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Dark Tranquillity / Moment

スウェーデン、ベテランメロデスバンドの2020年作。1989年結成1992年デビューで本作は12作目。他のベテラン勢と同じくメロデスから音楽性を広げてクリーントーンボーカルの導入による音楽性の拡張を図っています。ちょっとメタルコアとかニューコアと呼ばれるジャンルにも近いのかな。メロディのセンスが洗練されているものの北欧臭さが少ない。スウェーデンはグローバルなメタルシーンとの連動性が高いので、お国柄より現在メタルの一大潮流であるUK的な歌メロを意識しているのかも。ちょっと個人的には焦点が定まらずのめり込めないアルバムでしたが、メロディの個人的嗜好なだけでプロダクションも良くさまざまなアイデアが詰め込まれた一流のメタルアルバムなことは間違いありません。

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2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Phantom Days
遠くから響いてくるような音
ギターリフ、リズムが入ってくる、どっしりとした刻みのリズム
後ろでシンセ、薄く鳴るメロディ
さらに音圧が上がり音が解放されて舞うギターメロディと共にボーカルが入ってくる
芯があり言葉が聞き取りやすいグロール
テンポアップしてギアチェンジ
キーボードによる印象的なメロディが入ってくる
コーラス、舞うギターメロディ、北欧メロデスの王道パターン
コーラスが終わる、曲が走り始める、ギターのリフのリズムパターンが変わる
リズムが重なり合い、メロディが重なり合う
一つ一つのパートが展開し、組み合わせの表情が変わる
多面体の有機体パズルがどんどん組み変わっていくようだ
突進と進撃の繰り返し、様子を探りながら突進していく
ソロ、キーボード、ギターがリフを刻む、途中からギターとキーボードの絡み
抒情的なメロディ、ドラムは手数は多いが音は軽めで軽やかに舞っている
激烈ながらどこか涼しさ、冷たさのある音像
メロディの泣きや演歌(民謡)的クサさは弱い
どちらかと言えば(メロデスにしては)爽やか、まだアルバムのオープニングだからな
★★★☆

2.Transient
ミドルテンポ、低音を支えるヘヴィなギターに対して高音でキーボードが鳴る、星空か山脈か
それほどメロディに動きはない
ボーカルが入ってくる、展開はメロディもあるがリズムに依るところも大きい
途中からミドルテンポで言葉の区切り方も変わる
あまり泣きや激走感はない
それよりは構築された冷たさがある
ギターソロ、メロディアスだが構築性はやや薄いか
インプロとまではいかないが作りこまれた感じはしない
リズムで押して終曲
★★★☆

3.Identical To None
テンポアップ、高音のキーボードが鳴っている
ただ、キーボードも進軍ラッパのような勢いはなく、ややクールでマイルド
冷静と情熱の間、ではないが、激情を担っているのがボーカルに寄っていて他は比較的洗練された音像
ドラムの手数は多くギターもひずんでいるが、枠をはみ出す攻撃性はあまり感じない
すべてがソツなくまとまっている
中間部でトレモロリフのツインリード
★★★

4.The Dark Unbroken
哀愁を感じさせるキーボードフレーズ、雰囲気が変わった
スロウなリズム、構成は今までに近いがギターの音圧が増した
音作りが少し破綻というか、スリリングさが出てきた
透明感のあるキーボードがメロディを奏でる
Amorphisの近作もこんな感じだった気もする、あちらはもっとメロディは煽情的だったが
途中からボーカルがクリーントーンに、音楽性に合っている
むしろ他の曲もすでにグロール一辺倒が合わないのでは
Ensiferumみたいなグロールと普通のハイトーンを混ぜた方が説得力がありそう
この曲のクリーントーンは中低音域だが
ギターソロも良い、メロディに魅力がある
やはりメロデスはメロディが重要、メロディによるドラマが弱いと感情がちぐはぐになってしまう
★★★★

5.Remain In The Unknown
クリーントーンの歌いだし、悲哀の表情
マイナー調で静かに曲が始まる、ようやく表情が泣きに入ってきた
冷たい大地、黒い森、北欧メタルのビジュアルを想起させる音像
各種MVなどで埋め込まれた部分もあるが
ドラマが続いていく、メロディがつながっていく、氷河か
先へスムーズに滑っていく
激情を感じるが先へ進む
ギターソロ、さっきまでと違い流れるようなメロディ
2曲目、3曲目はちょっとギターソロが浮いていたがうまく溶け込んでいる
メロディが増えていき音像が塊になって押し寄せて去っていく
★★★★

6.Standstill
ミドルテンポ、北欧的なメロディ
4曲目以降、急にメロディが良くなった
マイナーに落ち切らず、そこまでどマイナーではないが北欧的な哀切を感じる
途中からクリーントーンへ、クリーントーンのボーカル部分はこの曲が今までで一番魅力的
寒さ、吹雪、吹き付ける雪を感じるようなギターリフ
ギターソロからそのままギターがメロディを奏でながらヴァースへ
冷たいのだけれどどこか人懐っこさもある
ただ、これスウェーデンのバンドだったかな、フィンランドほどの人懐っこさがない気がする
★★★★☆

7.Ego Deception
ギターリフとドラム、最初がキーボードのメロディではなくギターリフからスタート
ギターの刻み感が強い、ギター主導
昔のスタイルに近いのかな、このバンドはギター主導だった印象がある
とはいえ90年代の記憶なので曖昧だが
クリーンボーカルが入ってくる、その後の歯切れの良いリズミカルなボーカルは魅力的
フレージングがスラッシュ的でもある
クリーンボーカルの部分は北欧的だが、刻みなどはジャーマンスラッシュ的
とはいえドラムが一緒に激走はせず、もう少しどっしりとしているか、疾走しても軽やか
戦車的な突進感や重厚感はあまりない、それよりは吹雪のような、吹きすさぶ感じ
なんとなくメタルは各国のお国柄が出る
★★★★

8.A Drawn Out Exit
やや民謡的な響きもあるリフからスタート、中東的にも聞こえるが東欧、北欧のメロディだろう
ギターが刻みながらメロディも奏でる、その辺りの切り替えが自然で、気が付くとメロディアスになっている
この曲の主役はギターだな、次々と表情を変えてバッキングとメロディをシームレスに奏でる
キーボードも高音で続いているが主メロというより空間音の印象
ギターに絡み合うようにボーカルが言葉を吐き出す
ブレイクしてギターソロ、耳を惹く入り方、きちんと一つのシーンを作って再びボーカルへ
リフとメロディが一体化している
★★★★

9.Eyes Of The World
北欧的なメロディからスタート、ギターがメロディを奏でた後ボーカルが入ってくる
断続的なリズム、ブリッジからクリーントーン、中音域
それほどクリーントーンにボーカルとしての魅力は感じないが、吹雪の中に取り残された感というか
それほど力強くない感じがうまく活きると哀切さを感じる
グロールは芯があり言葉も聴きやすく歯切れも良い
ギターソロから後半のクリーンボーカルパートへ
聞いているうちに音世界に引っ張っていく力があるのはさすがベテラン
★★★☆

10.Failstate
ややバイキング的なメロディ、バイキングリフからスタート
ツービートの疾走からリズムパターンが変わる
刻み感が強くなりボーカルがリズムを刻む
ボーカルの声が前面に出ている、声が主役の曲
言葉の区切り方がリズミカルで耳に残る
単語を繰り返している、何か呪文のような
ちょっとLordiのようなフックもある
★★★☆

11.Empires Lost To Time
勢いを取り戻してリフレッシュ、ギターの音が瑞々しい
このバンドの魅力はやはりギターなんだろうな
この曲ではバッキングでのギターは刻みに徹してメロディはキーボードが主に奏でている
もっとギターでメロディとバッキングの両方を弾けばいいのに
そこまで耳を惹くフックはないが心地よく浸れる音世界
★★★☆

12.In Truth Divided
ヘヴィでスロウなバラード
クリーントーンのボーカルで歌うメロディ、最初はドラムレス、ちょっと機械的な打音も入ってくる
崩れる氷河の上を歩くような、去り行くものへの嘆きか警鐘か
徹頭徹尾クリーントーンの曲
★★★

全体評価
★★★☆
北欧メロデスのベテラン、さすがと言いたいところだがあまり楽しめなかった
メロディが弱い、もともとAmorphisとかIn Flamesに比べたらメロディが弱い印象ではあったが、今作はあまり耳を惹かれるメロディがない
何かを突き破るアグレッションも感じない、どちらかと言えば洗練されたマイルドな音像
かっちりした構築とかパワーメタル然とした魅力もそれほどない
プログレ的な複雑な曲構成もないし
もっとギターがバッキングからメロディから弾きまくって、そのあたりが魅力的なバンドじゃなかったかなぁ
音に世界観はあるし、時々耳を惹く瞬間はあるのだけれど、アルバム全体として見ると焦点があっておらずやや退屈

ヒアリング環境
朝・家・ヘッドホン

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