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Trivium / What The Dead Men Say

USメタル新世代の雄、Trivium。メタル音楽のフォーマットは70年代のハードロックを経て80年代のN.W.O.B.H.M、80年代後半からのスラッシュメタル、インダストリアルメタル、プログレメタル、90年代のメロデス、メタルコア、グランジあたりで基本的なフォーマットは出そろい、あとは洗練させていく、極端にしていく、あるいは異質なものと組み合わせて拡張していく、といった段階に入ったと思っていますが、「洗練」で勝負している印象のあるバンドです。メインストリームで勝負できるポップさやアリーナロック的な印象的な歌メロもありつつ、アグレッションやメタルの語法を洗練させています。先日のLamb of Godにも近い方向性ですが、LoGはアグレッションに振り切っているのに対してこちらはメロディアスな側面もあります。どちらも方向性の違いはあれど過去のメタルのレガシーを活用しながら新しい地平を切り開こうとする意欲作です。LoGのレビューはこちら。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.IX
ギターアルペジオと不穏なベース音からスタート、静かな始まり
微かなアコギ、緊張感は高い
一瞬の静謐の後、ヘヴィなリズムが入ってくる
同じフレーズをザクザクした単音ギターがなぞる
かなり硬質な音
ひっかくようなディストーションギター、A7Xと音の質感が似ているかも
ややハードコアというか、そこまでヘヴィではないが手数の多いドラム
イントロ
★★

2.What The Dead Men Say
間髪入れず次の曲へ
ザクザクしたギターリフに、かなり高速で手数が多いドラム
刻みはラムオブゴッドほどではない
雄々しいがメロディアスなボーカル
ブリッジでグロール、サビは歌い上げる
ドラムは軽快だが手数が多く、ところどころでマシンガンリズムはギターとユニゾン
A7XのStagesに近い
欧州メタルの影響を感じるがパンク・ハードコア的な直情性もある
コーラスへ
間奏ではストップ&ゴーのリズム
リズムの止めと疾走が交互に来る
ドラムは手数が多く、ツーバスもたたきまくるがヘヴィさよりハードコア由来の音作り
ギターソロ、ツインリードが入る
コーラスへ
欧州的な薫りがあるUSメタル
コーラスの後半でボーカルがスクリームに変化
★★★☆

3.Catastrophist
一定の刻みに展開するメロディアスなギターリフ
エフェクトの入った中音域のボーカルが入ってくる
声がクリアになり、リズムが勢いずく
転調しブリッジ、バッキングが北欧メロデス的
開放感のあるサビへ、リンキンパーク的な歌メロ
ドラムは時々タメたりする、手数は多い
曲の表情はかなり変わる、再びヴァースへ
やはりリズムの緩急はうまい
聞いていて心地よくはある
ブリッジではコード展開とリズムが変わり、コーラスで戻る
イマドキのUSメタル的な歌メロ、サビのメロディーだけ取ればカントリー的
間奏で刻みが高速化する、勢いよく刻む
ボーカルが強いスクリームに
ギターソロというより構築されたツインリード、絡み合うギター
ツービートで疾走、各種メタルのレガシーをうまく取り入れている印象
ラムオブゴッドよりはボーカルがクリアで歌メロがメロディアスでドラムが軽快
リフが展開していく
ブリッジから、音圧が引いてボーカルが前に
そのままコーラスへ
★★★☆

4.Amongst The Shadows & The Stones
スクリームからスタートし激走ドラム
疾走した後ミドルテンポに、かなり手数が多い
ドリームシアターのようなヴァース、拍子の変化がうまい
ブリッジはスクリーム、激しさが増してきた
コーラスはヘヴィロック、スクリーム
メロディアスなヴァースに戻る
コードが上がり、スクリーム
ハードコアアジテーション風味のコーラス
間奏でリズムチェンジ、場面転換
マシンガンリズムが出てくる
切り込んでくるツインリード、これは心地よい
本格的に泣く前に一瞬歌に戻り、終わりと思わせて再び間奏へ
ツインリードが絡み合う短いソロを経て再びブリッジ
手数の多いドラムで場面転換し、再びツインリードが絡み合う間奏へ
ギターはかなりメロディアスで口ずさめるメロディを弾く、アイアンメイデン的
疾走パートに入り、メロディアスなボーカルが乗る
★★★★

5.Bleed into Me
最初はメロディアスなボーカルから
歌い上げるボーカルとヘヴィなドラム、ベースとメロディアスなギター
ミドルテンポだがドラムは軽快に、やや跳ねている
ブリッジではハーモニーが入る
コーラスはスクリーム
ヴァースに戻る、じわじわ熱を帯びてくる
一気に開放感を出したり、極端な場面展開がないが、全体として有機的に曲が進行していく
リズムパターンは多彩で、ベース、ギターもフレーズごとに表情を変える
曲のパーツが多い
展開したブリッジからコーラスへ
★★★☆

6.The Defiant
勢いのある始まり、疾走感がある
スクリーム、ツービートで走る、スラッシュ的、ギターの刻みやリフもスラッシュ的だがメロディアス
リンキンなどのヒップホップの影響が少ないニューメタル、ニューコア的
サビはアリーナロック的、開放感がある、シンガロング系
合いの手でスクリームが入る
走るリズム、ボーカル
ツインリードが入る、欧州的な語法だがUSの感じ、どこか乾燥してサラッとしている
リズムパターンが表情豊かに変わる
カッコいい
コーラスはスクリーム系だがバッキングのコードの展開感が強い、メロディもそこそこある
勢いを保ったまま終わり
★★★★☆

7.Sickness Unto You
切迫した歌からスタート、スクリームになり疾走パートへ
かなりアップテンポでバンドが疾走する
音圧を抜いたところにボーカルが入りヴァース
一丸となって疾走するパートへ
スラッシュの語法、西海岸スラッシュに欧州的なツインリードや北欧メロデス的なコード進行を加えて
ややメロディアスなボーカルを加えている
メロディはアメリカ的
ギターのフレーズは欧州的、ブルースの影響が直接は見えない
クラシック音楽から来る技巧的な音程移動
スクリームパートから低音強めでマシンガンリフ、リズムの緩急が強い
チンチンとシンバルが鳴り響く
刻みが勢いづいてくる、バンドが暖まってきた
疾走からのヘヴィパート、かと思いきやちょっと変わったダンサブルなリズム
ちょっとオリエンタルなギターリフにリズムが変化する
そこからのツービートスラッシュ
単音トレモロリフにスクリーム
後ろは爆走リズムのパートがあり、コーラスへ
展開力が強い、ドラマ性がある曲、6分台
★★★★☆

8.Scattering The Ashes
入りからしてギターがメロディアス、後半になるにつれてどんどん煽情的なメロディーが出てくる
後半盛り上がるタイプのアルバムか
テンションが高くメロディーもメロウで美しい、欧州的
ベース、ドラムとボーカルだけでヴァースを少し流し、ギターが戻ってくる
ドラマ性がある、ベースだけになった部分は歌メロが際立ちポップさがある
アップテンポでギターはメロディアス
ドラムがさまざまなパターンをたたく
間奏で一休み
ボーカルに高音ハーモニー、そこからギターソロ
ツインリードで美しいメロディ
ヴァースが煽情的、コーラスもバッキングのギターがメロデス的
ルーツを感じるがどこのルーツだろう、カントリーか
★★★★★

9.Bending The Arc To Fear
かなり展開するギターリフが曲を引っ張り、ユニゾンでドラムが入ってくる
かなりアップテンポ、アルバム中盤からずっとテンションが高い、畳みかけてくる
ボーカルがブリッジでスクリームし、コーラスへ
コーラスはメロディアスとスクリームの掛け合い
その後スクリームパート、ヘヴィで全身揺らすリズムだがラップメタル的な感触は薄い
あくまでオーソドックスなメタルの語法の中で展開するが、
リズムの軽やかさは明らかにそうしたリズム主体の音楽も通過している
ところどころヒップホップやEDM的なリズムを感じさせるが、はっきりは出てこない
イメージはハードコア・パンク的な疾走感、初期スラッシュの空気感を今のプロダクションと技術で見せている
独特の空気感がある
Judas Priestを聴いた時なぜかロンドンの路地裏を感じたが
このバンドも似た、どこか東京とは違う「場所」を感じる
★★★★☆

10.The Ones We Leave Behind
疾走する始まる、勢いもありメロディアスなボーカル
後半の盛り上がりがすごい
テンションがとにかく高い
歌メロも陳腐さはない
バッドレリジョンとか、エピタフ系をもっとメタリックにした感じ
歌メロは基本はメロコアなのかもしれない
ギターはかなり刻みが強くメロディアス、ツインリードも適宜入る
構成力が高い
サビでバッキングにメロディが入る、メロデスとはまた違う感じ
間奏の刻み→ツインリードでのメロディ→コード進行→刻みの感じが北欧メロデス感
ギターソロ、メロディアスなギターリフと絡み合う
スリリング
ドラムの音がフレッシュ
コーラスが入る、ボーカルのパフォーマンスが熱を帯びる
ツインリードで高音でメロディアスに鳴り響く
★★★★☆

全体評価
★★★★★
後半になるにつれて盛り上がる構成が見事
キラーチューンもある
ちょっとポップすぎる(展開が読める)場面もあるが、
曲構成の巧みさと緩急のうまさで陳腐さがない
欲を言えば、アルバムの最後はもう少し壮大な仕掛けが欲しかった気がするが
サラッと「良い曲」を並べて終わる潔さも魅力かも
独自のメロディーセンスはありつつ
過去のメタルのエッジや表現手法をうまく総括し、洗練させて提示させている感じもある
名盤

リスニング環境
夜・家・ヘッドホン

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