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STÖNER - Stoners rule

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ストーナーロックというジャンルがあります。ストーナーとは「酔っぱらった人、常習的に大麻を乱用する人」という意味のUS俗語で、そうした酩酊感のある長尺でサイケデリックなロックがストーナーロック。ドゥーム(暗黒的な音像)、サイケデリック、アシッドなどのムーブメントから生まれ、それらの要素を融合したものとされ、スローからミッドのテンポで、ひどく歪んだ、グルーヴを含んだ低音の重いサウンド、メロディックなボーカル、そして「レトロ」な演出が特徴です。

そのジャンル名をバンドにした新人バンド。メンバーはブラント・ビョーク-ギター、ボーカル(2020-現在)、ニック・オリベリ-ベース、ボーカル(2020-現在)ライアン・ガット-ドラム、パーカッション(2020-現在)の3名。新人バンドなのにジャンル名を名乗るとはなかなか度胸があるというところですが、ビョークはストーナーロックの祖ともされるKYUSSの創立メンバー。オリベリも元KYUSSで、その後ストーナーロックでは最大の成功を収めたQueens Of Stone Ageの元メンバーでもあります。いわばストーナーロック界の大御所2人が再開して結成したスーパーグループ。原点回帰であり、「自分たちはストーナーロックというジャンルの創設者の一員である」という矜持に満ちた名前とも言えます。

ストーナーロック界隈のミュージシャンは創作意欲が高い人が多く、多作なのも特徴。この二人も様々なプロジェクトに参加したりソロアルバムをリリースしたりしてきています。それでは聞いていきましょう。

活動国:US
ジャンル:ストーナーロック
活動年:2020-
リリース:2021年6月25日
メンバー:
 ブラント・ビョーク-ギター、ボーカル(2020-現在)
 ニック・オリベリ-ベース、ボーカル(2020-現在)
 ライアン・ガット-ドラム、パーカッション(2020-現在)

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総合評価 ★★★☆

ピュアなストーナーロック。「ストーナーの王道」的なサウンドを非常にソリッドに、ピュアに鳴らしている。ピュアモルトのように「何も足さない、何も引かない」というか、70年代まんまというか。プロトパンクだったりブルース直系のハードロックだったりをよりスローに、シンプルに提示している。ただ、ストイックすぎてあまり面白みがない。それぞれの職人技は楽しめるが、新規性はほとんどなくかなり地味でいぶし銀的。ライブ盤の方が面白いバンドなのだろう。ジャケットにはオーラがあるし、確かにバンド名に偽りがない王道のストーナーだが、少なくともスタジオ盤はかなり地味。ストーナーだったりブルースロック好きなら「流していて心地よい」だろうが、スリリングで「おっ!」と思う瞬間は少なかった。

こちらは無観客だけれどライブ映像。こういう砂漠のオープンエアーとかで見たら心地よいだろうなぁ。

1.Rad Stays Rad 06:27 ★★★☆

ブリブリにゆがんだベース、いや、最初はギターか。ユニゾンでギターとベースがうねり、ドラムが追随する。いかにもなリフ。やや脱力したボーカルが入ってくる。かなりシンプルでミニマルな構成、グレイトフルデッド的なジャムバンド、レイドバックした空気感がある。少ない音数だがしっかり空間を埋める存在感があるのは流石ベテラン。骨組みだけになったような、そぎ落としたソリッドな構成。トリオ編成でほぼオーバーダブもしていない。なのでそれぞれの演奏がくっきりと分かる。かなりゆったりとした展開、シンプルなリフが催眠のように執拗に反復され、時間が遅くなっていく、停滞していくような感覚がある。3分以内に収まりそうなシンプルなパンクロックをスローにして倍の長さに引き延ばしたような曲。

2.The Older Kids 05:09 ★★★★☆

ちょっと覇気が出てくるというか、ギターの音圧が増す。リフの音程移動が強くなる。ロックというよりテクノ、ミニマルなテクノ的な、あまり展開がなくビートに酔う作り。かなり地味でシンプルだが、そのグルーヴの心地よさは流石の力量。曲構成的にはプロトパンクのようなシンプルさ、潔さがある。リフが少し展開する、このギターリフはカッコいいな。なんとなくZZ Top的なノリもある。シンプルさが体を揺らす曲。ニックオリベリはアーティスト写真でストゥージズのTシャツを着ているが、そういうルーツがはっきり見える。

3.Own Yer Blues 06:00 ★★★☆

スロウブルース。70年代的。ウィスキーではないが「何も足さない、何も引かない」的な頑なさ、ピュアなクラシックハードロック味を感じる。ちょっとZepp的(ボーカルスタイルは全然違うが)。あとはCreamとか。ライブだとけっこうインプロやるのだろうか。やる気になれば延々と1曲を引き延ばせそうな雰囲気。プロトハードロック的な、ブルース直系のハードロック。

4.Nothin' 02:37 ★★★☆

今度はミドルテンポに戻る、ZZ Top的なノリに。ただ、無条件で体が揺れるハキハキした感じよりはけだるさ、酩酊感が漂っている。ストーナーだからね。煌びやかさはなく、砂漠の乾いた響き。終わったかと思ったら戻ってきてまた続く。ちょっとジミヘン感もある。

5.Evel Never Dies 02:51 ★★★★

お、やる気が出てきた。ちょっとアップテンポ。曲のスタートからやる気を感じる展開。今までと違いリズムが展開したりリフが展開する。スピードメタルをちょっと遅くしたような、今までの曲に比べればアップテンポだが決して疾走感はない、ちょっと小走り、ぐらい。ただ、スケーター的、スラッシュ的な吐き捨て、Ravenのようなやけっぱちな曲構成ではある。Evelはミスタイプではなくこういう曲。Evilではない。洒落なのか。けっこうコミカルというか笑いのセンスがあるからね、ストーナーロックというジャンルは。得体のしれない歌詞とかがある。

6.Stand Down 06:19 ★★★☆

またベタなクラシックロックなリフ。そのテンションのまま曲が進んでいく。リバイバルではなく、本当にレトロ、そのまんまという音。特に新しい要素がない。プロダクションはくっきりしているが、70年代のどこかのバンドの音源を2021年リミックス、リマスターしてクリアにしました! と言われたら、そうなんだろうなぁと思う音。

7.Tribe/Fly Girl 13:19 ★★★★

長尺曲。酩酊するようなリフとユニゾンするボーカル。このスロウテンポで全体がユニゾンする、揺れる感じが実にストーナー。ただ、KYUSSにあった曲が展開していく、だんだんと熱量が上がっていく、酩酊感が強まっていく感じはなく、もっと脂が抜けているというか脱力し、シンプルかつミニマルな感じ。ストイック。ただ、この曲は最後を飾る長尺曲だけあって細かな技、ビートの変化やグルーヴの強さがあり、だんだん体が動き始める、心地よい。このジャンル、頭で考えるより、自然と体が動くか、酩酊感があるかが大事だからね。途中から少しリズムが変わった? 二曲のメドレーとなっている。後半はスローブルース。地味だがいぶし銀のような円熟味のある音。

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