見出し画像

MONO / Pilgrimage of the Soul

画像1

モノ(MONOとして定型化)は、1999年に東京で結成された日本のインストルメンタルバンドです。世界で評価の高いバンドで、Dizzy Mizz LizzyのAlter Echoに影響を与えた10のアルバムでティム・クリステンセンがMONOのアルバムNowhere Now Here(2019)を挙げていました。本作は2021年リリースの11作目。オルタナシーンの重要人物、スティーブ・アルビニのプロデュース。公式サイトのバイオを引用します。

1999年に東京で結成された4人組インストゥルメンタルロックバンドMONO。オーケストラとシューゲーズギターノイズを合わせたオリジナルな楽曲スタイルは世界中で非常に高い評価を受けており、もはやロックミュージックの域では収まらないその音楽性は、イギリスの音楽誌NMEで”This Is Music For The Gods - 神の音楽"と賞賛された。

結成から最初の10年間で、MONOは、特に高い評価を得ているライブパフォーマンスでそのステータスを急速に確立していった。毎年約150のショーで構成されるワールドツアーを通じて現在59か国以上を訪れ、その純粋な陶酔感とダイナミックな共鳴で織りなすライブパフォーマンスは、批評家やロックミュージックファン達に、現存する最高のライブバンドの1つだと認識されている。バンドは結成10周年の節目にニューヨーク、東京、ロンドン、メルボルンでオーケストラとのスペシャルライブを行い、これは後にライブアルバム「Holy Ground」として不朽の名作となった。 MONOは現在日本で最も国際的に成功しているバンドの1つである。

アルバムやライブ以外でも、MONOは映画音楽作曲家としても名を馳せており、オーケストラとのライブアルバムを含む10枚の成功したアルバムをリリースした後、バンドは、短編映画"Where We Begin"でカルフォルニアの国際的なフィルムフェスティバルIdyllwild International Festival of Cinemaにてベストミュージカルスコア賞"The Marshall Hawkins Awards: Best Musical Score - Featurette"を受賞。そして、2016年には楽曲提供をした長編映画"The 4th Company"がメキシコ・アカデミー賞"Ariel Award"の音楽賞でノミネートされた。

2018年、新しいドラマーDahmを迎え、The Cureのロバート・スミスのキュレーションでロンドンで開催されたMeltdown FestivalにMy Bloody Valentine, Nine Inch Nails, Mogwai, Deftones等と共にヘッドライナーとして出演する。翌年、10枚目となるアルバム”Nowhere Now Here”をリリース(米ビルボード インディチャート初登場23位)。バンドは結成20周年記念として、ロサンゼルス、シカゴ、ニューヨーク、ロンドンでのスペシャルオーケストラ公演を含むワールドツアー行った。

2019年のツアー最終日はロンドンの歴史的なバービカンホールで行い、2,000人の聴衆に向けてオーケストラと共に演奏されたこのスペシャルライブを2021年に「Beyond the Past」としてリリース。このアルバムはビルボードのクラシック・クロスオーバーアルバムで全米2位にランクインした。

世界がCOVID-19のパンデミックの中、バンドはシカゴに渡米、長年のパートナー、スティーブ・アルビニと共に新しいアルバムを制作。11枚目となるアルバム「Pilgrimage of the Soul」を2021年9月リリース予定。

活動国:日本
ジャンル:エクスペリメンタルロック、ポストロック、シューゲイズ
活動年:1999-現在
リリース日:2021年9月17日
メンバー:
 Takaakira "Taka" Goto – lead guitar, glockenspiel
 Hideki "Yoda" Suematsu – rhythm guitar, glockenspiel
 Tamaki Kunishi – bass guitar, guitar, piano, glockenspiel
 Dahm Majuri Cipolla – drum kit (2018–present)

画像2

総合評価 ★★★★☆

ドラマティック。けっして派手に展開するわけではないが、聞き終わってみると豊穣な音楽体験だったと感じる。先日聴いたYEAR OF NO LIGHTにも近いが、MONOの方がより展開がゆったりしていて抒情性を感じた。何かなじみがあるのは日本人だからだろうか。高木正勝(細田守の映画の音楽担当)のピアノアンビエント作品のような、あるいは坂本龍一の映画音楽のような静かなドラマ、じわじわと高まる熱のようなものがあって聞いていて心地よいのだけれど、アンビエント的心地よさだけで終わらずきちんと熱量が残る。

ごく個人的な感想だが、90年代後期に日本で活動していたBOaTの最終作「RORO(2001)」に近いものを感じた。今聞くとROROは音響面が粗削り(時代の限界)なのだが、当時は突然変異したように感じたし、何か妙に心に残ったアルバムだった。MONOは2000年、2001年当時は下北沢や新宿など都内のライブハウスでライブを行っていたようだから、もしかしたら影響を与えた、あるいは相互に影響を与え合ったのかもしれない。こうしたサウンドはUS、シカゴのポストロックバンドであるTORTOIS(トータス)が源流だったのだろうか。そうした萌芽から20年、音楽性を追求してきた凄味がある。聴けば聞くほど味が出そうな良盤。きちんと聴くのが初めてのアーティストだったが、過去作も追ってみようと思う。

1.Riptide 05:51 ★★★★

静けさ、静かにピアノが鳴っている。中世の古城か霧の森のような幽玄な響き。突然轟音のバンドサウンドが入ってくる。ビートは強いがギターサウンドはシューゲイズ、音の塊でオーロラにようにつかみどころがなく美しく揺らめいている。寄せては返す波のようなドラマ。確かに、Alter Echoの音響に近いが、もう少しドラムに生々しさもある。メロディは抒情的。

2.Imperfect Things 06:25 ★★★★☆

浮遊するような、穏やかなのだが哀愁があるメロディ。抒情派でインストというとUKのキャメルなども思い出すが、もう少し暗めな感じ。シーケンスフレーズが反復している。エレクトロニカ的な浮遊感、シガーロスなどやトータスの音響派ポストロック的でもある。だんだんとミニマルなフレーズが積み上げられてバンドサウンドが雄大に流れていく。オーケストレーションが鳴り響く空にシューゲイズギターがノイズの雲を浮かべ、そこをメロディが飛んでいく。羽ばたきのようなドラムビート。

3.Heaven in a Wild Flower 07:10 ★★★☆

映画音楽も手掛けている、というが、確かに映画音楽、最近の邦楽の映画音楽に近いものもある。こういう邦画やジャパニメーションのアンビエント的な音楽は独特の手触り、世界観がある。細田守作品を手掛ける高木正勝とか。坂本龍一が考えてみたらこの流れの始祖みたいな感じなのか。穏やかに広がる草原、晴れた空。その下にたたずむ少年と少女。徹頭徹尾、アンビエントなドローン音とミニマルなピアノだけで構成される映画音楽的な曲。

4.To See a World 04:00 ★★★★☆

エレキギターのアルペジオからスタート。オーケストラが入ってくる。音色が織り成すタペストリー。ドラムが入ってきた。やはりドラムによってロック感、バンド感が担保される。けっこうドラムの手数は多い。シューゲイズ的なかき鳴らすギター音が入ってくる。ドラマティックに盛り上がる曲。

5.Innocence 08:10 ★★★★☆

ゆっくりと鳴り響く、チャイムのようなギターの音。その下でドラムとギターがやや途切れながら地面を形作っている。なぜかくるりを思い出した。コード進行に近いものがあるのだろうか。あるいは日本のバンドという先入観だろうか。別に京都のバンドというわけでもないのだが。このサウンド的にはどこかで、、、。ああ、BOaTかもしれないな、BOaTのRORO。あれよりはるかに洗練されているが、もしかしたAse(BOaTのリーダー)があの時目指していたのはこういう音だったのかもしれない。ROROは衝撃的なアルバムだった。奇しくもMONOの1stアルバムとBOaTのROROは2001年にリリースされている。もしかしたら対バンなどあったのだろうか。2000年ごろから下北沢のライブハウスでライブしていたようだ。BOaTも下北沢あたりが根城だったはずだから、十分可能性はある。こうした音像の源流はTortoisなのかな。それをどこか日本的な和音感覚(J-POP的なメロディアスな進行というか、やはりどこかで日本的な流行や、聞いてきた音楽文化が出るのだろう)で翻訳したらこんな音像になったのだろうか。

6.The Auguries 07:30 ★★★★☆

何かを掘り下げるような、どこか祝祭的な、トライバルというよりは日本の焚火の周りで踊る的な、土着的なリズム。南米やアフリカなどの二グロアフリカン音楽の影響を受けたトライバルなリズムに比べるとあまり手数は多くない。日本的だが大太鼓のように力強いアタックでもなく、控えめなアタック。ただ、何かを掘り下げている。奇妙な、静かな熱量が揺らめく曲。「The Auguries」とは占い、前兆のこと。複数形ということは何かが起こる予兆、前触れだろうか。どの曲もそれほど強いメロディがあるわけでもないのに妙な説得力がある。じわじわと炭火で温められるような。

7.Hold Infinity in the Palm of Your Hand 12:21 ★★★★☆

飛び回る羽音のような、ただ、不快ではなく、妖精の羽音のような。オルゴールのような音と共にどこか郷愁をさそう、レトロでノスタルジックな幻想的な音世界。ゆったりとしたテンポでビートが入ってくる。じっくりと進んでいく、弱火で温められ続けている感覚がまた起きる。静かな熱量が溜まり、高まっていく。じっくりと熱量が高まり、ついに沸騰したかのようにドラムビートがあふれ出す。ギターも音の塊になり、噴火したかのように高音のフレットを掻き鳴らす。見事なドラマ。

8.And Eternity in an Hour 05:51 ★★★★

和音を奏でるオーケストレーション、弦楽器の上にピアノのミニマルなフレーズが反復する。チェロかな、ベース音が移動していく。バイオリンとピアノは同じフレーズを反復している。エンディングロール的な、追憶、新しいドラマというよりは思い出す、自分の内側にあるものを見返すような音像。少し音数が増していく、チェロとバイオリンか、弦楽器がそろって和音を展開し、川の流れのように移ろっていく、ミニマルなピアノフレーズは継続しているが一部低音が足された。とはいえ弦楽とピアノのみで曲は展開し、終わる。映画音楽的アンビエント。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?