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前川多仁個展「Shangri-La」

仲間内では彼の事を「前川殿下」と呼びます。由来はパタリロに似ていたから、だそうです。世代的に僕は全くパタリロが分からないのですが、違和感なく彼のことを「殿下」と呼びます。

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前川多仁「君は神使」

なぜならば彼の突き進む作品制作そのものが、工芸とアートの境目に揺さぶりをかけ、その王道のど真ん中最先端を直走っているからです。彼はまさに「殿下」と呼ばれるに相応しい作品を世に送り出しています。(むしろ「工芸」と「アート」に境目を作ること自体がナンセンスである、と僕は考えていますが・・・)

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前川多仁「虚空蔵菩薩」

揺さぶるべき境目はそれだけでなく「アナログ」と「デジタル」も実はシームレスに存在しています。デジタル技術を用いた制作も、テクノロジーによる身体能力の拡張と捉えればハンマーや刃物のような「アナログ」の道具と変わりありません。

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前川多仁「大日如来」

前川殿下は伝統的な染色技法の延長上で、最先端のデジタル技術を駆使したプリントで作品制作を行っています。ご本人の感覚としてはコンピュータで身体を拡張して所謂「アナログ」な感覚でいるとの事。もちろん手縫いやビス留め等の手仕事もあり、一つの作品を仕上げるにあたりアナログとデジタルのグレーゾーンを常に往来している。

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前川多仁「Magic board」

そして作風に通底する感覚は「キッチュ」。その導入に関しては殿下のHPをご参考ください。
https://kazbot.jimdofree.com/article/

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「延帝部亜(メタルマスターVer.)」

キッチュな事柄としてフォーカスされるキーワードは「サイケ」と「メタル」、そして今回新たに表出したのが「ヤンキー文化」と「禅」。

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前川多仁「色即是空」

サイケデリックカルチャーやメタル文化のキッチュさはここで触れるには僕の個人的愛情が深すぎて大きく脱線するので省略する。(聞きたい方は白白庵へ時間に余裕を持って来てください。)

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前川多仁「走死走愛」

新機軸の慧眼として、サンスクリットに漢字をあてがい、意味の拡がりを獲得した般若心経や禅語とヤンキー文化の当て字に共通するコンテクストを見出し極彩色のイメージに統一する。それらが「Shangri-La」=桃源郷というイメージの中に大きく回収されていく。この響きだけでは荒技のようですが、実際の作品群では鮮やかに、そしてこの絢爛豪華な空間に包まれると不思議と落ち着いた穏やかな空気に気づくはずです。

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前川多仁「明珠在掌」

9年前の3.11、白白庵の前身である「neutron tokyo」にて個展を開催していたのは他ならぬ前川殿下でした。今回は新型コロナが世界を騒がせています。あらゆる領域の境目に突き破る前川殿下は、時代の境目に居合わせてしまう運命にあるのでしょうか。何にせよこの前川多仁個展が、そして白白庵が皆様の心に安寧をもたらす事ができればと願うばかりです。

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前川多仁「祷」

前川多仁が織りなすこの桃源郷をどうかお見逃しなく。

作品撮影:矢島愛子(白白庵/Teaist)

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燃え上がれ、命。
湧き上がれ、魂。

白白庵 企画
染織作家・前川 多仁 個展 「Shangri-La」

http://www.pakupakuan.jp/exhibition/shangrila.html

日程 2020年3月7日(土)~18日(水)
   *木曜定休

時間 11:00~20:00

会場 白白庵(ぱくぱくあん)
〒106-0072 東京都港区南青山二丁目17-14
TEL&FAX 03-3402-3021

info@pakupakuan.jp

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燃え上がれ、命。
湧き上がれ、魂。

ロウケツ染めなど伝統的な染織技法の延長線上で、最先端のデジタル技術を駆使したプリント。
常に更新されるべき「工芸」の最前線で疾走する鬼才が、待望の新作個展を開催。
圧倒的な色彩と緻密なレイヤー(層)の重なりによって生まれる眩いばかりの作品世界。
生命のエネルギーほとばしる桃源郷(シャングリラ)の出現に、ご期待ください!

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【出展作家】 Artist

前川 多仁
染織作家 / 京都府在住
1974 兵庫県篠山市生まれ
1997 大阪芸術大学 芸術学部工芸学科 染織コース 卒業
1997-98 大阪芸術大学 芸術学部工芸学科 染織コース 研究生
2008 大阪芸術大学大学院 博士課程(後期) 修士課程飛び級により入学
2011 大阪芸術大学 博士課程後期(後期)修了 博士(芸術)の授与
2011-現在 大阪芸術大学 通信教育部 非常勤講師
2014-19 武庫川女子大学 生活美学研究所 助手
https://kazbot.jimdofree.com/

【企画・ディレクション】Direction

石橋 圭吾 (白白庵) ISHIBASHI Keigo (PAKUPAKUAN)

http://www.pakupakuan.jp/exhibition/shangrila.html


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