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Birds of Maya / Valdez

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Birds of Mayaは、フィラデルフィアを拠点とするアメリカのサイケデリック/ガレージロックバンドです。2004年に結成されたこのバンドは、ギタリストのマイク・ポリッツェ、ベーシストのジェイソン・キリンジャー、ドラマーのベン・リーファートで構成されています。このトリオは、ハードロックとブルースロックにルーツを持ったローファイなサウンドを演奏します。本作は4枚目のアルバム。2013年目の3作目以来、8年ぶりのアルバムです。Allmusicで★★★★、Pitchfolkで80。1曲が長めで全6曲ながら42分。ストーナー的な感じなのでしょうか。それでは聞いていきましょう。

活動国:US
ジャンル:Alternative/Indie Rock、Noise-Rock、Neo-Psychedelia
活動年:2004-現在
リリース:2021年6月25日
メンバー:
 Mike Polizze guitarist/singer
 Ben Leaphart drummer
 Jason Killinger bassist

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総合評価 ★★★★☆

シンプルでかっこいいガレージロック、の皮をかぶりつつ、中身はストーナー的で長尺曲がたくさん入っている。ニールヤングのサイケデリックピルにも近い。曲の展開がかなりゆったりしており、テクノのようにリズムやビートなどが一部分ずつ変わっていき、気が付くと全部のパートが入れ替わり、全然違う音像になっているが、テンポやテンションが上がっていくので聞いている方もテンションが上がっていく、体が動き出すような構成。プリミティブでダンサブルなロック。わかりやすさは少なく、どこを切ってもある意味同じように聞こえるが、ずっと浸っていると体が動き出す、酩酊する音楽。ストーナーロック、ヘヴィサイケの徹底した名盤。変にキャッチーさに色気を出さず、やりたいことをやり切っている硬派なアルバムながら長尺曲と短い曲もおさめられてバランスが良い。ただ、娯楽性が強い、耳に残るフックがあるわけではないのでライブハウスで音の渦に飲まれるとか、ある程度の音量で、音に浸る聞き方をしないとよくわからない音楽な気もする。

1.High Fly 08:55 ★★★★

ノイズのフィードバック、ギター、ベース、ジャムセッション前の音作り。ガレージ感がある。ギターがリフを奏で始める。ドラムとベースが入ってくる。ガレージサウンド。エフェクトがかかったボーカル。反復するリフ、ストーナーというか、サイケデリック。ガレージロックのシンプルな音像だが反復による酩酊効果が強い。ボーカルが何かを唱えている。ニールヤングのサイケデリック・ピル(2枚組で延々と反復するガレージロック)も思い出す。5分半過ぎ、一度曲が終わりを迎えるようにテンポダウンする。ところが、今度はその「曲が終わりそうなパート」が反復される。7分過ぎから再び曲が始まる。これはなかなか予想を裏切る構成。「まだやるのかよ」的な。熱狂を生む構図。初期衝動のままに反復するガレージサイケデリックパンク。

2.BFIOU 02:27 ★★★★☆

ブラックサバス的リフが出てくる。ベースも太い音でユニゾン。ただ、テンポは速めで軽快。疾走感もある。リフが展開する。プロトパンク、豪快なハードロック。どこか頼りなく叫ぶボーカル。ガレージのハイウェイスター的な。外見的にアジア系なのかな、あるいはヒスパニックか。

3.Busted Room 09:47 ★★★★☆

前曲から引き続いて展開していく、同じ曲の別のパートかと思う構成。ブルースロックでややヘヴィになる。ヘヴィブルース直系のレトロなハードロック。酩酊する、上昇するギターリフ、展開はかなり間延びしているというかじわじわと引き延ばされている。サウンドマシン、ダンス音楽的な反復。同じパートが延々と繰り返され、展開していく。だんだん反復が呪術的に聞こえてきた。ベースの音だろうか、沼から湧き出るような音がする。ぐつぐつと煮えたぎる鍋のイメージ。ジャムセッション的な響き。ただ、ソロではなく延々とリフを繰り返される。トリオ編成だが、ギターは基本的に二本重ねてある。リズムとリードというか。余韻音、リフの一部分が拡大され、反復され、酩酊感が増す。ストーナー。2~3は一つの流れ。

4.Recessinater 10:43 ★★★★☆

少し奇妙でエスニック的な揺らぐ、コミカルなリフ。Steve Vai的なフレーズというか。最初からギターがリフではなくややメロディアスなリードを奏でる。音を遊ぶような、ジャムセッション的に曲が進行していく。ちょっと思いついたフレーズを心行くまで弾き倒すような。これギターインストなのかな。だんだんジョーサトリアーニのガレージ版みたいにも聞こえてきた。きちんとポップなギターフレーズではある。同じテンション、ノリで延々と引っ張るがリズムやベースがだんだんと遊びが増してくる。わかりやすい展開ではなく、テクノのように少しづつ表情が変化していくが前のパーツも残っている。人力ミニマルテクノというか、ガレージロックのサウンドで曲構成はミニマル的。一つ一つのリフやフレーズはよく練られている。だんだんとテンポアップしていく。気が付くとスタートからはずいぶん表情が変わっている。バタバタと駆け回るドラム。ブルージーなリフ。ギターも弾きまくっている。でもジャケットから青春メロコアみたいなのを想起したら全然違うゴリゴリのストーナー、ヘヴィサイケだなこれ。音に躍動感はあるが、ポップさのようなものはほとんどない。延々と音の塊、轟音ロックンロールが反復される。気が付くとベースも動き回っていて高速ジャズロックのような音像とも言えるな。「気が付くと」というのは、展開が少しづつ変化していくから気が付かないうちにもとのパートがなくなってまったく違う音像に全体的に変わっているが自然につながっていくということ。これで11分弱聞かせきるのは凄い。本能的なダンスミュージック、体が動く感じもある。

5.Front St. 02:47 ★★★★☆

再び音合わせのようなノイズからリフが入ってくる。シンプルでわかりやすいリフ。ブラックサバスのパラノイドのような。リフ一発! ボーカルもそれに乗せるぜ! みたいな。エフェクトのかかった、ディストーションボーカル。

6.Please Come In 07:02 ★★★★☆

ヘヴィなリフとボーカルが絡み合う、プロトパンク的ガレージロック。曲構成は70年代ハードロック的だがリフはカッコいい。なんだろう、MC5を思い切りゆがませたような。そのまま最後まで疾走。最後らしくテンションも高め。

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