこうアグレッションが強め
これもツーバス連打、最高速はスラッシュ、デス的
早いのだが軽やかで加速感がある
ところどころリフでデスメタル的な暴虐性が出る
6分近い曲ながら疾走しきる、構成力が高い
★★★★☆

5.Hells Command 5:36
こちらも小気味のよい疾走曲、メロデス的な刻みのあるメロディアスなリフ
と思ったら少しリズムが落ち着いてメロディアスなギターフレーズが出てくる
だんだんと熱量が上がっていく、この曲はちょっと歌いまわしが違う
メロスピ的というか、ジャーマンパワーメタル的というか
けっこう王道的、意表をつく展開や急なアグレッションの増大は少ない
ツーバスもミドルテンポ気味
間奏はメロディアスにギターソロが切り込んでくる
歌いまわしが一瞬ジェイムスヘッドフィールド的な語尾を使うのはご愛敬か
★★★☆

6.Gateways 6:30
ミドルテンポ、じっくりと進んでくる
キーボードが無国籍な、どこか(昔の)プログレ的なメロディを奏でる
バッキングのギターはザクザクとリフを刻んでいる
ちょっとオペラティック、クラシカルな歌メロ、少し歌い上げる感じの歌唱
シンフォニックメタル的なメロディ、といった方がいいのかな
ブリッジで最高音かと思わせてコーラスでさらに高音へ
しかしこのボーカル、高音でもそこまで苦しそうにならない、実はけっこう音域が広いのか
フェードアウト、ちょっと5,6曲目は勢いに欠ける
★★★★

7.The Infernal Fires 8:33
アコギのアルペジオからスタート、チープなキーボード音
ああ、これカラオケで使われているような音色だ、独特の郷愁があると思ったら
北欧メタル全般(特にフィンランドに顕著だが)で80年代、90年代的なキーボード音を使うのが流行ってるっぽい
これが意外にギターの刻みに合う、というか、異質で浮かび上がるので埋もれずにいいアクセントになっている
そこからツーバスでツインリード、曲展開がめまぐるしい、プログレメタル的な展開
ただ、変拍子ではあるがなめらか、ワルツ的なリズムが一部入ってくる
そこから悪魔的、暗黒的なメロディ展開とクワイアコーラス
目まぐるしいリフ展開、美しいメロディ、中世的な
どことなく懐かしい、90年代ジャーマンメタルの記憶だろうか
どこか懐かしさがある、間奏お作りこまれたツインリードも良い
コーラスが押し寄せてくる
勢いを保ったまま終曲、長さを感じさせない構成力は見事
★★★★☆

全体評価
★★★★☆
個人的にストライクな音像、ブラガっぽさはあるが今のブラガより好きかも
90年代パワーメタルではなく、00年代、10年代のデスメタルやブルデス、ブラックメタルなどの音像も一部感じる
また、フロンティアレーベルのおかげか分からないが歌メロ主体の構成となっておりきちんと盛り上がる
各楽器隊の演奏、編曲もよく練られていて明らかにテンションが下がるパートもない
ただ、5曲目以降少し食傷気味というか、バリエーションがもう少し欲しかった
勢いなら勢いで押し切っても良かったけれど、どうも5曲目ぐらいで息切れする
ラストの大曲も期待したが、良曲ではあるが突き抜けたものは感じなかった
逆に言えば、8分の曲でも他と同じ手法で聞かせきる力があるというのは凄いことなのだけれど
聞いているうちにどんどんテンションが上がっていく方向ではなく、やや聞き疲れてしまった
もう1曲、後半にテンションが上がる突き抜けた曲が欲しかった、惜しい

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン

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