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The Flaming Lips / American Head

アメリカン・サイケデリックロックのベテラン、フレイミングリップスの2020年作。相変わらずドリーミーでサイケデリックな音世界。ソフトブレティンのRace for the PrizeやヨシミのDo You Realize??ような一聴して耳を惹く突出したポップアンセムはないものの、ベテランの職人芸と確立された個性ある音世界を楽しめる良盤。カラフルながらフォーキーで静謐な音作りで、後半に行くにつれ世界観が深まります。女性カントリーシンガーのKacey Musgravesをゲストに迎えた12.God and the Policemanはドリーミーで美しく、アルバムの流れも含めて個人的なハイライトでした。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Will You Return / When You Come Down
鳴り響く鐘の音のようなベース、から口笛と微かなギター
ドリーミーでメロウなボーカルが入ってきて曲名のフレーズを繰り返す
羽ばたきのような、オルゴールのようなベルの音が響く
ベースが入ってきて、ピアノと共にビートルズ的な歌メロへ
フレイミングリップスならではのドリーミーな世界
寂しげなメロディーが展開していく
不協和音的な上昇音からアコギが入り、サイケフォークな音世界へ
ビートルズというよりジョージハリスン的か
ドラム音はピンクフロイドを彷彿させる、落ち着いたドラミング
ボーカルがどこまでも上がっていき高音でささやく
スライドギターの上昇音が浮遊感を出している
桃色の流れの中をゆっくりと泳いでいるかのようだ
浮遊感あるソロ、上昇音と下降音階の繰り返しでフェードアウト
★★★☆

2.Watching the Lightbugs Glow
しずかなリズムから女性のハミング、スキャット
少女と言うよりは大人の女性か
ガレージ的なギターが入ってくる
この辺りの空間の開け方はギルモア期のフロイト的
ただ、メロディーセンスはもっとアメリカのインディーポップ、インディーロックの香り
SEで空港のアナウンスのような声
なぜ空港を連想したのだろう、何か旅立ちを連想させる音だからだ
ブレス音でフェードアウト
★★★

3.Flowers of Neptune 6
静かなアコギ主体のトラック、ドラムも控えめに入っている
ボーカルが入ってくる、優しい歌い方だがメロディの高低は激しい
エフェクトがかかった声が入ってくる、アイアムザウォルラスのような声
ボーカルに対して管楽器が答える
リズムが入ってくる
サイケ時代のビートルズを連想させるが、もっとカラッとしている
ドラッグの影響はあまり感じないというか、冷徹な理性がある
やさしさと孤独感がある
反復しながら下降してくるクリシェ
アコギとハミングの最初の世界観に戻る
何かが来て立ち去って行った、午睡の夢だろうか
★★★☆

4.Dinosaurs on the Mountain
おもちゃのような電子音のアルペジオ
ボーカルが入り、ワンフレーズ歌ったらアコギとリズムが入ってくる
ドラムもややたどたどしさがある、全体的にポップな玩具感がある
ボーカルだけが悲哀のある生身の人間
エフェクトが付き、フランジャー的なコーラス、ホーメイのような響きが微かに入ってくる
遠い草原のような景色を描いているのだろうか
水中のようなエフェクトがかかったギターソロ
歌が入り、涼しげなギター音がフレーズを奏でる
ゆがんだエレキが入ってくる、曲名にあるダイナソーだろうか
再びホーメイのような、風の音のようにも聞こえる高音が鳴り響くパートへ
★★★☆

5.At the Movies on Quaaludes
落ち着いたピアノとボーカル、キメにだけ出てくるドラム
すごく遅いマーチのようなリズムだ
スライドギターの上昇音、下降音
スライドギターはこのバンドらしさ
サイケなフレーズ、メインボーカルに対してエフェクトがかったハーモニーの複声が追いかける
ディストーションのかかったギターが入ってくる
★★★

6.Mother I've Taken LSD
LSDとタイトルに出てきた、その名の通りサイケな感じ
アルバム全体が今回のテーマはサイケなのだろうか
もともとそういうバンドだが、今回は70年代サイケ色が強い
弦楽器、オーケストラが入ってくる
上昇する歌メロ、じっくりと展開する
今までの曲は曲調が比較的似ている
★★★

7.Brother Eye
電子音か一定のリズムで鳴り響く
その中で歌メロが展開していく
悪くないメロディだが、緩急が声のエフェクト差が主で
ドラムパターンも少し展開する(ビートアップ)するものの
全体的には変化が少ない
静謐で落ち着いた、寂寥とした世界観
電子音はだんだん上がっていく
ドラムも大人しめの音だが四つ打ちへ
★★★

8.You n Me Sellin' Weed
ギターとボーカルで歌いだし、フォーキーでフックのある歌いだし
ホワイトノイズが少しかかったドラムが出てくる
サイケな音が各種出てくる
登場人物が増える感じだが、全体的な音数は少な目
間奏はエレキインスト的な展開に
急にラジオがチューンダウンするように間奏がしぼみ、再びヴァースへ
効果音多めで牛の鳴き声や何かが墜落するような音、女声の合いの手
ハミングが入り、電子音のパルスのようなリズムが入ってくる
どこかと通信しようとしているのか
夢の中か
急にスピードが上がる、夢の中をボートで漕ぎ出す
スピードアップしたままコーラスへ
さらにスピードが上がる
滝つぼに向かっているのか、出口なのか
フェードアウトしていく
サイレンの音
★★★★

9.Mother Please Don't Be Sad
ピアノのコード引きから管楽器
かなり強めの弦楽器の音が入りボーカルが入ってくる
ボーカルにエフェクトかかったボーカルがユニゾンで重なる
弦楽器が入ってくる、音が強め
強い意志を感じさせる、ボーカルラインとユニゾン
弦楽器が力強さを増してドラムイン
ギターソロへつながる、ディストーションでシンプルなメロディー
再び歌が入る、オルガンのような音でアルペジオ
心地よい音世界、犬の鳴き声が入る
名バラード
弦楽器が効いている
★★★★☆

10.When We Die When We're High
前の曲から間髪いれずつながってこの曲へ
一定のリズムをドラムが打ちつつベースがドローンのように鳴り響く
何かを問いかけるようなキーボードフレーズ
ドラムが少しづつ手数を増やしている
行進しているかのようだ
キーボードフレーズもだんだんと長くなっていく、反復
ワウギターが入ってくる
同じフレーズをディレイで8回(2小節)繰り返す
Tublar Bellsのような、繰り返される音のレイヤーが増えていき曲の表情が変わっていく
★★★

11.Assasins of Youth
ハーモニーのアカペラ、ややオリエンタルな響きから
勢いの良いアコギとボーカルへ
動物の鳴き声のようなキーボードからベース音へ
再びアコギと声だけになりコードとメロディが展開する
電子音、左右でピンポンしあうような
クラブ的な四つ打ちが遠くから近づいてくる
音に弾力のある機械的なバスドラ
ハーモニーあるコーラスがメロディを奏でる
再び展開しコーラスへ
クリック音のような電子音が入りフレーズが反復される
間奏か、リズムが変わり、トレモロがかかったキーボードフレーズ
何か大きなものが起き上がるようなベース音
再びボーカルが入り、ドリーミーな世界へ
完結
★★★★

12.God and the Policeman
ゲスト参加した歌、タイトルからして警官の黒人銃殺の歌だろうか
神と警察官があなたを見ている
車が止まるSE、何かの話し声
美しい和音だがどこか不安な響きのあるコード進行
ピアノと男声、女声で入れ替わる歌
ハミング
踊るベースがところどころで入る
交互に男女が歌い続ける
和音が安定していく、開放感のある和音でコーラスが終了
★★★★☆

13.My Religion Is You
明るい、光のような音
エフェクトのかかった、明るいアコギ音の上で陽性のボーカルメロディ
低音が入ってくる、響く低音
少しノイズがかったリズムが入ってくる
かなり響く、リバーブの深いドラムが響く
信号音のようなノイズが鳴り続ける
歌メロは同じ世界観のままで進むがバッキングはだいぶ変わる
ギターソロが入り、再び明るい世界観に戻る
ピアノ、アコギ、リズム、歌で、明るい世界観
再び低い低音、和音はキレイだが音色はやや不穏
逡巡や不安を表しているかのような断続的な電子音、通信パケットなのか
私の宗教はあなた、のフレーズを連呼
美しいピアノの和音で落ち着く
★★★★

全体評価
★★★★
前半がかなりドリーミーで、メロディーは良いのだけれど起伏が少ない
心地よいので眠くなるが、8曲目ぐらいからメロディーの煽情度が上がる
全体的にいろいろな音色は入っているが音のふり幅も増えていく
9と10はつながっている。9~11で組曲なのだろうか。
12はキラーチューンだと思う。
ちょっと盛り上がるまでが長かったが、後半だけなら+☆

リスニング環境
昼・家・ヘッドホン

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