見出し画像

GREEN LUNG / Black Harvest

Green Lungは2017年からロンドンで活動しているUKのドゥーム、ストーナーバンドです。TIDAL(使っているストリーミングサービス)で「Luciferを聴いた人におススメ」で出てきました。本作が2枚目のアルバムの様子。こうした関連性レコメンドがTIDALはしっかりしているんですよね。一番精度が高い気が個人的にはしています。1曲目を聞いてみたらカッコいいし、各種メディアで絶賛気味なので聞いてみます。

活動国:UK
ジャンル:ストーナー、ドゥーム、ハードロック
活動年:2017-
リリース:2021年10月22日
メンバー:
 Vox: Tom Templar
 Guitar: Scott Black
 Bass: Joseph Ghast
 Drums: Matt Wiseman
 Organ: John Wright

総合評価 ★★★★★

UKハードロック好きにはたまらない作品。ユーライアヒープ、ブラックサバス、クィーン、ディープパープル、ジェスロタルあたりの要素をうまくミックスしながら今風のフックがある歌メロも入れている。まだ若手のバンドであり、懐古主義に終わらず同時代のUKロックシーンとつながるフレッシュな感覚がある。曲によってはCreeperなどとも通じる感覚も感じた。オープニングから前半の掴みがとにかく強い。惜しむらくは中盤~後半はテンションは保たれるもののキラーチューンがなかったことだが、どの曲もしっかり盛り上げて終わるのは流石。あとは歌メロがもう少し練られればヒットチャートにも顔を出してくれるんじゃないかという期待感もある。盛り上がっているUK、ロンドンのロックシーンの中ではカルトバンドとされているようだが、まさにアンダーグラウンド、カルトなエネルギーも感じつつ、かつてのNWOBHMのような人を巻き込む力も感じる作品。分類はストーナーとされているがUS的なストーンド、酩酊する感覚は薄い。大陸的な解放感、デザートロック的な乾燥した感じより、もっとUK的で曲展開もしっかりある作りこまれたハードロックな感じ。しかしロンドンの若手バンドでこうした音像は珍しい。このクオリティのバンドがいくつか出てきたらシーンが生まれると思う。

1.The Harrowing 02:20 ★★★★☆

ドローン音とまじないのような声が入ってくる、呪術的なスタート。かなりストーナー、酩酊感を感じさせる。そこからツインリードというか、壁のようなギターとハモンドオルガンのメロディがなだれ込んでくる。文句なしにカッコいいオープニング。ユーライアヒープをギターオーケストレーションでさらに分厚くした感じ。オープニングトラックとしては屈指のカッコよさ。

2.Old Gods 03:59 ★★★★★

そのまま1曲目へなだれ込む。ややスロウ、ミドルテンポなビート。こってりと展開していく。ボーカルはやや弱めでストーナー的。しっかりとフックがあるコーラスが出てくる。ベタなペンタトニックスケールなのだがギターとオルガン、ベース、ドラムのユニゾンでとにかく勢いを持って迫ってくる。ユーライアヒープ、ディープパープル、ブラックサバスあたりを強く想起させるが、一番ヒープに近いかも。音像がハキハキしている。ベースもブリブリしているし、ドラムも叩きまくっていて生々しい。ライブ感があるというか臨場感があるサウンド。一瞬静寂のパートを経て転調してサビへ。これは盛り上がる。1曲目にしてすでに大団円感すら感じる。

3.Leaders of the Blind 04:42 ★★★★★

こちらもスロウ、ミドルテンポでヘヴィ目なリフ、、、と思っていたらボーカルが入ってくるところでテンポアップ。予想を(いい意味で)裏切ってくる。緩急がついている。UKロックのレガシーを感じさせる素晴らしい曲。「ロンドンでもっともカルトなバンド」みたいな評価をどこかのメディアでされていたが、確かにそういわれてもあながち嘘とも感じないサウンド。現在のシーンと断絶し、レトロに籠っているわけではなく、きちんと今のロンドンのシーンでも通用する(でもアンダーグラウンド)音な気がする。歌メロはしっかりフックがあるし、音にはフレッシュな迫力があり、レイドバックした感覚はない。壮大なコーラスからオルガンソロ、そしてさらに大仰なコーラスへ。Creeperとかに近い感覚も少しあるな。これはオープニングから圧が高い。

4.Reaper's Scythe 04:24 ★★★★★

少し掠れた感じもするギターオーケストレーションからヘヴィなリフへ。サバス的なドゥーミーなリフだがテンポはアップテンポ。勢いがある。おお、ドラムが展開した。カッコいい。ブリッジ~コーラスではややサイケなコード展開を見せるが、音像がハキハキしている。いちいちUKロック好き、70年代ハードロック好きのツボを押してくる各パートに加え、現役感のあるキャッチーな歌メロ。お、ちょっとロブハルフォード的な金切り声まで出てきた。

5.Graveyard Sun 05:42 ★★★★☆

雪崩のような前曲が去り、少し一休みか。Zeppのアコースティックバラードのようなスタート。ブリティッシュトラッド的なアコギのつま弾きとボーカル。途中からバンドが入ってきてヘヴィロックへ。途中、クィーンからなだれ込むヘヴィロックへ、70年代ハードロックへのオマージュ感があるものの猛烈に「何かのバンドに似ている」というより、そうしたものを組み合わせて独自の音像にしている。ギターサウンドはなんとなくブライアンメイを感じさせるなぁ。クィーン要素はリードギターだけなんだけれど。こうしたブリティッシュトラッドの取り入れ方はジェスロタルとかにも通じる。

6.Black Harvest 02:40 ★★★★

ちょっと三線のような、海を感じさせるサウンド。日本的というよりバイキング的というべきか。民族楽器的な弦楽器のフレーズをそのままギターオーケストレーションが引き継ぐ。だんだん音が重なってきてテンションが高まっていく。こういうサウンドレイヤーの重ね方で盛り上げていくのがとても上手い。こういうのは流石UKだなぁ。古くはKinksとかでも感じるのだけれど、舞台劇でどんどんセットが増えていくというか、「お城が築かれていく」というか。構築美。小曲だが次の曲のイントロではなくしっかり終わる。

7.Upon the Altar 04:38 ★★★★☆

サバス的な曲。うねるようなドゥーミーなリフ、ボーカルが入ってくる。隙間が多い断続的なリズムとちょっと爬虫類的なボーカル。とてもサバス的。そこにギターオーケストレーションが入ってくる。これ、ツインリードじゃなくてギターとオルガンのユニゾンなのかな。ギターは1人なんだな。ギターとベースもユニゾンしているが、楽器隊のハーモニーのつけ方、互いの絡み合い方がうまい。後半に向けて盛り上がっていく。ボーカルもコーラスの分厚さが増していく。

8.You Bear the Mark 04:13 ★★★★☆

ギターリフからスタート。ツインリードで絡み合い曲が展開していく。ボーカルが入ってくる。この曲はプログレっぽいな。ジェネシスに近い。目まぐるしく展開するが一つ一つは英国的なフレーズ。ストーナー、と分類されているが言うほどストーナーな感じはないな。サイケ感、ドゥーム感はあるが音像はハキハキしていて酩酊感は少ない。やはりUKだからな。USの大陸的な、開放感のあるカラッとした酩酊感はない。ハードロックなギターリフからのキーボードソロ~ギターソロへ。ドラマティックなソロ回し。

9.Doomsayer 05:27 ★★★★☆

タイトルの通り、かなりドゥーミーな曲。へヴィなリフとテンポ。ボーカルラインはちょっとThunderっぽい、王道のUKハードロック。Free直系のブルージーなハードロックと言える。展開がゆっくりで長尺、時間をかけて盛り上がっていく。中盤やや間延び感もあるが、間奏あたりからの盛り上がり方は流石。どの曲も後半に向けてしっかりとドラマが構築される。

10.Born to a Dying World 05:10 ★★★★☆

オルガンとボーカル。終着点、物語の終わりを感じさせる音像。ファンタジックな雰囲気がある曲。と思っていたら途中からバンドが入ってきて盛り上がる。ただ、ドゥーミーな感じはなくもっと陽性の、光を感じさせる盛り上がり方。緩急がダイナミック。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?