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Poppy / I Disagree

YouTube発のシンガーソングライター、Poppyの2020年作。メタル音楽に接近した作風となっており、Babymetalら「Kawaii Metal」に対するUSからのアンサー的な内容になっています。「Kawaii Metal」は音楽的にはメタル+J-POPのアーティスト群ですが、こちらはJ-POPの影響を多少感じさせはするもののあくまでUSのポップスとメタルを組み合わせているのが斬新。なるほどこうなるのかという発見があります。Poppyについて書いた記事も合わせてどうぞ。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Concrete
サイレンとささやき声、6フィートの地下にコンクリートで埋めてくれ
どこかカリカチュアされた作り物じみたツインリードとブラスト
いきなり展開してかなりポップな歌メロ、バックはパンキッシュなリズム
再びリフとささやき声になり、クィーン的なコーラスが入りポップパートへ
毒々しい菓子のようだ
クィーンフォロワーのヴァレンタインやMozartのようなスィートなコーラスパート
から再びブラスト・ブラックメタルっぽいリフを経てポップなサビへ
躁鬱を繰り返すような、ディズニーのダークパレードのような曲
途中でPoppyのライブっぽいコールが入り、いかにもなアメリカンポップスパートへ
そのまま終曲、練りこまれている
★★★★

2.I Disagree
「私はあなたに同意しません」と言いたいのだろうが「ドイシマセン」というちょっと不思議な響きでスタート
ヘヴィなリフから、ややグランジさもあるダウンっぽいポップな歌メロパートへ
ヘヴィなリフを経て、スクリームとささやきのツインボーカルのヴァース
少女の悪夢のような、シリアスなのかキュートなのか
キュートさがかえって不気味さを感じるといえば感じるが、笑えるといえば笑える
ジェリーフィッシュとかあのあたりを思い出すキュートなポップ
と思ったら「ワタシハアナタニドイシマセン」とアジって悲鳴、からのサビ
やっぱり笑いを取りに来ている気もする
★★★★

3.BLOODMONEY
ポップなアカペラからスタート
インダストリアルっぽいリズムと猛烈にゆがんだギター、というか音の塊
メタルと言うよりはヒップホップの音作り
スクエアプッシャーとか、ブルータリズムなノイズ
場面が変わり浮遊感あるバックにラップっぽいボーカルが乗る
冒頭のアカペラのメロディが出てきて、一瞬クリアになった後再び破壊音、カオス
さまざまなノイズがあるが機械音のようなものが印象が強い
ロボットダンスによく合いそう
上で歯切れのよいラップが乗るが、技巧的なライムというよりは一定のリズムでアジっている感じ
ボーカルのテクニック的にはシンプルで、その分言葉は聴きやすい
言葉の反復も多い
★★★☆

4.Anything Like Me
ささやくような歌い方とキーボードの弾き語り
EDM的なリズムが入ってきて、機械音のような衝撃音
ナインインチネイルズ辺りに近いが、ボーカルはガールズポップスな声
エフェクトでピッチを上げられた、小悪魔や魔女的な声がハーモニーで乗る
バックは一定のリズムを刻み、声がエフェクトで表情を変える
場面場面でカオスにリズムが崩れるパートがあり、突然メロディアスなギターソロ
再び冒頭の声とキーボードのパートからアコギが入ってくる
静と動のコントラストが極端で面白い
静のパートが続く、ここからどう行くだろう
いかにもドリーミーでポップなバラードのパートが続く
そこからヘヴィなリズムと跳ねるような声で終わり
★★★☆

5.Fill the Crown
ポップなスタート、ギターとベースとリズムとボーカル
その後ややノイズで音が飛び回るパートからヘヴィなギターリフ
ミドルテンポのニューメタル的なヴァースへ、低音でささやく男声が入る
マリリンマンソン的な、シアトリカルな印象
ポップパートへ、リズムは機械的で安定している
しばらく男声パートが続き、ポップな歌メロパートへ
単体で見るとなんということのない歌メロパートなのだろうが、対比で甘さが際立っている
ふたたび機械が飛び跳ねるようなパートで終わり
★★★

6.Nothing I Need
ドリーミーなポップスでスタート、カーリーレイジェプセンとかにありそう
いつこの世界が壊れるのだろうと期待してしまう
ちょっと強めのシンセ音が入ってきたがメロディアスなまま、世界観は変わらない
2番までそのまま
メロディは悪くないが、本当に単なるポップスか
アコギが入ってきて、キーボードソロっぽい感じで終わり
★★☆

7.Sit / Stay
飛び回る電子音、おもちゃのレーザー銃を乱射しているようだ
ヘヴィなベース音か、打ち込みのドラムとちょっと音圧高めのパートでボーカルが入る
メタルと言うよりは打ち込み、EDM系の音、それにちょっとディストーションサウンドが混じっている印象
サビではインダストリアル的、ギターの存在感が増す
悪魔的なスラッシーなリフを奏でて盛り上がりを見せる
また再びEDM的ちょっとアップテンポなパートに戻る、ポップ
暗い空間を飛んでいく、キーボードの音が装飾音で入る
ふたたびレーザー銃の乱射、スペースサンダーマウンテンのようだ
トライトーンを使った王道の悪魔的なメロディ、サバス的なリフをシンセとEDMサウンドで奏でる
女声の叫び声的なものが重なり、サバト感
高まり唐突に終焉
★★★☆

8.Bite Your Teeth
激しさが増し、曲のタイトルをコール
アップテンポで細かいギターリフに合わせて言葉を吐き出す
ちょっと落ち着いたパートが入った後再びヘヴィパートへ
前数曲の落ち着きから一気に激しさを増した印象
からのドリーミーなパートへ、落差が激しい
またヘヴィなパートに戻り、ミドルテンポでユニゾンの刻み
Goの声が入り、猛烈にヘヴィでスローなパートに、ドゥームの中でもけっこうコアな重さ
重力につぶされたのか、ゆがんだ音が消えて光が差し込むようなキーボードの和音
終曲
★★★★

9.Sick of the Sun
フランジャーが効いたギターにエフェクトの聴いたサイケな声が乗る
アコギが入り、クリアなコーラスになる
メロウなリズムが入ってきて、曲が続く
魅力的な歌メロだが、激しさは薄い
フランジャーが効いたギターがややノイジーだが、激しさはよくてロックバラード程度か
夕陽か、何かゆったりした時間
注ぐような音、夕暮れのビーチサイドだろうか、哀愁がある
ポップだがメロディーや世界観が良い
アカペラを残して終曲
★★★☆

10.Don't Go Outside
アコギのアルペジオから
そこにボーカルが入ってくる
やや不穏なギターのコード進行、メタルバラード的、アナイアレイターのフェニックスライジングとか
リズムが入ってくる、リズムは打ち込み色が強く何かをたたきつける機械的・金属的な音でけっこう刻みが細かい
コード進行は不穏なままで進む、面白いメロディーセンスだ
ややヘヴィなギターが入ってくるが、コード進行がRush的、アレックスライフソンのようなフレーズが入る
そこから曲が展開、別のメロディが入る、同じフレーズを繰り返す
Everything Will Be Okay、と言っているようだ
延々と繰り返す、そこから再びRush的なパートへ、というかRushオマージュかこれは
Farewell To Kingsとかあの頃のRushっぽい
ギターソロはけっこう弾き倒している
2曲目のI Disagreeのメロディが出てくる
コーラスが重なる、ポリフォニー、複数のメロディが展開していく
すべての歌メロが着地して大団円、遠くにケルティックなバグパイプの音が聞こえる
チーン、という鐘の音で終曲、死んだのか
★★★★☆

全体評価
★★★★
「次の展開はどうなるのだろう」というワクワク感がある。
中盤やや中だるみするのが残念だが、終曲ではRush的というか、プログレ・ハード的な曲構成が出てきたのは驚いた
サウンドスタイルとしてメタルを取り入れたポップスにとどまらず、ポップスとしての作曲能力の高さもうかがえる
各ポップスパートの完成度も高い
いつまでメタルサウンドを纏うかは不明だが、次作が楽しみになった
デラックスバージョンの+4曲も後で聞いてみよう

+4 Delux Edition
11.If It Bleeds
かなりインダストリアルなスタート、コード進行はちょっとグラムロック的
韻が新鮮な感じのウィスパーボイスでヴァース、同じ言葉の繰り返し感がない
ブリッジは上昇音階、ニューメタル的か、エフェクターなのか男声のように聞こえる
かわいらしさ、可憐さ、ガールズポップ色が薄い、もうちょっとシリアルでアダルトな女性
途中のアコギパートも声が落ち着いている
ヘヴィパートに戻り終曲
★★★

12.Bleep Bloop
インダストリアル、ナインインチネイルズみたいな感じ
ノイズでゆがみまくった金属音的なバック
ブリッジでは金切り声が入ってくる、サビの最後のObeyの単語が耳に残る
ObeyといえばBMTHの新曲だが偶然か
本編に比べると、表現手法としてのメタルスタイルというか、マリリンマンソン的なデジタルなシアトリカルメタルサウンドが板についてきた
あまり展開せず勢いで終曲
★★★

13.Khaos×4
ややオールドスクールなメタルサウンドから、日本のアイドルポップス的なKhaos×4の掛け声が
日本的なKawaii Metalにもっとも積極した曲かも
ヴァースの歌いまわしはさすがUSポップス的
サビではPoppy節、J-POP感はなく、ジェリーフィッシュとかUSメロディアスロックバンド的
Khaos×4の掛け声が幼い、初期ベビメタ的
★★★★

14.Don't Ask
やや複雑なコード進行のエレキのアルペジオに歌メロが乗る
美しいメロディ
ちょっとノイジーなベースが乗るが、全体としては静か目のサウンド
ドラムも入ってくるが控えめ
低音はベースがしっかり入っている
★★★☆

Delux版含めた全体評価
★★★★
おまけとしては十分な品質、13,14はお得感がある
13.はシングルカットされた1,2に引けを取らない曲
ちょっと声が落ち着き気味だが、質感が変わる、別の展開が見える、までは行かず
アウトトラックかB面曲なのだろう
追加されたシングル曲、という感じではない

リスニング環境
夕方・家・ヘッドホン

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