見出し画像

Finntroll / VREDESVÄVD

フィンランド、ヘルシンキ出身のフォークメタルバンドFinntrollの2020年作。1997年デビューとフォークメタル界では古株。7年ぶりのニューアルバムです。これが素晴らしい出来で、バンドコンセプトたるダークファンタジーな世界観を余すところなく音で表現しています。基本的にボーカルはグロウル、デス声のゆがんだ怪物声ですが、アルバム全編を通してメロディに満ち溢れています。ダークファンタジーといいつつ陰惨な暗さはなくどこかユーモラスで陽気、フィンランドのお国柄かもしれません。エアギター選手権とかメタル編み物選手権とか、卓越したユーモアセンスのお国柄ですからね。フィンランドのセンスが大好きです。フォークメタルについては以前Eluveitieを中心に書きましたが、Finntrollのこのアルバムも同様にフォークメタルの深化/進化を感じられるアルバムでした。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Väktaren
不穏なオーケストラからスタート
壮大でダークファンジー的
何かが現れてくる描写
部族の鬨の声のような声が入る
女声のクワイアが入り静けさに、場面転換
美しく日常的なシーン、闇と光だろうか
緊張感が増してくる、勇壮なテーマ
女声クワイアが入る
展開が早い、映画音楽的
イントロ、歌なし、オケとコーラスのみ
★★★

2.Att Döda Med En Sten
キーボードのリフからツーバス爆走、デスボイス
疾走感がある
前曲からはつながっておらず、別の曲
何かが現れたような、森の獣やゴブリン、クリーチャーのようだ
疾走感が高い、ツーバス連打でBPM自体も高め
オーケストラが勇壮なメロディーを奏でる、モンスターの出陣か、戦陣か
リズムが途中ポルカ的に
またツーバスに戻る
メロディがリフレインする
ずっと壮大なオーケストレーションがバックで流れている
進軍のテーマだろうか
★★★★

3.Ormfolk
続いてアップテンポ、疾走系というよりややロックンロールのリズム
だが疾走感は強い
民族的なメロディ、北欧的なのだろうか
バイキング・メタルとは似ているところはあるが違うメロディに感じる
やや陽気な、パーティのノリもある
酒盛りだろうか、途中からテンポアップする
展開が早い
やはり森の乾杯、戦の祝宴だろうか
とにかく走り抜ける、燃やし尽くす炎のようなイメージ
ドラムの手数が多い、ギターも高速の刻みが入る
ブラックメタルの語法に、民族的なメロディが乗る
ベースはパイレーツっぽい、上下に揺れるメロディー、船を漕ぐリズム
メロディの印象はキーボードかオーケストラが強い、ギターは刻みは細かいがメロディよりコード感が強い
ちょっと高速サーカス的なノリもある
★★★★☆

4.Gränars Väg
民族的なメロディからスタート、伝統楽器の音だろうか
ケルトとも違う、やはりバイキング的か
やはりドラムが入ってきて、掛け声が入る
より古色蒼然とした、メロディにワンパターンさを感じないバイキングメタルか
この曲はギターがかなりメロディを奏でている、メロデス的だがメロディやリズムはバイキング的
間奏ではキーボードがメロディをなぞる
ドラムの手数がかなり多く、途中からブラストパートに、うまい
男声クワイアが入る、男性クワイアと民族的メロディの掛け合い
そこからアコースティックパート
そこにテンポの速いドラムが入る
ボーカルのメロディはなくメロディはギター・ベースがコードで奏でる
かなりメロディアスな印象
リズムの表情が多彩で飽きさせない
★★★★☆

5.Forsen
ロックンロールっぽいスタート、ハードロック的なリフだがメロディ展開がちょっとずれている
マリリンマンソンあたりのリズム感、ちょっと不協和音というかずれた展開
途中で急に音が減り、ハーディガーディのような音だけになる
サビではサーカス的なメロディ、吟遊詩人というよりはサーカス
ただ、海賊のサーカスだ、船上パーティと言えるかもしれない
カリブ海ではなく北海
リズムがどれもカヌー、ガレー船を漕ぐリズムに聞こえる
モンゴルのバンドは馬を駆けるリズムだが、このバンドは船を漕ぐリズムだ
基本的に横揺れしやすい気持ちいいリズムが続くが、ときどきドラムが強烈なブラストパートを入れてくる
シンガロング的なパートを男声クワイア的なキーボードが入れる
そこにボーカルが重なってくる
饗宴感が強い
★★★★

6.Vid Häxans Härd
アコギのアルペジオからスタート、深めの音
ガットギターのソロが入ってくる
最初の入りはブラガのバードソング的だったが、そこからツーバスのドラムイン
ブラストビートで一通り疾走した後、ギターリフ
疾走系メロデスのリズム感
バックでは壮大なオケが民族的なメロディを奏でるが、そこまで臭くはない
途中でダンス音楽のようなフレーズに変わる
ドラムはブラストが続く
トレモロリフが入り、ギターがメロディックなリフを奏でながらボーカルイン
再びキーボードが前面でメロディ、ギターリフ、と切り替わる
切り替えがうまい
スクリームで一瞬音に隙間ができて、再びサビの音圧へ
押し寄せるような曲、戦場だろうか
★★★★

7.Myren
ドラムとギターリフから勢いよく、ややパンキッシュでハードコアなノリがある
バイキング・メタルのノリだがかなり高速、軽快なメロディ
フックとピーターパンが帆の上で剣戟を交えるときのBGMによさそう
テンポが速くスリリング、かといってマイナー調ではなくどこかコミカルさがある
やけくそのような疾走、ドラマーがずっとテンション高くたたき続けている、超人か
ポルカのような間奏のリズムとメロディ、だが、ドラムはブラスト
ヴァースに戻り少しドラムが落ち着き、ボーカルとギターの絡み合い
ギターリフを挟み、再びブラスト
勢いがありすぎて思わず笑ってしまう
★★★★★

8.Stjärnornas Mjöd
間髪入れず次の曲へ、これも早め
ややドラムの手数は少ないがBPMは速い
ややパンクっぽいノリがある
オイ・パンク的な掛け声も入る
基本のエイトビートを勢いよく叩く、ギターの刻み感が強い
ボーカルと男声クワイアが掛け合い、キーボードもメロディを奏でる
間奏ではギターリフとドラムがユニゾン、間断リズムでメリハリをタメ
そこにボーカルが乗ってきて勢いが戻る
ドラムが高速ブラストビートに、今のところ1曲目のイントロ以外必ず高速ブラストが入る
そこからまたノリが戻ったと思ったらまた高速ブラスト、よく叩けるものだ
展開して再びサビへ、要素が多い曲だがよく整理されている
★★★★

9.Mask
間髪入れずに次の曲、これも早め
バイキングリズムで高速、進軍だろうか
ここまで速い曲が続くと笑ってしまう
テンションがずっと下がらない、かといって曲ごとに表情は違う
似たようなメロディなのに不思議だ
これもバイキング的なメロディが出てくる
その後、新鮮味のある少しうねるような、オリエンタルまではいかないがねじれたメロディが出る
元のモチーフに戻り、キーボードが緊迫感のあるメロディを奏でる
再びボーカルが入り、リズムパターンが変化する
少しひっかかりのあるリズムのパートを抜けて開放感あるメロディと共に疾走パートへ
くるくる回るような循環メロディで終わり
★★★★☆

10.Ylaren
ギターとアコギの不穏なリフからスタート
重厚感があり、テンポもミドルテンポ
民族楽器的な音が鳴り響き、ボーカルが入ってくる
ツーバスでミドルテンポでじっくり攻めてくる
歌終わりで再び民族楽器のメロディ、これがリフなのか
ブリッジ、曲の景色が変わり別のメロディが出てくる
合唱的なコーラス、男性クワイアが呼びかけるような歌声、儀式的なメロディ
ドラムは重戦車のようにミドルテンポをたたいている
再びコーラス
間奏ではタメのあるリズムとギターリフ
抒情詩なのだろうか、サーガか何かを歌い上げている印象
勇壮なメロディと共にBPMは同じもののリズムパターンがやや疾走感のあるパターンに変化
そしてブラストビート、だんだんと手数が多くなっていく
キーボードがメロディを鳴らし、コードが着地したと思ったら
メジャー感ある展開ながらブラストビートが高速化
手数多めの疾走パートが続く
森か何か、暗くて密集したところを駆け抜けていく
抜けられるだろうか
スクリームで曲がいったん終わり
アウトロのように同じメロディがキーボードだけ戻ってくる、すべて終わり森に去っていくようだ
★★★★☆

全体評価
★★★★☆
素晴らしい
徹頭徹尾疾走感が強く、ダークファンタジー的でありながら陰惨さはない
エンタメ性があり、メロディも適度に雄々しくメロディアス
テンションは高いままなのだが一曲ごとにバリエーションがある
メロディセンスやドラマの作り方は全くは違うが、アルバム丸ごと高テンションなのはLamb of Godに感覚は近い
これだけ音楽だけでドラマを描き切る力量は見事
メロディや展開は見事ながら、やはりアルバム一枚通して聴くとやや聞き疲れる
音圧が減り、音の見晴らしがよくなりつつもテンションが維持できるパートがもうちょっとあると良かった

リスニング環境
夜・家・スピーカー

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?