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Mahsa Vahdat / Enlighten the Night

こちらもe-Latinaでおススメされていたアーティスト。中央アジア~北アフリカの音楽が好きなので聴いてみました。

 マーシャは、クラシックおよびワールドミュージックの範疇で活動する女性ヴォーカリストで、長年ペルシャ/イランの古い伝統的民俗音楽の唱法を彼女なりのやり方で習得。本作は、現代ペルシャの詩にクラシカルなメロディーを付けたものです。

確かにクオリティが高く、古典的で優美な伝統音楽の音世界に浸れます。ただ、ちょっと後半の起伏が少なく聞きとおすには厳しい。じっくり集中して聴くというよりリラックスして流しておけば心地よい空間が得られるタイプの音楽のように感じます。曲ごとの微妙な表情の差異が分かったり、あるいは演奏風景がもっと目に浮かぶような、パーソナルなつながりが強くなるともっと楽しめるのでしょう。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.The Act of Freedom
静謐なピアノからスタート
単音から和音へ、ジャジーなベースが入ってくる
微かなリズム、歌が入る
オリエンタルな歌い回し、ややライの影響を感じる
リズム、アフリカか中近東のリズム
細かく刻むリズムにベース、ボーカル、不安定な和音だが心地よい
ピアノが安定した和音で入ってくる
全体として浮遊感のある音
ボーカルとピアノが絡み合う、バグダッドカフェのコーリングユーのような
長調とも短調とも言えないメロディ
ボーカルの表情が多彩だが演劇っぽさはない、あくまで日常の表情程度
過剰ではない節回しが歌の装飾として心地よい
力強い歌で終了
★★★★

2.Where is the Home of the Wind
ベースとボーカルの絡み合い、砂漠のような、宮殿のような
どこか乾いているのだが、乾ききった感じはない
オアシスだろうか
砂漠近くの町の黄昏を思わせる
ベースはコード感が強いが一部アルペジオ的な奏法も入り装飾音もある
ベースとボーカルだけの掛け合いだが、音が寂しい感じはない
ベースなのだろうか、低音ではあるが間奏部ではベースっぽくない音がする
ジャズベース化と思ったが何らかの伝統楽器なのかもしれない
雄大だがどこか哀愁がある
★★★★

3.Farewell
ピアノとベース、ボーカルが入る
打楽器が入ってくる、1曲目に近い編成
メロディはより東洋的、どこか民謡的なメロディ
歌が自然体で聴きやすい、深みがあるがわざとらしくない
ドラムは小型楽器だろうか、ベースの残響音が響くが、打楽器そのものは乾いた音がする
ジャジーに展開するがアドリブ性は感じず、民謡的な、きちんと着地するメロディ
★★★★

4.Precious Cup
ピアノが前面に出て、ピアノとボーカル
微かに弦楽器がドローン音を奏でる、バイオリンのように弓で弾くタイプの楽器のようだ
上昇していく、飛翔していくようなボーカルメロディ
残響音の深い、大きなものをたたいたような音が入る、大型の銅鑼だろうか
シンバルのような鐘の音が入る、手持ちの鉄製打楽器、鳴り物だろう
微かになっていた弦楽器が前面に出てくる
★★★★☆

5.Bootarab
リズム感がある曲、最初から打楽器が一定のリズムを刻む
そのグルーブに乗るようにピアノと歌が入ってくる
歌は反復フレーズ、ハーモニーも入る
とはいえメロディは親しみやすさはなく不安定なテンションコード感が強く、呪術的の一歩手前
ややタンゴ的なリズムかもしれない
そう気づくとピアソラの影響もこの曲には感じる
ただ、歌メロの音程の取り方はオリエンタルでもっとマグレブ的
ボーカルメロディは聞いたことのあまりないコード感だ
★★★☆

6.Enlighten the Night
ボーカルとドローン音、ボーカルの独唱性が強いスタート
ピアノが微かに入ってくる
声は力強い、表情豊かと言ったが、ウィスパーになるわけでも叫ぶわけでもなく
常に伸が通った力強い声で歌っている
そのあたりが自然体に感じるのかもしれない
ボーカルライン以外は非常に静謐、微かに蠢いている、揺らめいている印象
遠くで笛の音が微かに聞こえ、かすれたような弦楽器が聞こえる
ピアノとドローン音、不協和音と金属音
力強いボーカルが動じず歌い続ける
少しささやき声のような歌い方になる
歌が終わり楽器隊が暴れ始める、弦楽器が悲鳴のような音を立てる
そして去っていく
★★★★

7.The Moon Beams
ベースとドラム、グルーヴからスタート
歌が入る、グルーヴの隙間が大きくなる
歌はやや民謡的なメロディ、この曲はメロディにトルコ色が強いように感じる
打楽器は手ドラムと金物だろうか
ドラムとパーカッションかとも思ったが、どうも西欧音楽で使われているドラムではなさそう
かなり低音が強い
一定のグルーヴがある分、安定していて緊張感にやや欠ける
★★★

8.Ney Devoud
弦楽器のドローン音の上で丁寧なピアノソロ
何か聞き覚えがあると思ったら、グルジェフの音楽かもしれない
ボーカルが入ってくると全然違うが
かなりピアノは音数は多い、単音のメロディなので激しく弾いている印象は受けないが
リズムが入ってくる、やや深めの残響音があるドラム、ベース
穏やかなジャズといったバッキング
そこに節回しが強いボーカルが乗る
★★★

9.The Roses and the Meadow
ゆったりしたグルーヴに乗せて歌が始まる
弦楽器と打楽器とピアノ
弦楽器がボーカルに合わせて表情を変える
重厚感がある
★★★

10.If I Were God
ボーカルソロからベースが入ってきて絡み合う
打楽器が入る、ピアノも入ってくるが、ボーカルラインに対してだいぶテンションがかかっている
別のキーのように聞こえるか聞こえないかのギリギリのところのコード
ボーカルだけになり終了
★★★

11.Lovelorn
ボーカルからスタートし、打楽器の音が響く
前の曲からの連続性が強い
ピアノのメロディが残り終曲
★★☆

12.The Dawn
ピアノからボーカルイン
やや歌いだしがオペラティック、少し発声方法が違うかも
グルーヴが入ってきて、砂漠の夜の歌に
アルバムの初めのころに比べるとだいぶ夜が更けてきた印象
眠さを感じはじめたが意図通りなのかもしれない
★★★

13.I will Build you Agein,My Country
ボーカルからスタートしドローン音が入ってくる
ピアノ音が微かに続き、ボーカルと絡み合う
リズムが入ってきて、ボーカルラインが明朗になる
オリエンタルではあるが不協和音やテンション感は減り、歌いやすいメロディ
砂漠の隊商だろうか、夜道、月明かりか
焚火か、月光か、何かに照らされてラクダの隊商が歩いていく
★★★☆

全体評価
★★★☆
最初はオッと思ったが似た曲調が続きすぎて集中力を持続するのがつらい
じわじわと体温が上がるわけでもなく、むしろリラックスさせようとしているのだろうか
子守歌として聞けばよいのかもしれない
丁寧に作られていて、ボーカルの力量は堪能できる
聞いたことがない感触の和音もあって新鮮

リスニング環境
夜・家・スピーカー

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