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Jane Getter Premonition / Anomalia

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'98年にCDデビューし、これまでソロ3作をリリースしている、米(NY)の女性ギタリスト、ジェーン・ゲッターが、新たに結成したリーダー・バンドのサードアルバム。「アヴァン/エクスペリメンタル/テクニカル要素を融合/反映したCross Over/Fusion路線をベースにしつつ、前作でも味わえた自身のギタリストである要素とヴォーカルまで柔軟に取り入れてのメロディアス/ロック志向をさらに押し出した1枚」とのこと。CHAD WACKERMAN(FRANK ZAPPA)、ADAM HOLZMAN(MILES DAVIS、STEVEN WILSON)、ALEX SKOLNIK(TESTAMENT)、VERNON REID(LIVING COLOUR)らがゲスト参加。彼女はADAM HOLZMANの私生活上のパートナーでもあるようです。レーベルのリリース文から抜粋します。

ジェーンのバンドは、ジャズ、ロック、メタル、シンガーソングライターのスタイルの交差点で、彼女の見事な演奏と複雑でダイナミックな作曲でニッチを切り開き、ステージ上で世界中の聴衆を魅了してきました。
マハヴィシュヌオーケストラ、キングクリムゾン、ポーキュパインツリー、ジェフベック、アランホールズワース、ウェスモンゴメリーなどの音楽的影響を引用して、ジェーンはジャズやロックの世界で多くの著名人と共演し、バンドJANE GETTER PREMONITIONを結成して洗練された作品を発表しました。
ミュージシャンのアダム・ホルツマン(マイルズ・デイビス、スティーブン・ウィルソン)、アレックス・スコルニック(テスタメント)、チャド・ワッカーマン(フランク・ザッパ)、マーク・イーガン(パット・メテニー)、ジーン・レイク(デイヴィッド・サンボーン)、スチュ・ハム(ジョー・サトリアンニ)、特別ゲストのヴァーノンリードと歌手のランディ・マクスティンとチャンダ・ルールが参加したアルバム・アノマリアは一連の魔法のレコーディング・セッションの驚くべき結果であり、これまでの彼女の最高の作品です。
アーティストのラッセ・ホイルによる印象的なカバー画像で飾られたアノマリアは、素晴らしい、真に進歩的なミュージシャンと彼女のバンドによる素晴らしい作品です。

Allmusicで★★★★

活動国:US
ジャンル:Prog Rock
リリース:2021年3月26日
活動年:2015-現在
メンバー:
 Bass – Stu Hamm
 Drums – Chad Wackerman
 Guitar – Jane Getter
 Keyboards – Adam Holzman
 曲により違うので詳細はこちら

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総合評価 ★★★★☆

現代プログレッシブロックの良作。プログメタルでもフュージョンでもなく、プログロック。それぞれキャリアを持った一流ミュージシャンの演奏を楽しめるし曲も良質。曲構成そのものは不穏でテンションがかかった空気感があるが、落ち着いた演奏でじっくりと進んでいく。テクニカルが前面に出るというより、各人がしっかりコンタクトしながらコミュニケーションし、ここぞという匠の技を魅せてくれる。こういう純粋なプログレを聞いたのは久しぶりかも。かといって回顧主義、レトロに終始するわけではなく、ただ素直にそれぞれのキャリアに裏打ちされた音楽を奏でている印象。今を生きているミュージシャンたちだから、その後ろに積み上げてきたキャリアが見えるとしても当然今の音になる。未聴のプログレ好きは聴くと楽しめると思います。おススメ。

1 Kryptone 4:37 ★★★★☆

いかにもプログレ然としたスタート、EL&Pとかキングクリムゾンとか、70年代プログレのヘヴィロック的、ギターリフとキーボードのリフが絡み合う。かなり不穏感のあるコード構成、お、ザッパのような引っ掛かりのあるギターが出てきた。古いバンドの例ばかり出したが音そのものは今の音。ギターとキーボードがバトルする。何かが行進してくるような音。キングクリムゾンが提唱したヌーヴォメタルに一番印象が近いかも。ややエスニックで無国籍な音階、ちょっとリフにはドゥーム感もある。インスト。

2 Lessons Learned 5:09 ★★★★

ボーカルが入ってくる、少し前のポーキュパインツリーやスティーブンウィルソンに近いやや浮遊するような、テンションがかかったダークでメランコリックなメロディ。コード進行がかなり練られている。声は涼やかで流れていく。コード進行の不穏さはスラッシュメタル的、テスタメントとかスレイヤーとか。妙なコード進行、ギターで音を探りながら作っている感じ。リフはドゥーミー、ストーナーといえばストーナー感もあるが、プログロックやフュージョン、ジャズ的な印象を受ける音作り。

3 Dissembler 6:17 ★★★★☆

ミドルテンポでじっくりくる、どのプレイヤーも演奏がうまい。テクニカルを見せびらかすことはないが匠の技。リヴィングカラーのVernon Reidがゲスト参加。Randy McStineという男性ボーカルも参加しているようだ。ゆっくりとうねるようなリズムでメロディが進んでいく。変拍子やマスロック的なところもあるが変化しすぎず、曲調は一定の流れ、自然な流れの中で続いていく。ディスクユニオンのプログレ館でかかっていそうな音楽。すべてのレベルが高い。

4 Alien Refugee 5:28 ★★★★

アコギのアルペジオからゆったりとしたリズムに、バラード調。こちらもボーカルはRandy McStine。調べてみたらLo-Fi ResistanceというNYのプログレバンド(2009年デビュー)のボーカル/ギターのようだ。ベースとなるメロディにはどこか欧州のトラッド、伝統音楽的な響き(初期Rainbowとかブラックモアズナイトみたいな)もあるが、そこにNYのジャジーな音像、コード進行が加味されている。ドラマーがChad Wackerman(ザッパやヴァイとやっている)で、ザッパ感もややある。

5 Still Here 6:41 ★★★★

不穏で不安定なコード進行のアルペジオからスタート、 Jane Getterのボーカル。なんだろう、グランジ的といえばグランジ的。こういうコード進行に名前はあるのだろうか。ギターにはAlex Skolnick(テスタメント)も参加(ほかにもけっこう参加している)。テスタメントにもこういうコード進行のアルペジオはけっこうある印象。ソロはフュージョン気味、スティーブヴァイ的、ザッパ的な印象も受ける。二人のギタリスト(Jane GetterとAlex Skolnick)ソロバトルあり。キーボードソロも入ってくる。キーボードソロはエレクトリックマイルス感がある。それぞれのキャリアを感じさせる音、フレーズ。Adam Holzmanという人を調べてみたら、Steven Wilsonのソロなどにも参加しているのか。マイルスバンドにはTUTU(1986)以降の参加。

6 Answers 4:50 ★★★★☆

アコースティックギターとボーカル、フォーキーで中世的な音像。ゲストボーカルでUSのジャズシンガー、Chanda Ruleが参加。比較的オーソドックスなコード進行で進むバラード。リズム感が少し跳ねている。ドラマーのChad Wackermanはフランクザッパやアランホールズワースと共演している。すべての楽器のパートが主張しすぎず、全体でかみ合っているが細かく聞いていくと味わい深く切れ味鋭いプレイをしている。

7 Queen Of Spies 4:26 ★★★★

ミドルテンポで、抒情的なメロディのインスト曲。ツインリードもあるがJane Getter一人による演奏。ギターバトルはなく全体的なバンドアンサンブルで曲が展開していく。ヌーヴォメタル感が強い。

8 Disappear 5:37 ★★★★

アコギのアルペジオ、音が深みがある。ドラマーがGene Lake、サックス奏者のオリバーレイクの息子でさまざまなレジェンドと共演。ベースがMark Egan、パットメセニーやギルエヴァンスとやっていたベーシスト。Jane Getterのギターとボーカル。この曲は浮遊感がある。現代プログ的。リズム隊の差が浮遊感に繋がっているのだろうか。フュージョン感というか軽やかさがやや増した。

9 Safe House 2:08 ★★★★

最後はアコースティックギターによるソロ。空間音も生かした迫力ある音作り、多い手数で押してくるというより、一つ一つの音に気迫が入っている。最後、リバーブが左右に飛び回り、フェードアウトしていく。

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