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Knotfest 2023@幕張メッセ 2023.4.1

二週連続、幕張メッセにやってきました。先週はLoudpark(→関連記事)、今週はKnotfest。先週は雨模様でしたが今回は快晴です。

2020年から延期されたチケット

当初、2020年に予定されていたKnotfest。延期が続いていましたがついに2023年に実現。マスクも自由になったし、「メタルフェスが戻ってきた!」感が強まります。

会場レポ

晴天の下、幕張メッセへ歩きます。国際展示場は広いから他にもイベントを行っていますね。この日は入社式、入学式、ノットフェスというカオスな日。偶然の共通点が「みんな黒い服」。

幕張メッセに続々とメタラーが集結
他に入学式と入社式もやっていました
新入社員も新入生もメタラーも同じ黒服
全体的に黒い集団

会場につくと物販列が。ラウパに比べるとだいぶ短めです。まぁ、国内バンドが多いし、公式グッズは通販でも買えるからかもしれない。ガンズ、レッチリ、ラウパと長蛇の列に続いていたけれど今回の物販は快適。

物販列、待機列はほぼゼロでいきなりテントまで行ける
会計待ちの列が多少ある程度
シンボリックなオブジェ

今回はラウパと違い、奥の扉が入口。Knotfestのシンボルらしきオブジェを通り抜けて入場します。入場したらラウパと同じような配置。

会場の中へ
Slipknotのマスクをつけた人もちらほら

違った点としては、ビールが「ブルームーンとシンハー」だったこと。ちょっと拘りの銘柄。あと、場内の飲食がすべてキャッシュレスオンリー。全体的に「モダンなフェス」という感じ。フェス運営の手際は良かったです。

ドリンクメニュー
キャッシュレス決済のみ対応
お店はいろいろ

出店しているのはラーメン、カレー、肉系など。ラウパに比べると場外にも場内にも出店があって種類が多め。チケット代が安めなこともあって入場者数が多かったのでしょうね。単純に人も店も多めだった印象。

あと、結構椅子がありました。待機場所にもたくさんあったし、場内のS席、SS席というところは椅子エリア。その代わり、場所としてはステージから見ると脇で、ステージ最前列は一般席。これはラウパとは思想が違いますね。これはこれで良かった。S席、SS席は「ゆっくり見たい人」に特化しているんですね。ただ、S席はステージの脇なので両ステージの移動は大変。「見やすい場所」という点からいうとあまり優遇されていない。

場外は椅子がたくさん
SSエリア、映画館みたいなソファー
S席はステージ脇でパイプ椅子
エリア図
Live Areaの真ん中付近の島がSS
左右にあるのがVIP S

全体として満足度の高い運営でしたが、一点面倒だったのがLive Areaに入るときにいちいちセキュリティチェックがあったこと。ラウパは最初の出入り口でチェックされた後は会場内が出入り自由ですが、Knotfestはライブエリアとフードやドリンクエリアを行き来するたびにセキュリティチェックがあるんですよね。で、ライブエリア内には休むところがほぼないので数回は出入りすることになるし。毎回手荷物検査とかあるのは面倒。

ただ、前述の通り全体的には洗練されたフェスでした。二週連続で来てみてわかるプロモーターごとの運営の違い。あまりメタル系のアーティス呼ばないから馴染みがありませんでしたがH.I.P.っていいプロモーターだなぁと思いました。

ライブレポ

さて、ライブレポです。ライブレポを大枠で言ってしまえば

基本的にJ-ROCKのフェス感が強かった
 J-ROCKフェスに海外メタルアーティストが出たような構成
 Crystal LakeIn FlamesTriviumSlipknotだけがメタル
 (あとは前座のThe 冠)

Slipknot以外は全部前座扱い、スクリーンも使用不可
 その分Slipknotはすごい迫力だった

・音響はラウパと同じく、ステージ前は中音域が聞きづらい
 (単に僕の耳の限界かも…)
 スピーカーはステージ前面のみ、前の方は超大音量
 低音とボーカルが大きめに聞こえてくるミックスが多かった

ラウパよりやや若めの年齢層
 ラウパが平均45歳ぐらいならノットフェスは35歳くらい?

Slipknotは90年代に拡散したエクストリームミュージックを
 総括するように現れたバンドで、
 その視点から振り返ってみると今回のKnotfestは
 それに相応しいラインナップだった

・Slipknotのライブやファン層は
 予想以上にメタラーの連帯感があった

といったところ。
それでは各バンドのレポートです。「全部見たライブ」は小見出し(目次リンクあり)+Youtubeリンクありで、「一部だけ見たライブ」は太字(目次リンクなし)です。

The 冠

朝から冠さん元気。ロブハルフォードばりのシャウトが朝から響き渡ります。前座ということで15分のステージでしたが冠さん見れてちょっとうれしい。そういえば何気に生ライブは初見かも。


CVLTE

ダークなロック、という感じ。雰囲気は伝わってきたが曲は印象に残らず。


a crowd of rebellion

面白いバンドだった。中性的なボーカル(クリーントーン)と男性のグロウルボーカルの組み合わせ。クリーンボーカルの声がかなり細い。ライブでは
男声か女性か分からなかった。ビジュアルは男性に見えるのだけれど声が女性というか(実際は男性だった)。音響・曲構造的にはJ-ROCKの文脈に沿っているけれどかなり轟音。それなりにエッジと歪みが効いた音。クリーントーンのボーカルの細さで静と動がダイナミックに出てくる。これは日本特有の音像かも。さまざまなモダンロックの要素をミックスしていて、J-ROCK特有の「ルーツがよくわからない感じ」が良い。「どのバンドに影響を受けたか」が分かりづらいんですよね。シーン全体が独自の発達を遂げている。

けっこう人気のあるバンドの様子。Twitterにあげた動画も反応が大きい。「新潟県出身のラウドロックバンド」とのこと。90年代~00年代のメロデスやプログ/テクニカルデスを日本人の感覚で再解釈したらこういう感じになるのかも。コーラスでメロディアスな展開をするのは日本シーン特有の武器。


BAND-MAID

ヘドバン常連、ダウンロードジャパン2020にも出たバンドメイド。ダウンロードでは入場待ちのため見れなかったので今回初ライブ。

率直な感想としては「これだけの大会場でやるのはまだ微妙かな」というところ。ステージアクション含めたビジュアルやメイドというギミックは良いけれど、バンドとして一線級の練度や他にない独自性は感じられず。個人的にはあまり盛り上がるものがなく残念。人気はめちゃくちゃあるようで、Twitterにあげた動画でも一番反応がありました。横浜アリーナとかでもやっているようなので、ギミックとかあればまた違ったのかも(この日はSlipknot以外バックスクリーン等のギミックはまったく使えず)。


RED ORCA

期待していたRed Orca。以前ライブを観たとき(→関連記事)「かっこいいバンドだなぁ」と思っていたんですよ。音源よりライブがカッコいい。

今日も変わらぬ練度。さすがにライブハウスのステージで観るよりは迫力が希薄化していたけれど、縦横無尽に動き回るから空間を持て余している感じはなくむしろフェス映えするバンドなんだなぁと実感。カッコよかったです。グルーヴ感とかステージと観客とのコミュニケーションとか、ライブとしての完成度が高かった。ここまでのバンドはけっこう脳内補完が必要で「いろいろと補完して楽しむ」という作業をしていたのだけれどようやく「ライブ楽しい!」モードに。いいライブバンドです。未見の方はフェスとかで観る機会があればおススメ。


Crystal Lake

圧倒された。いきなり格が違う。ゴリゴリでキレキレ。ここで「ああ、今まではJ-ROCKのフェスだったんだなぁ」と気づく。冷静に考えればその通りなんですが。ここで急に「メタルライブ」に来ていたことに気づく。

新ボーカルのお披露目ライブであったよう。新しいボーカルはゴリゴリマッチョのアメリカ人でした。やっぱりでかい人はパワーが違う。なんだかんだボーカルは体格の差って大きいですよね。大きい人は声量も安定感も違う。格闘技で言えばミドル級とヘヴィ級の違いみたいな。それぞれ見どころが違うし、楽しみ方も違うからどちらが上ということはないけれど、一般的に「ヘヴィ級の試合」ってめちゃくちゃ迫力ありますからね。ライブも近いところがあって、やはり大きい人の声は迫力がある。小柄でもめちゃくちゃパワフルなボーカリストってロニージェイムスディオぐらいじゃない? いないわけじゃないけれどあまり思いつかない。先週、ラウパで観て思ったんですけどNightwishにしてもAmarantheにしてもデカいんですよ。女性ボーカルだけどたいていの日本人ボーカルより一回りデカい。そりゃ迫力あるわな。

バンドもキレキレでタイト。それぞれの連携も有機的。世界の前線で活動しているバンドなんだなぁという説得力のある音。ここまでのバンドの中で別格の音でした。

新ボーカルのライブ映像やMVはまだほとんどありませんが、ボーカルオーディション時の動画がこちら。パワフル。


Survive Said The Prophet

前との落差もあってあまり印象に残らず。普通のJ-ROCKバンドという印象。ボーカルがやや不安定だったのと、やけに低音が効いていた。a crowd of rebellionと似た感じなのかな。個人的にはちょっと観た順番が悪かったかも。Crystal Lakeの前ならもっと楽しめたかもしれない。


Rottengraffty

こちらもライブを観るのは二回目(→関連記事)。というか今関連記事を読み直して気が付いたけれどa crowd of rebellionも二回目だったのか。前回は爆音の後だったから耳がダメだったらしい。やっぱりフェスって並びも影響しますよね。

さて、Rottengrafftyはベテランだけあって安定しているし、歌が上手い。ツインボーカルが安定しています。改めて見るとエモの影響を受けているんだなぁ。マイケミカルロマンスとかパニックアットザディスコとか、あのあたりのムーブメントを日本人の感性で出力した、という気がしました。

ライブは良かったのだけれどこの後にそなえてここで一度食事休憩。なので観れたのは一部のみ。


Enter Shikari

ここから海外バンドが出てきます。最初はエンターシカリ。ピコリーモだっけな、テクノっぽいサウンドとエモを組み合わせた、と表現される。

ライブを観た感じ、そこまで轟音感はない。むしろサマソニとかフジロックに出てもいいんじゃない(多分実際に出ている)という感じ。UKロック。けっこうNew OrderJoy Division)との連続性も感じました。ポストパンクからつながっているんだろうなぁ、と。あとはところどころマッドチェスター。初期のPrimal Scream

そうしたUKロックの歴史をきちんと踏まえて彼らなりの音を作り出しているんだなぁという印象を受けました。最近はColdplayとかも意識しているのかな。個人的にはめちゃくちゃ盛り上がりはしなかったけれど楽しめたライブ。


The Oral Cigarettes

知らないバンドだったけれど楽しめた。演奏が上手いし曲もいい。MCで「アウェーだけど頑張ります!」みたいなことを話していましたが、いやむしろ今日ってJ-ROCKのアーティストとファン多いんじゃない? 全然(少なくとも音的には)浮いてないけど、と思いました。まぁ、後半になるにつれてメタルファンが増えていたのかもしれない。何しろこの後はIn FlamesTriviumSlipknotですからね。そりゃそれらのファンの前でJ-ROCKやるのはアウェー感はあったのかも。「今日のバンドの中で唯一レギュラーチューニングだと思います!」とも話していて、ああそれはそうかもと思いました。言われてみたら音が軽めかも。軽めというか、中音域にしっかり音がある感じ。

MVを観るとそこまで突出したものは感じないんですが、ライブで観ると華がありました。ライブバンドなんだろう。演奏もかなりまとまっていた。Crystal Lakeは(外人ボーカルだし)別枠として、この日出ていたJ-ROCKのアーティストの中では一番バンドとしてタイト。「バンドライブ!」という感じのライブで楽しめました。


In Flames

いよいよメタルコーナー! まずはスウェーデンからメロデスの雄、インフレイムスです。会場内でインフレイムスのTシャツを結構見かけました。個人的にはインフレイムスってジェスターレイスなんですよね。その後オルタナティブメタルとか変化していったインフレイムスはあまり聞いていない。ややメロデスに回帰した最新作は良かったし、やはり時代時代で変化しているバンドは現役感があります。

改めて聞くと、「デスボイス」や「デスメタル的なエッジ」と「クリーントーンのボーカルライン」を組み合わせたのはIn Flamesが90年代後半~00年代ではかなり尖っていたバンドだったのかも。大きいムーブメントとしてはエモだったのでしょうが、その流れに乗ったIn Flamesはデスメタル的なエッジの強さは本物でしたから。今回出てきたJ-ROCKのバンド達のルーツの一つなのかもしれないなぁと思ったり。

なお、ライブの盛り上がりはピカイチでした。久しぶりに人にもみくちゃになる感覚。


Man With A Mission

何気にライブを観るのは3回目なマンウィス。2019年にダウンロードジャパンとサマソニで観ています。ただ、どちらも目当てではなかったので軽く観た感じ。今回はTriviumを待つ間だったのでフルセット観ました。

狼の被り物をしているわけですが、リードボーカルの口元を映してはいけない、みたいな約束事があるようですね。ステージ横のスクリーンにステージの様子が映し出されるわけですが、口元を映さないために下半身だけと頭上半分だけとかけっこう不自然なアップが多くて面白かったです。あと、さすがにステージ慣れしていて盛り上げ方もこなれている。エンタメとして一流。

この曲は毎回耳に残っています。いい曲ですね。


Trivium

日系人のキイチ・マーフィー率いるTrivium。USロックの中堅どころですね。海外での動員実績はBabymetalと同じくらい(だいたい2000人ぐらいの会場を全米各所で埋められる)。キイチは日本語を話せないのですが、MCはかなり日本語が多めでカタコトながら自分のルーツとしての愛着を感じました。

聞いてみて改めて発見したのが、ハイトーンがほとんどないということ。基本的にクリーントーンはミドルレンジで叫ばないボーカルなんですね。メロディアスだけれどシンガーソングライター的な感じ。叫ぶところはグロールボイスです。ライブを観るのは初だったのですが、意外と強烈さよりは静謐さを感じる内容で驚き。スウェーデンのOpethとかにも近いかもしれない。強烈なグロウルはあるものの、落ち着いているパートは落ち着いている感じです。ちょっと内省的な感じが今どきのUSメタルだなぁ、という感じ。欧州メタル的なメロディアスなギターメロディを導入しているのはAvenged Sevenfoldなどにも通じる今どきのUSメタル、メタルコア+欧州メタルな感じですが、内省感はより強かった。今のUSメタルの一つの進行形を体験できたという印象です。


Slipknot

いよいよSlipknot。ここまで封印されていたステージ演出も全開となり「ヘッドライナー」の貫禄を見せつけます。というか逆にここまでは完全に前座なんだな、という差がある。

初ライブでしたが、とにかくカッコよかった。まず登場人物が多いのでステージが派手です。ミュージカルのような面白さがある。パーカッションやグロウル担当のボーカル、DJなどが常に暴れていてパフォーマーとして活躍しています。メタルサーカスという感じ。

メタル史の進化はビートの進化なんじゃないか、ということを最近考えています。その視点で言うと、70年代のメタルはまだ黎明期でさまざまなスタイルが混在していましたが、80年代に入るとグラムメタル、ヘアメタルを中心にメインストリームに進出。そこではエイトビート、ロックンロールビートが強かった。で、スラッシュメタルはツービート、ハードコア由来のビートが主体になった。90年代に入るとデスメタルやプログレッシブメタルが出てきてそこでは16ビートが主流になる。要は小節をより細かく分解し、複雑化していくわけです。で、Slipknotはさらにビートを細かくした。32ビートというか、ドラム+パーカッション+DJでかなり細かい、トライバルなビートも感じさせる「ビートの強さ」がウリだった。Sepulturaのトライバルビートや、Nine Inch NailsRammsteinのインダストリアルな無機質なビートの強さも影響を与えたのかもしれません。そうした「90年代を通じてビートの細分化、強化」が進んでいったメタルシーンの完成系としてSlipknotが現れた。そんな気がしました。とにかくビートが強靭。

逆に言えば、90年代後半に急激に拡散したエクストリームミュージック(日本では「ラウドロック」とも)を総括するバンドとしてSlipknotは現れた。そう考えると、今回のフェスの出演者もさまざまなエクストリームミュージックの進化系であり、「激しさ、激烈さ」を音楽で追及したバンド達のフェスというコンセプトが見えてきます。参加したバンド達は多かれ少なかれSlipknotにある要素を持っている。考えてみたら「メタル」というのも「激しさ・激烈さ」の一表現形態であり、そうした中で大きい文化の単位(=音楽ジャンルを超えてライフスタイルに結びついたもの)が「ロック(ハードロック含む)」「メタル」「パンク」なわけですが、そうしたものを総括しようとして現れたバンドがSlipknotなのでしょう。そのバンドの成り立ちにふさわしいフェスの陣容、ラインナップ。

ライブ内容は全時代からまんべんなく披露したセットリスト。というか、予想より新作「The End So Far」からの曲は少なかったです。フェス、ということでオールタイムベスト的な選曲。

一つ嬉しかったのは「俺たちのファンはファミリーだ」みたいなMCをしたんですよね。で、ファンも思ったより親密感があった。場内にフレンドリーな雰囲気を感じたし、これってIron Maidenのファンに感じるものと同質のものでした。メタラーって、かすかな「連帯」とか「同じコミュニティ」的な感覚があって、それはメイデンに強く感じていたんですがSlipknotも似たようなファンコミュニティを持っているのだろうなぁと推測。シーンのトップバンドになった故の期待値と行動の結果なのかもしれません。これは個人的にはうれしかった。メイデンファンの親密さ(ひいては”メタラーであること”の連帯感)が少なくとも次の世代には受け継がれているような気がしました。

以上、Knotfest2023に参加して感じたことでした。それでは良いミュージックライフを。

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