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The Ocean / Phanerozoic Ⅱ: Mesozoic | Cenozoic

The Oceanはドイツ出身のプログレッシブロック、エクスペリメンタル(実験音楽)バンドで、2000年結成、2002年デビュー。活発な活動で2020年までに8枚のアルバムをリリースしています。こちらは2020年作。2018年にPhanerozoic I:Palaeozoicをリリースし、その続編にあたります。意味は顕生代1:中生代|新生代、生物の進化や地球の歴史といった壮大なテーマですね。音楽的には実験要素が多分にありますが、コンセプトアルバムやロック的なフォーマットはプログレッシブロック、プログレッシブメタルの影響を強く感じます。2.の大曲は見事な作品。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Triaasic
コードをかきならすドローンが続いた後、ミニマルな繰り返しの刻み
少しトライバルな打楽器のリズムと共に入ってくる
ベースがメロディを奏でる、ややオリエンタルなメロディ
ギターとベースが絡み合い、リズムが波を打つ
音が引き、多重に重なった合唱ボーカルが入ってくる
チャントのような繰り返し
その後、ヘヴィなパートへ、ギターが激しさを増しボーカルもスクリーム
ふたたび合唱パートへ
最初のリフで使われたコードのドローン音
そこからヘヴィなリフ、スクリームのパートへ
コードが展開する、プログレ的、上に全体がずれる、ここがコーラスか
元のテンションに戻り、オリエンタルなメロディをギターが奏でる
ヒンドゥースケールのギター、ただ、インドと言うよりはエジプトあたりの印象か
そのままギターソロ的な反復フレーズ
その上にスクリームが乗り、再びコーラス
リズムがかなり変拍子に、その上にスクリームが乗る
ブリッジからコーラスへ、コーラスもスクリーム
ふたたびオリエンタルなメロディ、どこか荒涼とした砂漠感がある
打楽器もアフリカ的
★★★★

2.Jurassic | Cretaceous
変拍子からスタート、変拍子だが音は全体的に各楽器の輪郭は曖昧で音が一丸となって出てくる
管楽器的な音が入り、ビリンバウのような、弓を口ではじくような音が響く
打楽器も民族楽器的な音が入る、密林感、アボリジニーの楽器だろうか、これもアフリカか
トライバルなリズムをドラムが引き継ぎ、クリーンで中音域のボーカルが入ってくる
いくつか立ち上がるハーモニー、そのままサビへ
サビはスクリームでニューメタル的
ふたたびトライバルなリズムのヴァースだが拍の取り方が変拍子
間奏、オリエンタルな感じのメロディだがキーボードとギターで音が展開してハーモニーになる
ふたたびサビへ、スクリームする後ろでバンドがうねる、ジュラシックとあるがそんな印象
音の塊が去り、空間的な残響音があるアルペジオに
反復フレーズにベースが入ってくる、違うリズムのフレーズがいくつか重なり合う
ボーカルが入ってきてやや強引にサビへ戻る
バックはジュラシック、そこからコードが展開して再び間奏、ギターとキーボードのメロディが印象的
むしろこちらの方が盛り上がり感がある
かなり変拍子でバンド全体が蠢いているかのようだ
その上に重厚なメロディが乗る、管楽器の分厚いフレーズ
一度音が去りピアノが入ってくる、静かなフレーズで低音部、何かが歩いているようだ
大きなものが去っていき、ミニマルな反復と打楽器が入ってくる、何かから逃げるのか、追っているのか
探索に出かける、何かを探っているようなシーン
ボーカルが入ってくる、深いリバーブ、追憶か異次元からの声か、どこか隔てた場所の声
ディストーションギターの音が入ってくる、音空間が埋まり、ゆったりとメロディアスな歌メロ
ふたたび探る、焦燥感のある繰り返しパートとボーカル、ボーカルの節回しに少しライの要素がある
北アフリカ、地中海音楽の影響を感じる
メロディアスな歌メロから、さらに展開しクラシカルな和音感のあるボーカルフレーズをややスクリーム気味に歌う
テンポアップし、ブラックメタル的なブラストビートにトレモロリフ、スクリーム
とはいえ全体として疾走するのではなく同じ雰囲気、メロディも保ったまま手数だけ増えている
しばらく緊迫感あるパートが続き、先ほどと同じコード分解したようなボーカルフレーズをスクリーム
ここが大サビだろうか、耳に残るパート
変拍子とたたきつけるようなギターサウンド
そこからブラストビートと吐き捨てるようなスクリーム、音圧が高まる
音が去り再びアルペジオ音が反復する
トライバルな打楽器が入ってきて、ハミングが入ってくる
声だけでスクリーム、場面が変わりブラックメタルパートへ
音の混沌度合いが増していく、スクリーム、一部不協和音も感じさせる音
たたきつけるような混沌の音の塊が打ち付けられる、スクリームが入ってくる
13分半にわたる大曲
★★★★☆

3.Palaeocene
前曲終盤のテンションを引き継いだかのようなスクリームとヘヴィな音圧がある曲
ほとんど世界観が変わらない、一瞬の余白を置いて次のパートが始まったかと思うほど
スクリームパートが一通り続いた後、ドラムが走り始めてテンポアップ
ギターはトレモロリズム、ブラストビートではなくアップテンポのエイトビート
急に音が消えて少しサーフな音作りに、エレキサウンド的なコード音
波の音か風の音のように聞こえる効果音が入ってくる
しずかなコードかき鳴らしが余韻を作り、一気に音圧が戻ってくる
スクリームとバンドサウンド、ただ、前曲ほど混沌とはしていない
スクリームは強い、アップテンポに切り替えてスクリームが続く
コードはメジャー感とテンションコードが多い、ハードコアマナーの曲
スクリームが重なる、アジテーション感が強い
一気に終わり、4分台
★★★☆

4.Eocene
変拍子、アルペジオとベース、ドラムが少し違うリズムループし、ボーカルも変拍子間のあるフレーズを歌う
それぞれの音が絡み合い、ギター、ベース、ドラム、ボーカルで対位する
ブリッジでややゆったりと、回転するような旋回するようなシーンに
繰り返しが儀式的な響きを生む
ユニゾンで同じフレーズを全楽器隊が奏でる
ちょっとToolっぽさがあるか
ふたたびアルペジオ、楽器が絡み合うヴァース
ボーカルはクリーンで歌い上げる、力強さはある
ギターが空間を埋め、ベースが自由に上下する
ユニゾンパートへ、リズムも少し揺れる、すこしづつ遅くなる
そのままエンディングへ
★★★☆

5.Oligocene
残響音を引き継ぐ形で次の曲へ
重厚な響き、遠くから立ち上がってくる、リズムは反復、機械的で安定している
少しノイズと言うか、歯車が回るようなシンバル、機械音を連想させる音がリズムに入ってくる
キーボードが分厚くコードを展開させている
たゆたうようなフレーズ、リバーブの強い音の粒が浮遊する
遊泳している、漂っている印象
ボーカルは入ってこない、インスト
瞑想的だがずっと一定のリズムがある、機械的なリズム
コード進行は開放感がある、インタールード
★★☆

6.Miocene | Pliocene
前の曲からエフェクト音が引き継がれ次の曲に
明るめの音ながらひきづるドゥームなフレーズに、絞り出すようなスクリームが乗ってくる
そこまでヘヴィではないが、かなり遅い、少しオリエンタルなフレーズが出てくる
遠くから何かの儀式を眺めているようだ、何者への祈りだろうか
音圧が増して曲が進行していく、エンジン音のような継続したリズム
ボーカルがクリーントーンでハーモニーが入る、途中にライ的な節回しが入る
ライとはチュニジアあたりのアラビックな歌い方、節回しが入るがインドやトルコほど強くない
祈りの印象が強い曲、低音でチャントのようなボーカルが入ってくる、その上でしぼりだすようなスクリーム
メロディアスなパートへ、再び節回し、節回しフレーズがサビ
印象に残るボーカルフレーズ、ギターも少しメロディを足してくる
★★★★

7.Pleistocene
音を一部引き継いで次の曲へ、組曲なのだろうか
打ちおろすような、ゆっくり機織り機が動き続けるような、歯車が回るリズム
クリーンなボーカルがメロディを奏でる、どこかオリエンタルなフレーズ、和音感
変拍子になりブリッジ、ボーカルはスクリーム
バックではギターがややルーツミュージック的なメロディを奏でる
ボーカルに少女のような、エフェクトの効いた女声らしきものが混じる
透き通っているともノイズとも聞こえる、少しディストーションがかかっている
とぎれとぎれの通信のようでもある
文明が崩壊した後の世界を描いているのだろうか
タイトルがすべてceneで終わるがどういう意味なのだろう
ふたたびボーカルがスクリーム、初期Amorphisのサウザンドレイクス的な、民族的なフォークメロデスを思わせる
ただ、音作りはそこまで圧がない、各楽器の輪郭は丸く、エモというか、ザクザクしたエッジ感は薄い
一丸となって押し寄せる勢いの方が重視されている
強いスクリームが続き、ブラストパートへ、ブラックメタル的
音はアンビエント的に、各楽器は混然として塊になる
ギターはトレモロ、ブラックメタルパートはけっこう好きなようだ
展開していく、デヴィンタウンゼントあたりを連想させるパート、音の塊が変拍子で出てきて上にスクリームが乗る
コード展開も音の塊感がある、それらが転がってくる
そのまま終曲
★★★

8.Holocene
完全に音がいったん終わり、この曲へ
ゆっくりとした始まり、日が立ち上るのか沈んでいくのか
ドラムがどっしりとしたリズムをたたき、ミニマル感のあるギターとボーカルが入ってくる
ニューウェーブ的、ゴシック的な荘厳さがある
だんだん、オリエンタルなフレーズや和音感が少し混じってくる
反復するフレーズ、重なり合って表情を変えていく
ベースがリフを奏でる
弦楽器がゆったりとしたフレーズを奏でて、チャントのような言葉が詰まった歌メロが出てくる
エピローグ感がある、エンドタイトル
バッキングはゲーム音楽のようでもある、ややホラー、緊迫感があるが聞き疲れない
ボーカルが入る、けっこう展開する、波のように一度浜に入りこんでは去っていく
近づいてきて終曲、わずかな余韻

全体評価
★★★★
アラビック、地中海の要素を取り入れつつ、ブラックメタルからチャントまで幅広い要素が入っている
この辺りの要素の取り入れ方は独自性がある
2曲目の大曲は見事な構成力
後半にもう1曲大曲があると良かった
4~7曲目は音が続いてはいるが、組曲感はそこまで強くない
さまざまな要素を不自然さなく取り込んでいる力は感じるが、HakenやIgorrrに比べると楽曲の展開が弱いところがある
とはいえフレッシュな挑戦感のある佳作
2枚組で、2枚目はボーカルレスのインスト編
映像的で、ボーカルがなければ映画かゲームのサントラのようにも聞こえるだろう
ただ、インストはBGM感が強そうなので未聴

リスニング環境
昼・家・スピーカー

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