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Pyramaze ‎/ Epitaph

Pyramaze(ピラメイズ)は2001年結成、2004年デビューのデンマークのバンドです。音楽的にはパワーメタル。プログメタル的な音像に、目ロディックハードロック(メロハー)クオリティの歌メロが乗る。同じデンマークのプリティメイズにも近いといえば近いかもしれません。本作は2020年発表の6作目。2011年に一度バンドメンバーが離散したようで、4年の活動休止を経て2015年から現ラインナップで活動再開。そこから3枚のアルバムをリリースしています。バンドに残ったのはドラムとキーボードだったよう。確かに、そうして聞くとドラムとキーボードが存在感があります。

1.Epitaph 1:48 ★★★

静謐なピアノの調べ、弦楽器が絡み合い優美で哀切なメロディを奏でる。大作RPGのオープニングのよう。映画音楽ほどの音の厚みはなくゲーム音楽的(チープという意味ではなく、編曲の方向性と音数)。

2.A Stroke Of Magic 5:06 ★★★★☆

オープニングから続けて曲が始まる。刻むようなリフが入ってきて緊迫感をあおるフレーズが乗る。ミドルテンポ。朗々と歌い上げるボーカルだが暑苦しさはあまりない。力強さはあるがグロール感は薄い。そこからキャッチ―なコーラスへ。パワーメタル感。ミドルテンポで荘厳な雰囲気、だんだんと音のレイヤーが厚くなってきて何かが立ち現れる感覚がある。ボーカルも存在感がある。節回しが堂々としている。キャッチ―なコンセプションといった趣もある。コーラスのメロディはフックが効いている。弦楽器が絡んでくる。音の壁が厚くなっていくが整理されていて、過剰すぎない。1曲目の弦楽器が控えめだったのはここでも出てくるからか。あまり大げさにするとその後曲中に出てきたときにほかの音とぶつかる。さりげないが高度なテンポチェンジ、ブレイクを経て再びコーラスへ。勇壮ながら開放感がある良曲。

3.Steal My Crown 5:27 ★★★★☆

シンセのアルペジエイターによるキラキラしたリフ、その背後をディストーションギターの壁が埋める。近未来的な、シンセポップ的な音像とメタルの音像が混じる。歌が始まる。Hakenなど、現代プログレ的なバックの音を切り刻むアレンジ。歌メロがプログレ色が強まった。InsideOut系というか、テンションのかかった音を泳いでいくようなヴァース。からのキャット―なサビへ。これは快楽構造が高い。彷徨うヴァースからのサビに開放感が出る。曲構造も良くできている。間奏部に入ってくるブレイクや展開も凝っているが大仰さはなく、自然に流れていくがフックがある。だんだんとテンションがあがる構造になっている。Communicにも近いな。聞いているうちにだんだんテンションが上がっていく。サビのキャッチ―さはこちらが一段上(逆に、Communicにある「暗黒感」は一段下)。

4.Knights In Shining Armour 5:30 ★★★★☆

メロディアスなリフ、基本、最初の浮き出てくるメロディ、印象的なリフはシンセ(キーボード)が担当している。ギターは間奏部で出てくる感じか。高音の抜け感がキーボードは強調されていて、キラキラしている。ギターはもっと中音域を支えている。サビではツーバスでメロディアスなコーラス。勇壮だがメロスピとはまた違う質感、おお、コーラスの展開が上手い。だんだんと音を重ねていく、コーラスを重ねていくことでクライマックスを高めていく。1番から2番へのつなぎがこのバンドは上手い、コーラスでは音を足すので、そのまま引いてしまうとテンションが下がりかねないがうまく音色を変えたり、ブレイクを挟むことで耳を適度にリセットし、新しい波を作り出してまた次のコーラスに向けて高めていく。こういう手法は(音楽性は違うが)カナダのRushがとにかくうまかった。間奏ではクラシカルなフレーズをシンセが弾き倒す。キーボード主体のバンドなのかな。キーボードとボーカルの煽情力が高く、曲の中でもスポットライトが当たっている。歌メロを何度も繰り返すが、ボーカルの説得力が高い。だんだん熱量を帯びていく。

5.Bird Of Prey 4:48 ★★★★

ブリッジミュートで歯切れよく、空間を埋めていくようなギターリフ。これはメロハー的なスタート。歌メロも悠然とメジャースケールをたどっていく。ただ、ギターの刻みのぶつ切り感はややプログメタル的な音像、エフェクト。歌メロは完全にメロハーだな、この曲。さわやかなままで展開していく、作曲能力が高い。Journey的というかフロンティアレコード的というか、そういう音像。ただ、全体的にはさわやかで清涼な音像ながらギターの刻みはややゴリゴリ感があり、良いスパイスになっている。

6.Your Last Call 4:39 ★★★☆

刻み感のあるリフ、バタバタと手数が多いドラム、その上に載るメロディアスでフックのあるコーラス、彩を添えるピアノ。歌メロの展開が美しい。作曲能力の高さが印象深い。ボーカルのパフォーマンスも全体としてはさわやかに歌っているが必要な場所で熱くシャウトを入れてくる。テクニカルなメロハーといえばDGMもフロンティアレコードに行ってからはその路線だが、こちらはもっとテクニカルとメロディが融合している感じ、テクニックが前面に出てくるシーンはあまりないが、曲構成やブレイクの入れ方、音作りにプログメタル感がある。単曲で見るといい曲だが今までの流れで聞くとやや埋もれ気味か。

7.Particle 4:25 ★★★★

前曲に近いテンポ、コード感ながらヴァースがはいるとより清涼な感じに、空間がそれほど密ではなく、開放感がある。歌メロが前面に出てくる。アルバム中盤はポップ路線なのかな。心地よく流れていくが、編曲、ドラムパターンの変化などは凝っている。この曲はかなりポップに振り切っているな。曲の中盤からはドラマティックになり、ギターの歪みや重みも加味されていく。歌メロはポップながらボーカルパフォーマンスの熱量がメタル的エッジとして機能している。

8.Indestructible 5:25 ★★★★

弦楽器(シンセ)と絡み合うギター。プログ的な音像。ポップ路線から再びこちらに戻ってきたか。彷徨うような、じわじわとテンションを高めるヴァース。そこから緊張感を維持したままコーラスへ。おお、この曲もクオリティが高い。ちょっとクィーンズライク的かも。いろいろと曲構成は凝っているが、あくまで主役は歌であり歌メロを主軸に曲の緩急、ドラマが展開されていく。サビはUSヒットにのるようなメロディというか、EvanessenceとかMeteoraのころのLinkin Park的なところもあり。ただ、バックのアレンジがだいぶ違うので曲全体から受ける印象は違うが。サビのメロディセンスはあのあたりに近い。ちょっとバイキングメタルっぽさもあるけれど。共に歌って盛り上がりそうなサビ。

9.Transcendence 4:17 ★★★★☆

ややケルティックな響きもある弦楽器のフレーズ。勇壮なリズムでバンドが進み、その上で弦楽器が鳴り響く。ボーカルが入ってきて、同じテンションで曲は進む。欧州伝統音楽感がある。おや2番で声が変わった、これはゲストボーカルかな。クレジットを見たらUnleash The ArchersのBrittney Hayes(女性)らしい。切れのあるハイトーン。この人、ボーカル力というかハイトーンの伸びは凄いよなぁ。以前、アルバム(Abyss)をレビューしたけれど、自分のバンドだとこのボーカル力を作曲面で活かしきれていないのが惜しい。この曲は遺憾なく実力を発揮。怒涛の1曲。

10.Final Hour 3:37 ★★★★

変拍子感があるスタート、お、今までにないほどプログ感ある曲だな。けっこう曲のバリエーションがある。アルバム全体の尺が短くなりがちな昨今のアルバムにしては1時間越えの大作。まぁ、プログ・メタルではあまりアルバム時間短縮のトレンドは起きていないか。じっくりと攻める感じが多いからね。それにしてもこれだけ多彩なアイデアを曲に詰め込む、そしてこれだけの曲を作り出せるというのは凄い。途中、ギターソロで一瞬ボヘミアンラプソディーオマージュ。やや唐突だなぁ笑。どちらかといえばこの曲はドリームシアター的な音像なのだけれど。

11.World Foregone 4:49 ★★★☆

イントロに戻ったかのような、勇壮なオーケストレーション。このキーボーディストの特徴なんだな、音の厚みを出すより高音が強めのキラキラした音を出す。音の厚みより煌めき感。バンドが入ってきてメロディがじっくり展開していく。ミドルテンポ。パワーメタル感。

12.The Time Traveller 12:04 ★★★★☆

大曲、けっこう勢いよくスタート、アップテンポ。いきなりドラマで言えばクライマックス感がある。大曲だからと言ってじわじわと行くわけではないようだ。曲展開が変わる。サーガ的、ドラムの手数が多い。シンバルの音がカンカンと響く。また場面が変わる、やや声がグロール気味になる、やや中東的、オリエンタルな音階、緊迫感を高めた後疾走パートへ、ドラムが乱打しながら疾走していく。テンポが少し緩み、オーケストレーションが入ってくる。曲のテンションはずっと高い。反復するフレーズをピアノが奏でる。曲の場面展開がけっこう目まぐるしいがずっと勇壮でアップテンポ感、ハイテンションが維持される。Soilworkの「a whisp of the atlantic」も16分越えの大曲だがこんな感じでずっとテンション高めだった。近い構造。こちらの方が一つ一つのパートの単位は細かい、場面展開が早い。一通り嵐が過ぎた後、6分ごろから少し静謐というか、音圧が下がるパート。ボーカルが歌い上げる。雷鳴、ピアノのフレーズ。弦楽器の響き。物語性が強い。神話的な世界観。再び盛り上がり、ドラマを語り切って去っていく。

総合評価 ★★★★☆

やや評価に迷う。人によっては★5つの完成度だと思う。どの曲もアイデアが盛り込まれていてクオリティが高い、名曲ぞろい。ただ、個人的には心をわしづかみにされる曲・瞬間が無かった。とはいえ、それはたぶん「全曲クオリティが高い」でせいもある。たとえば「つまらない曲」に挟まれた「いい曲」ってすごくカタルシスがあるから。だから、このアルバムの曲をどれか抜き出して、ふと町で流れていたら「おお、かっこいい!」と思うポテンシャルはある。何度か聞いているうちに癖になるかもしれない。

あと、テンションが上がり切るところがちょっと個人的なツボとは違った。もっと突き抜けた、ハチャメチャな瞬間があるとか、ねじ伏せるような、ある意味笑ってしまうようなパワーまでは感じなかった。それは「洗練」でもあるので、個人的嗜好だな。あとはメロディセンスも。

余談だけれど同郷のプリティ・メイズも「いいバンドだなぁ」とは思うのだけれど、そこまでファンではないんだよね。歌メロの好みがちょっと違う。

ただ、クオリティ、プロダクション、作曲能力、どれをとってもバランスが取れた名盤だとは思うし、「メロディアスでエッジもある最近のメタルのおススメある?」と聞かれたら胸を張って推薦できる1枚ではある。

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