Vektor JAPAN TOUR 2023 @ Space Odd 2023.11.3
Vektor、10年ぶりの来日公演に行ってきました。ビートルズに始まりVektorで締める一日。
Vektorは2009年にデビューしたアメリカ、フィラデルフィアのテクニカルスラッシュメタルバンド。前身バンドのロクリアンの結成が2002年なのでそこから数えると活動歴20年を超える中堅のバンドです。中心人物はギタリスト兼ボーカルのデビッド・ディサント。ツインギター体制でもう一人のギタリストがエリック・ネルソン。この二人のギタリストがバンドの核です。2016年に一度解散状態に陥るものの2020年にデビッドとエリックが中心となり、ベースとドラムの2名のメンバーを加えて再始動。今回が10年ぶりの再来日となりました。
RYM(Rate Your Music)のメタルカテゴリのランキング上位常連なんですよ。今まで3枚のアルバムをリリースしていますがどれもやけに評価が高い。
Black Future (2009) 3.83
Outer Isolation (2011) 3.72
Terminal Redux (2016) 3.85
と恐ろしく高得点。RYMで3.5以上って滅多にないんですよ。それもレビュー数が100とか(つまり熱狂的なファンが高得点をつけているだけ)ではなく平均5000件投票されています。もちろん、「テクニカルスラッシュメタル」というアンダーグラウンドなサブジャンルではありますが、その中では広く「このバンドは凄い」と認められているバンドだということ。
RYMの得点ってちょっと見方が難しくて、よく売れるバンドって賛否両論が起きがちだから点数が低いんですよね。最近のMetallicaとか軒並み2点台だし。あとNuMetal系やメタルコアは全般的に低め。逆にブラックメタルやテクニカルスラッシュがやけに高めに出ます。点数だけでなくレビュー件数も重要。件数が少なくて点数も低いアルバムは「ああ、あまりうまくかみ合わなかったんだな」という感じ。件数が多くて点数が低いアルバムは「話題作で賛否両論あるアルバムなんだな」ぐらいの見方。で、件数が数千あって点数も高いアルバムは「これはこのジャンルでは名盤とされているんだな」という感覚で使えます。そんな感じであまり知らないバンドを掘り下げるのに使っているんですが、Vektorはまさにそれで出会ったバンド。
音楽性はメガデスやアナイアレイター、ヴォイヴォドなど80年代スラッシュの中でもテクニカルで複雑なリフを生み出したバンドをさらに深化させたような複雑怪奇なリフ構成に初期ラッシュ(Rush)のような長尺で複雑な曲展開を組み合わせたバンド。基本的にギターリフとリズムの緩急が聴きどころで、ボーカルは合いの手というか感情の起伏のサポートにすぎない立ち位置です。アルバムジャケットは宇宙・SFモチーフが多く、コズミックな世界観。テクニカルデスとかテクニカルスラッシュの人たちってけっこう宇宙モチーフ好きですよね。ブラッドインカンテーションとかもそうだし。
会場は渋谷のSpace Odd。何度か来ていますがメタル系では初。なんとなく打ち込みとかクラブ系のハコのイメージがあったんですが(今まで来たライブがそっち系だったので)メタルもやるんですよね。
実際のライブ、いやー、演奏力が高かった。
「これぞメタルライブ」という素晴らしいライブ。前の方にいたので久しぶりにモッシュピットに巻き込まれました。180センチ100キロみたいな人が数人いてその人たちがグルグル回っている。みんな笑顔で楽しかったです。
非常に複雑な曲展開なのだけれど基本的にずっと爽快なんですよね。そんなに小難しくないというか。曲構成とか演奏はめちゃくちゃ複雑なんですけど。リズムも小刻みだからトランスミュージックというか、酩酊してくる。そこでさらにモッシュピットで攪拌されるものだからこちらまでグルグルしました。こんなにシンプルに楽しんだのはSuffocationのライブ以来かもなぁ。
複雑なのにリズムがヨタらないんですよ。だから快楽性が高い。どんどん加速していく感覚というか、高速に分割された音節を聞いているうちに時間が引き延ばされていく、時間感覚が飛んでいく。まさにコズミックなライブでした。
この日のセトリ。
1.Charging the Void (Terminal Redux)
2.Fast Paced Society (Outer Isolation)
3.Oblivion (Black Future)
4.Testrastructural Minds (Outer Isolation)
5.Psychotropia (Terminal Redux)
6.Pillar of Sand (Terminal Redux)
7.Collapse (Terminal Redux)
8.Recharging the Void (Terminal Redux)
Encore:
9.Black Future (Black Future)
10.Asteroid (Black Future)
11/2と11/3の二日連続ライブでしたが、セットリストは大幅に違ったとのこと。2日は1st(Black Future)、2nd(Outer Isolation)中心だったようです。3日は10曲中5曲が3rd(Terminal Redux)から。CollapseからRecharging the Voidの流れを再現してくれたのは嬉しかったです。これ、それぞれ9分半と13分以上ある曲でアルバムの最後を飾る2曲。これだけの大曲を演奏しきるすさまじさを感じました。
いやー、こういうバンドはライブで観ないとなかなか楽しさが伝わらないバンドですね。動画で見ても正直ステージアクションは地味だし(演奏に集中してるしギミックもない)、音源だけでも聞く環境によりますが迫力には欠ける。ライブで体で浴びる、モッシュで身体的共時性を強く感じる、その中で生まれてくる陽性の快感というか発散されるもの。素晴らしいライブでした。
メタルライブって本当に良いものですね。
それでは良いミュージックライフを。
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