見出し画像

花冷え。/ 乙女革命

総合評価 ★★★★★

面白いバンド。ヘドバンVol32で取り上げられていて知ったのだが、ガールズミクスチャーメタル。「メタルアイドル」ではなく、ロックバンドで、ベースとなるサウンドはスーパージャンキーモンキーなどに近い(というか、他に類似を思いつかなかった。かなりユニーク)、かなり本格的なヘヴィネスを奏でつつ、どこかサブカルな空気感も纏っている。90年代のインディーズマガジンとか、ガーリックボーイズとかの空気感もありつつ、2010年代のロックやメタル、ハードコアを取り込んだアイドルポップス(メタルアイドル、ハードコアアイドル)とか、最近の脱力系ヒップホップとかも取り込んでいて新鮮。演奏はアマチュアリズムはあまり感じず、プロフェッショナル。録音状態も良い。こういう作品が出てきていることに驚いた。どう進化していくのか楽しみなバンド。


1.SUNRISE 味噌SOUP ★★★★★

軽快なビートに、グロウルとアイドルボイスのユニゾンが入ってくる、グロウルの方が強め。ガールズバンドだがかなりアグレッシブな音。スーパージャンキーモンキーに少しアイドル味を増した感じ、だが、全体としてはハードコア。ボーカルがグロウル主体で合いの手とサビのメロだけクリーントーン。サビはハイトーンとアイドル声の中間的な、バンドボーカル感の方が強い。アグレッション強めの曲ながらきちんとサビはポップ。オーケン率いる特撮的というか、絶望先生のサントラ的な曲。ビートはかなり性急。日本的ラウドロック、ハードコアの流れ。マキシマムザホルモンとかガーリックボーイズとかヌンチャクとかの流れも感じる。この曲はサビのメロディもいい。衝撃的な曲。

2.センチメンタル☆ヒロイン ★★★★☆

グロウル強め。このグロウルボーカルけっこうレベル高いな。まだ「わめいている」感じはあるけれど、全体の中に溶け込んでいるし、しっかり力強い。お、こちらはコーラスがアニソン的というかアイドル的。1曲目は「女性ガールズバンド」っぽかったが、こちらはアニソン的。1曲1曲が短く潔いな。このあたりの感覚はハードコア。

3.ぶっ壊す!! ★★★★☆

グロウルというか喚き声的なボーカル、そこにポップなボーカルが絡んでくる。これはコーラスがくっきりとポップ。寸劇というか声が入ってくる。ももクロとか、ああいう「声による群像劇」というか、キャラクターがたくさん出てくる、的なにぎやかかし系。ナレーションが入る。内容は自己紹介的な。言葉のセンスがいいな。大仰なことを歌わず、かといって陳腐でもない。いいチョイス。こういうごちゃごちゃしたラウドロックってアジア圏独自な気がする。USのニューメタルが源流にはあるのだろうけれど、こんなに要素を詰め込まないから。

4.私たちの7日間戦争 ★★★★★

やや和的なシンセのフレーズからスタート。ヘヴィなギターが入ってくる。すごくテクニカルというわけではないが普通に演奏がうまい。この曲はガールズロックバンド然とした曲。ちょっとプログ的な感じも入れていて、モダンなUSのメインストリームメタル感もある。ごちゃごちゃしたキメラ的ミクスチャー感ではなく王道メタルコアというか。なんだかちょっと川本真琴感もあるコーラスの節回し。玉姫様の系譜に連なる生理の歌?

5.令和マッチング世代 ★★★★☆

ちょっとヒップホップ的な、ラップメタルというべきか、グルーヴィーなリズム。ガールズ的な脱力ラップが乗る。チェルミコとかあの辺。だけれどグロウルが入ってきてザクザクとする。山嵐meetsチェルミコ、、、ってたとえの世代が違うか。最近の日本のラップをやってるハードコアバンドをあまり知らないんだよな。たくさんいるのだろうけれど。コーラスではしっかりメロディアスなパートを入れてくる。アジア圏に広がるラウドロック、ヒップホップミクスチャー幕の内弁当的ラウドロック。タイのNobunaとか、ちょっと前だと韓国のソテジとか。同時多発的に表れてきた気がする。ミクスチャーメタル、という概念が提示されたときに、それぞれが身近なものを貪欲に取り入れた結果、アジアンポップスと融合したらこんな形になったのだろう。やはりこの中心地はJ-POPだったのかもな、90年代はアジア圏で圧倒的に大きい市場だったし。

6.Invisible wall ★★★★☆

ガールズバンド的な曲。グロウルのハードコアからガールズロック的なサビへ行く。モダンなJ-ラウドロックという感じ。全体的にBPMが速めで曲も短め、駆け抜けて行く感覚がある。スピーディーでもったいぶったところがない。途中、メインボーカルだけになるパートも。おお、ライブが目に浮かぶ感じだな。モッシュというか、やはりハードコアシーンから出てきたのか、うーん、シーンの中では異色な気もするが。今のシーンってどこなのだろう。一度ライブを観てみたい。ライブを観なくても音楽性は分かるけれど、ライブを観ないと「客層と客のノリ」みたいなものは分からないんだよね。

7.我甘党 ★★★★☆

かなりハードコアな曲、グロウル強め。コーラスでボーカルが飛び跳ねながら入ってくる、バックのギターがメロデス的な展開を見せる。そこからブレイクダウンでさらにコーラスへ。きちんとメロディアスな大サビがあるんだな。ちょっと詰め込んで「J-POP」というか、売れ筋のJ-ラウドロックに寄せてる感じもある。「できること全部詰め込んでみました」的な曲。あ、大サビ1回しか出てこないのか。この”駆け抜けて行く感じ”はいいな。

8.L.C.G (2019mix) ★★★★☆

昔からある曲のよう。確かに初期衝動的なものを感じる曲。曲がリフとリズムでシンプルに進んでいく、というか。そこにメロディアスなサビが入ってくる。このバンドのプロトタイプ的な曲なのだろう。7が進化系だとすれば8が元型、みたいな。「あさまるすいさん」のフレーズの入れ方がちょっと水曜日のカンパネラ(初期の)的。全体としてはハードコアなのだけれど。なぜか90年代感がある。世代的に00年代なんだろうけれど。今大学4年とかのようなので22歳、23歳ぐらいか。

9.限界沼ライフ​ ★★★★☆

ザクザクしたギターリフ、ちょっとチルボド的な。北欧メロデスを通過したパワーメタル的なリフが所々出てくる。メタルコアの影響も感じるけれど北欧メロデスの影響が所々に感じるんだよなぁ。好きなのだろうか。あるいはそういうものがJ-ラウドロックシーンには溶け込んでいるのかもしれない。90年代後半の北欧メロデスは日本の激烈音楽好きの多数が通っているだろうから。ボーカルラインはガールズバンド的。この曲はグロウルパートが煌めいているな。ブレイクダウンへ。そこそこ長尺に感じたがこれも3分ぐらいの曲なのか。なかなかドラマティック。展開が速いからな。

10.Want to TIE - UP ★★★★☆

モダンなガールズロック的な。最初クリーントーンから入ってくる。こういう言い方は変だが「普通のバンド」のようなスタート。途中からグロールが入ってくる。単純にカッコよさげな曲。単曲で言えばやや個性に欠けるがアルバムとしてはふり幅になっている。こういう曲ばっかりになったら面白くないけれど。ライブで映えそうないい曲ではある。このアルバム、各曲の中でもバラエティに富んでいるし、それぞれの曲にキャラクターがきちんとあるのが凄い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?