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半神マーウイの偉業 その3。

さて、前2回の続きでこれが最後になるが、個人的に半神マーウイが好きで彼の話を集めたことがある。ハワイの神々の中では火の女神ペレが一番人気だろうが、私個人的には半神マーウイに愛着を感じているのだ。

さて今回のいたずらは……

火を見つけた話

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ある日、カウポー(ハレアカラー山の南側の地)での出来事。マーウイは兄たちと一緒に漁に出ていた時のこと、彼がふと島のほうを見てみると、小さな火が燃えているのが見えました。
彼らはみんなびっくりです。彼らが住んでいたハレアカラー山はすでに火山活動を止めて噴煙を上げなくなっていたために、火にとても不自由していて果物や木の根、貝や魚も生の状態で食べるしかなかったからです。
久しぶりにおいしい料理が食べられると期待して、魚をつかまえながらも全速力で岸に向かいました。岸にたどり着いたマーウイは火の見えた方向、たなびく煙の上がる場所に向かって全速力で走り出しました。
ところがそこでマーウイが目にしたものは、数羽のアラエ鳥がせっせと火を消しているところでしたが、マーウイがその場にたどり着くやいなや、大慌てで飛び去っていってしまいました。
アラエ鳥たちは火を起こす秘策を知っていたのです。彼らは何日もの間、アラエ鳥たちを見張っていましたが、一向に火を起こす気配はありません。
やがて彼らもあきらめて再び漁に出ます。ところが海の上から見ると、しっかり火が燃えて煙も立っているではありませんか! 大急ぎで島に戻ると、奴らはさっさと火を消して去っていく、ということが何回も繰り返されました。
業を煮やしたマーウイは、兄さんたちに「漁に出ずに島に残って奴らを見張るよ」と言い、兄たちだけで漁に出ます。ところが敵も彼らの人数をしっかりと勘定しており、「今日は漁に出ている人数がひとり少ないぞ」と言いながら、決して火を起こそうとしません。
マーウイは知恵を巡らし、タパの生地を束ねて変わり身の人形を作り、漁に出る兄たちのカヌーに乗せたのです。「今日は全員海に出たようだ」と、とうとうアラエ鳥たちは騙され、火を起こそうとしたところ、待っていました、とばかりにマーウイが姿を現しました。
頭に血が上っていたマーウイは、火の起こし方を見つけるという目的をすっかり忘れ、にっくきアラエ鳥の首を絞め、殺してしまおうと力を込めます。アラエは必死に「ここで死んだら火を起こす秘策は手に入らないぞ!」と叫びます。マーウイは我に返り、命を助けてやる代わりに火の起こし方を教えろと言いました。
アラエ鳥はマーウイに、水草の茎をこすり合わせて火を起こすのだ、と教え、彼は一生懸命水草の茎をこすり合わせますが、水がしたたり落ちるだけです。アラエ鳥は、やり方が違う、葦の茎も一緒に混ぜてこすり合わせるんだ、と教えます。マーウイがやってみると、今度は茎がポキポキと折れるばかり……。
からかわれていることに気づいたマーウイは怒り心頭。半殺しになるまで首を絞めます。アラエ鳥は苦しそうに「実は若木の中に火を隠したんだ」と言います。マーウイは一生懸命探しますが、そんなところに火があるわけがありません。再び怒り心頭で首を絞めるマーウイに、アラエはついに「乾燥した木を使うんだ」と白状しました。
マーウイはとうとう煙が出る木を見つけました。「よし。しかしもうひとつ、こすっておこないといけないものがある」そう言って彼はアラエ鳥の頭に木をこすりつけ、羽が全部抜けて肉が見えるくらいまで痛めつけました。
こうしてハワイの人たちは火起こす術を手に入れたわけですが、この時以来、ハワイのアラエ鳥は禿頭になってしまったということです。

ちなみに、このアラエ鳥という鳥だが、下の写真を見て欲しい。

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マーウイが頭をこすりつけたためか、頭が真っ赤なのだ。

ハワイの神話や伝説を知らべてみると、とても楽しい。
神話は割とえげつないものも多々あるが、伝説の類はためになるもの、教訓めいたものが多い。ハワイの神話や伝説はネットで検索するとたくさん出てくると思うが、微妙に少しずつ違うというのも多い。
どれが正しいのか?と日本人は正解を求めがちだが、ハワイアン的には「どれも正しい」と誰もが口々に言う。人によって語り口が違ったり、解釈が違ったり、それでいいじゃないか、と彼らはおおらかに言う。
私もそう感じる。日本の教育上、正解はひとつ、と無意識に教えられてきているが、大筋さえ合っていれば、自分なりの解釈、表現方法があるほうがおもしろい。
ハワイアンの心の器の大きさはこういうところにも表れているのだ。

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