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Marilyn Manson / WE ARE CHAOS

ショック・ロックの雄マリリン・マンソンの2020年作。それほど熱心に聞いたことがありませんでしたが、けっこう70年代ロック的な質感も持っているのですね。ブラックアルバム以降のメタリカもそうですが、ある程度ビッグになったメタルアーティストは70年代ロックの語法に回帰していくのかもしれません。シアトリカルで物語性があり、ボーカルパフォーマンスが主体の70年代ロック、ということで、ピンクフロイドのロジャーウォーターズのソロ作やデイヴィッド・ボウイの70年代作のいくつかを連想させるシーンがありました。また、けっこうアコースティックギターが使われていたのは意外でした。さすがのクオリティを感じた一枚。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.RED BLACK AND BLUE
不穏なシンセ音、宇宙空間で彷徨うようなSE
声が入ってくる、深い声、複数音声が混じっている
かすれた声、重々しい声、ささやき声
悲鳴のようなSE、上昇音
混乱の度合いが増し、リズムが入ってくる
ビッグサウンドでロックリズム
ディスコサウンドのようなリズム
ボーカルが入る、ボーカル、リズム、ベースが主
ギターの刻みが入ってくる
ギターがコードをかき鳴らしシャウト、サビか
複数の声がボーカルラインをなぞり続ける、次々と湧き出てくるよう
ブリッジのギターの刻みが印象的
サビはダウンワードスパイラルの頃のNINのよう
メロウなパートへ、浮遊感あるSE、メロウな歌メロ、このパートはいいフック
じわじわ音圧が上がり、再びサビへ
サビの合いの手でギターの刻みが出てくる
ボーカルのみで終曲
★★★☆

2.WE ARE CHAOS
アコギにベースと四つ打ちリズム
そこに中音域のボーカルが乗る、アリスクーパー的でもある
比較的オーソドックスなコード進行で開放感のあるメロディ
ロジャーウォーターズ的かもしれない
歌詞はなかなかダークな感じ、聞き取れる範囲だとサビは「私たちは病気、私たちは混沌」と言っている
アコギの質感といい、Animalsとか、ロジャーウォーターズ色が強いかも
歌メロはもっとメロディアス、ポップなフックがある
ダークな歌詞のわりに開放感がある、メジャーで、カノン進行のような王道のコード進行
これは魅力的な曲
ちょっとジギーのころのボウイ感もあるかも
★★★★☆

3.DON'T CHASE DEAD
音圧高めのリズム、機械的なリズムからスクリーム
どっしりしたリズムに戻る、質感は1曲目に近いがSEが薄い
コード進行はもっとポップ、きちんと耳に残るフックがある
コーラスへ、少しマイナーも入るメロウな感じだがサビの後半でメジャーとマイナーが切り替わる
18の頃のMOBYの空気感もある、自然に入ってくるメロディだが耳に残る
女声の金切り声のようにも聞こえるがそこまで耳を切り裂かない高音のスライド音がサビの後ろでなっている
中間部はホラーな雰囲気、怪物が迫りくる、緊迫感を増すドラム連打
そこからサビへ、サビはスペーシー
★★★☆

4.PAINT YOU WITH MY LOVE
雰囲気が変わりアコギとミドルテンポのリズム&ブルース、ハミングのようなコーラス
70年代ロックのような歌い出し
美しいメロディ、この感じはもっとルーツが古いアメリカンポップスや映画音楽か
間奏でコードが下降していき、不協和音がアクセントに
穏やかな語り口からスクリームへ
サビをオクターブ上でシャウト
★★★★

5.HALF-WAY & ONE STEP FORWARD
落ち着いたヒップホップ的リズムと低音でメロディアスなボーカル
ハリウッド映画音楽的
ピアノのアルペジオのバックに歌い上げるメロディー
ダンジグのような低音だがもっとテンポは速くハキハキしている
緩やかな展開、ワインとシャンペン、といった単語が聞こえる
優雅さがある、少し弦楽器的なSEが入る
だんだんと音色が増えていきバックはカオスな音像になるがリズムは落ち着いている
不協和音はない、音色はさまざまだが和音感は整理されている
サビで終曲
★★★☆

6.INFINITE DARKNESS
低音で打ち鳴らされるリズム、少しトライバル感がある
低音でささやくボーカルからシャウトへ
ディストーションギターが入り、ニューメタル的な展開に
音圧が減り、スペーシーなギターと鼓動音のようなドラムが残る
ボーカルがクリアになり、ややブルージーに歌い上げる
ディストーションギターが戻ってきてサビへ
アジテーションのようなコーラス
リズムは一定でなめらか
サビが終わると低音で、たとえばトンネルを潜っていくような音世界に変わる
クリアなドラム音が差し込み、再びサビへ
ディストーションギターのコードかき鳴らし感が強め
単音のコードラインをなぞり、ボーカルだけ残り終曲
★★★

7.PERFUME
マリリンマンソンらしいリズム、ツービートでどこか道化のような、サーカスのようなリズム
SATANと連呼するコーラスが聞こえる
パレードの音楽のようだ
いろいろな音は入ってくるがギターはそこまでコードを展開しない
安定したコード展開
ときどき立ち止まり、また進みだす
サビの後ろでちょっとロックンロールっぽいギターがなっている
叫びが高揚していく、シンセ音が上昇しつづける
沸騰したやかんのような音になる
静かになりコーラスが残る
★★★★

8.KEEP MY HEAD TOGETER
ベースが前面に出てくる、ベースリフが引っ張りドラムが続く
レニークラヴィッツあたりにもありそうな曲か
ブーストが効いたベース音が曲を引っ張り続ける
さまざまな音が流れて通り過ぎてゆく
展開、単音ギターからコードもリズムも展開していく、ベースの重圧が減る、一時着地というところか
再びベースが走り出す、近未来都市を駆けているかのようだ
ドラムがだんだん勢いづいてくる
テンポが速いわけではないが走っている感覚、時間が遅く感じるがスピードは出ている的な
感覚が早くなる感じ
トンネルを抜けた
最後呪文のようなフレーズで終曲
★★★☆

9.SOLVE COAGULA
つかみどころのない曲名、単音でエレキサウンドななギターリフから
一定の機械的なリズム、こうしたマリリンマンソンとかが使うリズムをなんというのだろう
昔はインダストリアルとか言っていたが
普通のエイトビートか
エイトビートから四つ打ちへ
曲は普通に展開していく、コード進行は自然で不協和音もない
前奏にも出てきたが、間奏に出てくるギターサウンドが特徴的か
メロディアスでエレキイントロのような、分かりやすいメロディ
トーキングモジュレーターのような音がサビの合いの手で入る
音作りが面白い
エレキギター音、クルアンビンとかに近い、2020年の音なのだろうか
サビをボーカルのみでなぞり終曲
★★★☆

10.BROKEN NEEDLE
アコギとボーカル、微かなキーボード音からスタート
ベースが入ってくる
ハーモニーが入り、ギター音がクリアになる、ピアノが入る
余韻を残してリズムが入る
リズムはヒップホップ的
大サビ、ソロで切々とした歌い方からハーモニー
一瞬の間奏、少し不協和音が入る
再びヴァースへ、リズムは残る、重めのドラム音
ブリッジへ、ハーモニーがあるが歌い方が力強くなっている
2小節タメてから大サビへ、ブリッジもサビ的なのでメロディーが2段階展開する
間奏、リズムはずっと緊迫感を高めていき、ちょっと不協和音強めのピアノ
再びブリッジへ、かなりボーカルが加工されていてぐるぐるフランジャーで回る
オーケストラ、弦楽器の音がだんだん強調されて前面に出てくる
アコギ主体に戻り、アコギとボーカルで余韻、きしむような音
★★★★

全体評価
★★★★
マリリンマンソンの個性を感じた
ところどころ70年代のロックテイストも感じつつ
さまざまな音作りのうまさは流石
どの曲も作りこまれていて感情が動かされるドラマがある
個人的なメロディの好みかもしれないが、キラーチューンにやや欠けた
中盤~後半が弱い、最後の曲は良いけれど
けっこうロジャー・ウォーターズ的なメロディがあった気がする
メロディや全体的なドラマ構築における歌詞やメッセージの比率が強いのかもしれない
そのあたりが言葉重視のロジャーとの共通点を感じた理由なのだろう
全体的なクオリティは高い

リスニング環境
夜・家・ヘッドホン

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