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Arida Vortex / Riders of Steel

Arida Vortexはモスクワで1998年にデビューしたパワーメタルバンドです。ツインリードを擁し、いわゆる王道パワーメタルを演奏していますがロシアらしさがメロディにでてくるのがポイント。基本はドイツのジャーマンパワーメタルの影響下にあるサウンドですが、北欧、東欧的というか、ルーツたるロシア的なメロディセンスが出てきてやはりドイツのバンドとは違う味わいがあります。ロシアのバンドは希少なので、聞いていて面白いですね。他にもロシア語で歌うフォークメタルバンド(ГрайРуянなど)も存在して、北欧とも東欧ともまた違う独自の世界観を築いています。それらフォークメタルのバンドよりはロシア色は薄いですが、たとえば「2.Small Toy Soldier」のコーラスのメロディあたりはロシアならではの味わいを感じます。ちょっとモンゴル的でもありますね。モンゴルとも音楽文化的には近いので。以前、モンゴル音楽について取り上げた記事もどうぞ。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Guests from My Nightmares
不穏なオルゴールの響き、ドアが開く音
エクソシストのような不気味な反復ピアノフレーズにホラーなオーケストレーション
ホラーな感じながら微かなクワイアもある、東欧的なメロディ
イントロでインスト曲
★★☆

2.Small Toy Soldier
メロディアスなギターリフに琴のような古楽器っぽいメロディが乗る
ボーカルが入ってくる、クリアで力強いボーカル
正統派パワーメタル感、ギターは刻み
ブリッジでは掛け声が入る、プロダクションはいまいちだが曲構成はよくできている
コーラスではやや民族的なバッキング、中央アジアの影響を感じる
ヴァースはミドルテンポでじわじわ来る
ブリッジからBPM同じながらドラムの手数が倍になる
ボーカルの発声や歌いまわしはうまく、声質は適度にゆがんでいて心地よい
サビが独独の味わいがある
ギターソロは少しクラシカル、ツインギターのようだ
バッキングは刻み、パワーメタル的
そこからギターリフパートへ、ドラムも手数が多い
そこからサビへ、この曲は良い
九宝あたりのモンゴル・中央アジア的なメロディの影響をサビからは感じる
★★★★☆

3.Riders of Steel
ツインリードでメロディアスなリフ、いかにもな始まりだが疾走感がある
メロディセンスがやはりヨーロッパのバンドとは少し違う
東欧のセンスに近い、UKの影響よりはドイツの方が強いが、もうちょっとメロディアス
サビ終わりのコード進行、ボーカルだけになるパートのずらし方は中央アジア的
リフはメイデン的といえばそうだが、リズムがツーバス一定なので質感が違う
ドラムはジャーマン感が強い
ブリッジでクワイアが入ってくるところは東欧的、クラシカル
サビはジャーマンでやや初期、カイハンセン時代のハロウィン的
ギターソロはツインリードから入りそれぞれのソロへ
プロダクションが心地よい、コーラスが生声っぽいのでもうちょっとここはエフェクトを駆けてもいいと思うが
ギターサウンドやボーカルサウンドはいい
ギターソロがきれいに完結し、そこからブリッジへ、ここはちょっと力業
再びハロウィン的コーラスへ、コーラス終わりのメロディは特異性がある
最後はラルフシーパーズ的なスクリームでシャウト
★★★☆

4.We Will Rise Again
高速ナンバー、パワーメタル的な高速ツーバスでギターリフ
スラッシュな感じはなく、パワーメタル
ボーカルも朗々と歌い上げる、コーラスがポリフォニーで入ってくる
ヴァース~ブリッジと疾走し、歌い上げる系のコーラスへ
ジャーマン的、サビの後さらに大サビへ
これは力が入った曲
再びヴァースへ、間奏やリフからヴァースに入るところはもうちょっと工夫すれば良いのに
ひと段落してから次に移る感がある
ヴァースからブリッジ、コーラスへの流れはスムーズ
サビはコーラスもメロディを奏でて、そこから大サビへ
ハロウィンの影響が強いように感じる、曲のクオリティは高い
間奏は各自ソロ~ツインリードでテンションを保ったままコーラスへ、サビ~大サビの作りはうまい
過剰にこれでもか!と盛り上げてくる
★★★★

5.Run to Nowhere
ハードロック的なリフでスタート、ギターリフにメロディアスなキーボード
女声ボーカルが入る、キーボードサウンドが装飾音としてアクセントを聞かせている
東欧~北欧的な美しいメロディだが、サビではLordi的なロックンロール、グラムロック的
サビの後、大サビ
さらに盛り上がるというより、テンションはヴァースに戻るがより覚えやすい歌メロが出てくる
最初のはサビというよりブリッジか
これはかなり今までと毛色の違う曲で印象が変わる
ヴァースの後のブリッジのLordi的なパートがかなりガラッと変わる
そこからのサビも魅力的、ブリッジから男声が戻ってくる
Powerwolfあたりにも通じる世界観、ちょっとホラーでゴシック
★★★★☆

6.My Turn
上下に音程反復するメロディアスなギターリフからスタート
ハロウィンのフューチャーワールドの音数を減らしたようなリフ、プリティメイズにもありそう
そこから歌メロ、歌メロはけっこうネオクラシカル系でハイトーンまで駆け上がる
ヴァースからコーラスかブリッジまで行った後、再びリフへ
ヴァースが入ってくる、ドラムは手数が多くタム回しが入ってくる
ハイトーンのところはサビというよりブリッジな気がする
やはり大サビというかコーラスが来た
コーラスは予定調和的だが最後の終わりだけ予定調和からずらしたところまで音程が上昇する
間奏へ、間奏はちょっとプログレメタル、ジェント的なテクニカルなフレーズ
その後は心地よく刻むパートを経て落ち着けてからヴァースへ
この辺りの落ち着けるセンス、ソロとかが一段落してから次のパートへ移る感じはこのバンドの特性なのだろうか
けっこう展開は多いし、ドラムの手数やパターンも多く一本調子ではないが、各パーツが比較的完結する
★★★☆

7.The Invincible
イングウェイみたいなネオクラシカルなフレーズからスタート
音はあそこまでぶっとくないが、かなりクラシカル
ギターは結構技巧派、インストのようだ
ツインギターがそれぞれソロを取り、ところどころツインリード
DragonForceのような「笑ってしまうほど速弾き」はないが適度にツボを押さえたフレージング
十分心地よく、おっと思うぐらいに技巧的
一通り弾きまくって終曲
★★★

8.Damned and Killed
空気が変わり、ボーカルとエレキギターのアルペジオ、静かだが不穏な響き
歌い方も力強い
そのテンションのままでヘヴィなリフが入ってくる、重厚感がある
バラードと言えるだろうか、けっこうドラムの打音は強め
ヴァースになるとボーカルとキーボードだけになる、声が前面に出てくる
ブリッジでは勇壮なギター、メロディアスなフレーズにボーカルが乗る
ここのパートはカッコいい、北欧メロデス的な展開するコード感があるギターリフ
ブレイクを経て疾走するコーラスへ、ここから疾走するのか
またヘヴィなパートへ戻る、かなり凝った作りではある
コーラスが入ってきて、別メロを奏でる
ボーカルが熱を帯びてくる、リズムブレイクして先ほどのギターがメロデスっぽいブリッジへ
ボーカルはメロディアス
曲の各パートのつなぎがちょっと無理やり感はあるが、面白い曲
コーラス終わりで弾きまくりでスタートするギターソロ
その後は適度にメロディアス
別パートに入る、ボーカルが前面に出てくる
と思ったら疾走するギターソロ、緩急がすごいな
ひと段落した、と思ったらそのまま疾走ギターソロが続く、それぞれのギタリストが弾きまくる
メロディアス、ハロウィン的なツインリードパートへ
ここのプロダクションはこなれている、ツインリードが続く中、リズムが変化
ミドルテンポのパート、先ほどのメロデスっぽいギターパートのブリッジか
ブリッジの後、一通りタメて、満を持して疾走パートへ、だんだん癖になってきた
なんとこの曲、8分半もある、すごいな
最初は力業でつなげたように聞こえたパートも、これだけ反復されるとなじんでくる
長尺の曲をこういう聞かせ方をするとは新鮮
バンドのチャレンジを感じて好印象
最後は最初と同じくギターアルペジオと声で終曲
★★★★

9.To Be by Your Side
アコギとボーカルでスタート
アコギのフレージングやリバーブのかけ方がちょっとロシア的
影があるというか、低音の倍音が強め
美しい歌メロ、ヨーロッパ的なメロディ
特にどこの国、という印象は受けない
あえて言えば初期スコーピオンズ的か
アコースティックバラード、ギターのオブリガードが適所適所に差し込まれる
転調し、コーラスが増える
ウィンドオブチェンジとか中後期バラードというより
初期の、中世的、ファンタジックな響きも感じるスコーピオンズのバラード
★★★☆

全体評価
★★★★
各曲のクオリティが高く、チャレンジ精神もある
素晴らしいアルバム、掘り出しモノ
ハロウィンやスコーピオンズなどジャーマンパワーメタルの強い影響は感じるもののメロディセンスが違うので特色は感じる

リスニング環境
昼・家・ヘッドホン

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