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もう少し生まれるのが遅かったら、僕はもう少し真っ当に生きれたかもしれない

そいつは突然現れた、いや突然というわけではなく、きっと両親は協議の末にパソコンを家に導入したんだろうけど。

私が物心ついたときにはまだワープロが主流であった。
というか手書きが主流であったと思う。
昔の会社の資料を引っ張り出すと、出てくるのは手書きの報告書やプレゼン資料ばかりだからね。

当時はまだ少数派の共働き世帯で、母は夜中にワープロをカタカタと叩いていたのをよく覚えている。
今でも家の棚の中にはフロッピーが20枚くらいまとめて置かれているが、こいつらはもう二度と使われることはないんだろうなと思うとなんとなく寂しい。

印刷用紙は感熱紙が主流だったので、小学生だった私は冬場にみかん汁で「あぶり出し」などをやっていた。
きっと今の子供は「あぶり出し」と聞いても何のことだろうと思うに違いない。

そんな我が家にもパソコンがやってきた。
Windows 98
当時はそこそこ新しいOSを備えたパソコンだ。
CPUまでは覚えていないがメモリ128MB、HDD4GBと10年前のスマホでも勝てるレベルの容量である。

はっきり言おう、ポンコツだったと。
電源を入れてから3分くらい待ってたと思う、カップラーメンができるくらいの時間だ、そうしてようやく立ち上がる。

読み込みも遅い、特に画像が合ったときは大変だ。

ページを開く、トイレに行ってうんこをする、戻ってくると画像の表示が終わっているかどうか、そんなレベルだった。

はじめてインターネットを使ったときのことはよく覚えている。確か学校の課題で外国のことを調べてくるとかだったと思う。そこで私は父に頼んでパソコンを使って調べ物をさせてもらったのだ。

私が初めて検索したのはシンガポールだった。ローマ字入力などできないので、一生懸命ひらがなを探しながら1文字ずつ入力していった。

検索エンジンが開くのを待ち、検索結果が出るのを待ち、更にホームページが開くのを待つのだ。今となっては耐えられないが、当時はそんなもんだった。
特にシンガポールのことを書いているホームページは重かった、マーライオンとかの画像が3枚位あったからね。

なんだかんだパソコンを立ち上げて、調べて、印刷してってやるだけで30分位かかったと思う。
はっきりいって図書館で調べたほうが早い、検索して一番上のページをポチッとして、そっから印刷するだけで30分かかるのだ。

それでも調べたいことを打ち込んで、その結果が出てくるというのは衝撃的だった。

だって誰にも聞かずに調べられたから。

昔は自分が好きなものに辿り着くのがとても手間だった、必ず何かを経由してなければいけなかった。
それは人だったり、本だったり、テレビだったりしたけど、経由した末に得たものが好みじゃないこともよくある話だった。

インターネットが現れたことで情報にたどり着くのはとても簡単になった。今じゃ事前に情報を調べてなくても暇な日にググれば、今日ある面白そうなイベントに簡単に行けるようになった。

その代わり直接的になりすぎた。1調べるために10調べて得た9の無駄な知識を得る必要がなくなった。ワゴンのクソゲーを買うことも、源氏シリーズを盗もうとすることも、ワザップで騙されることもなくなった。

情報が溢れ答えが簡単にわかるようになった。好みのことだけで時間を潰せるようになった。エロサイトを見るために頭使う必要もなくなった。
溢れ出して陳腐化してしまった。

もう少し遅く生まれていたならきっと違った人生を送ったに違いない。

今のネット環境が当たり前だったら、きっと僕はこんなにどハマりしなかっただろう。

きっと溢れ出る情報に飽きてリアルに向かっただろう。

今じゃ身近すぎて殆どの人が覚えてもいないんだろうな
#はじめてのインターネット

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