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知られざるレンズを訪ねて(2)——「不遇のビオゴン、その実力」

Leica M10 × Carl Zeiss C Biogon T* 4.5/21 ZM

こんにちは、氏家(@yasu42)です。

作例レビュー企画「知られざるレンズを訪ねて」、前回の「中判デジタルとHELIAR classicの相性は?」はお楽しみいただけたでしょうか。

今回取り上げるのは「Carl Zeiss C Biogon T* 4.5/21 ZM」。
2007年に発売された超広角レンズです。

これまた情報がない。作例も少ない。
それもそのはず。
21mm、開放4.5という地味なスペックで、しかもお値段は併売されていた「Carl Zeiss Biogon T* 2.8/21 ZM」とほとんど変わりません。

21mmの開放2.8
21mmの開放4.5

値段が変わらないならどちらを買うか、という話ですね。
売れ行きは控えめにいっていまいちだった、と聞いたことがあります。

フォトヨドバシにページはありますが、あっさりしたもの。
Biogonという、半ば神話化されたシリーズにあって不遇の一本と言えます。

そのうえで私は言いたい。
「Carl Zeiss C Biogon T* 4.5/21 ZM」はコシナツァイス屈指の隠れ名レンズだと。

論より証拠、まずは写真をご覧ください。

いかがでしょう。
隅から隅までビシビシに写っています。歪まず、曲がらず、ひたすらに「真っ直ぐなものが真っ直ぐに写る」描写。

かといって目が痛くなるわけではない。今時の高コントラストな超広角レンズとは明らかに写りが違います。

以下、その実力を見ていきましょう。

基本スペック

発売:2007年
マウント:ZMマウント(ライカMマウント互換)
口径比:1:4.5
最小絞り:F22
最短撮影距離:0.5m(距離計連動は0.7mまで)
フィルター径:46mm

こうやってみると本当に控え目なスペックです。
店頭に並んでいてもほとんどの人が気にも留めないでしょう。
しかしこのレンズ、中身が独特です。

独ツァイスのデータシートより

オリジナル・ビオゴンとは異なるものの、見事な対象型の構成。
これはややマニア向けの話になりますが、対称型の広角レンズは「写りこそ良いが、デジタルではとにかく使いにくい」という特徴があります。

「C Biogon」のCはClassicの意味。
本レンズの場合はまさに"Classic"な構成・使い勝手ということでしょう。

2007年といえば既にデジタルカメラが主流。
その中であえてこのレンズを出したことに、コシナツァイスの哲学を感じます。

作例


以下、作例です。

力強い写りです。
繰り返しますが、真っ直ぐなものが真っ直ぐに写るのは素晴らしい。

とにかく歪みません。もちろん、電子補正などなし。素の写りでこれです。
建物を撮る人にはたまらないでしょうね。

超広角特有の奥行きのある描写ですが、不思議と自然な感じがあります。
「いかにも広角レンズ!」という絵作りではありません。
対象型レンズ、特にBiogon全般の傾向ではありますが、本レンズでは特に顕著のように感じます。

陰影の描き分けが素晴らしい。
特にアンダー目に撮った時の翳りは目を見張るものがあります。

周辺部の色かぶりは強めです。シチュエーションによってはかなり目立つ。
テレセントリック性を考慮していない以上、やむを得ないところでしょう。
現像ソフトで容易に補正できますが、可能ならモノクロームでの使用がいいかもしれません。

少し妙な言い方ですが、艶のある写りです。
M10のセンサー特性もあって、黒の階調が美しいですね。

開放での周辺光量落ちはかなりのもの。
個人的にはドラマチックで好ましいです。
ちょっと絞れば改善するので、苦手な方も安心してください。


海外でのレビューを置きながら結語を。

「さすがビオゴン」
そんな言葉が自然と浮かびました。

完全無欠のレンズではありません。
色かぶり、マニュアルフォーカスのみ、後玉が出っ張っていてミラーレスへの装着がこわい、いくつもの欠点があります。
高性能の超広角が溢れる現在、無理をして使う理由はないかもしれません。

しかし、それを補って余りある魅力があります。
超広角レンズ数あれど、「写りの色気」という点で傑出しています。
「よく写るけど、個性がある」レンズが好きならマストではないでしょうか。

生産終了済みなのが残念。
やや稀少ではありますが、探して見つからないというほどでもありません。
以前より価格上昇傾向なので、気になる方は早めに探してみてください。

では本日はこのあたりで。
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