見出し画像

私の原点。すべてはここから始まった。聖地『ケアイヴァ・ヘイアウ』。

オアフ島パールハーバーが見渡せる高台の地域アイエア。この地にひとつのヘイアウがある。それが「ケアイヴァ・ヘイアウ(Keaiwa Heiau)」だ。
ここはまだ私が奥深いハワイのことなど何ひとつ知らない頃、ひとりのハワイアンのロミロミ師に連れてこられた場所だ。

画像1

すべてはここから始まった。
まさかその時には今の自分など到底想像できるはずもなく、これほどハワイの奥深さを知ることになるなんて、ましてやハワイのパワースポットの本を出版することになるなんて思ってもいなかった。しかし紛れもなく、ここが私の原点の場所であり、運命を変えたパワースポットである。

2008年10月。干支が一周するくらい昔の話だ。
前回ハワイに来たのはいつのことだろう?そんなことを考えていた5、6年ぶりのハワイ旅行だった。
前年末、私は会社員を辞めた。正確に言えば、辞めさせられた。勤めていた会社の業績が傾き、リストラされたのだ。その数か月後には、会社そのものもなくなったと聞いた。
その後、運良くよく一緒に仕事をしていたカメラマンの紹介で2008年の年頭からフリーライターとして仕事を始めることができた。今は彼とは疎遠になってしまったが、本当に良くしてもらった。今でもとても感謝している。
その年の秋、仕事もひと段落ついて時間的にも自分でコントロールできるようになった。突然ふと、またハワイに行ってみたくなったのだ。

4泊6日のハワイ旅行。以前だったらガイドブックとにらめっこしながら、どこへいこう、何をしよう、と計画を立てていたに違いない。
でもこの時のハワイ旅行は違っていた。
ノープランで行ってみよう、朝起きてふと閃いたままに動いてみよう、そう思ったのだ。

画像2

ハワイには何度か来ているけど、ダイビングとワイキキやアラモアナでショッピングするばかりで、何もハワイらしいことってやってないな……。
2日目の朝、プールサイドで寝ているとこんな想いが頭をよぎった。

さて何をしよう? と「ハワイらしいこと」を頭の中で探してみた。
思いついた答えは「ロミロミ」。ロミロミ=オイルを使ったハワイのマッサージ。当時はその程度の知識しかなかった。

画像3

ネットで検索してロミロミを施術してくれるハワイアンの人を探した。
私は割とこだわりが強い性格で、日本人や白人の施術者じゃなく、ハワイアンを探していた。そしてたどり着いたひとりのロミロミ師。その人に施術してもらおうとコンタクトを取ったのだ。

ロミロミ師の名前は、アンクル・デレック。大きな体にゴツい手。まさにハワイアンといった感じの人だった。
彼のロミロミは正直言って、痛い。痛いなんて軽い表現じゃ表現できないほどの激痛。まぁそれだけ私の体の状態が悪かったということなのだが、とにかく痛かった。
期待していた癒されるロミロミではなかった。でも効いた。痛みは次第に消えていき、体はとても楽になっていった。彼は私にこう言っていた。

「俺が自分の意思で施術しているんじゃない。上からメッセージが降りてきて、ただ俺はそのメッセージを受け取って君の体の悪いところをヒーリングしているだけなんだよ。俺は単なるパイプ役でしかないんだ」

ロミロミを単なるハワイのマッサージだと思っていた私にとって、彼の言葉はとても衝撃的だった。昔からハワイに伝わる伝統的なヒーリング「ロミロミ」というのがこんなにもスピリチュアルなものだなんて思ってもいなかったからだ。

ハワイって昔からこんなことをやっていたのか、そう思うとハワイが急にスピリチュアルな土地に思えてきた。観光客には知りえない奥深さがあるということを感じたのだ。

汗だくになりながら、アンクルは私の体を長時間にわたって施術してくれた。3時間か、4時間か、それくらいの時間だったと思う。まさにハワイの秘儀を体感した貴重な時間だった。

一通り施術が終わったかと思ったら、アンクルはこんなことを言ってきた。

「君はヘイアウへ行ったことがあるかい?」

当時は「ヘイアウ」などという言葉も知らなかった私の頭の中は「??」。

「ヘイ……なんですか?」

「君はヘイアウも知らないのかい? 日本の神社のようなもので昔からハワイアンが祈りを捧げる場所だよ。今から君を連れて行ってそこでエネルギーを整えてあげよう」

ロミロミの施術は終わったはずだが、アンクルに言われるままに連れて行かれた。彼は車でアイエアにあるヘイアウまで連れて行ってくれた。ワイキキしか知らなかった私にとって、とても長い時間移動したように感じた。
いったいここはどこなんだろう? 大丈夫なんだろうか? そんな不安がよぎるが、流れに任せることにした。

もう日が傾きつつある頃、私は生まれて初めてハワイのヘイアウという場所へたどり着いた。それが「ケアイヴァ・ヘイアウ」だった。
ただ石が積み上げらえているだけの囲いあり、古代の遺跡を思わせた。

画像4

「ここはヒーリングのヘイアウなんだ」アンクルは言った。

「中に入る時には自分の名前と、どこから来たのかを心の中で伝えるんだ。中に入る時につまづいて転んだりしたら歓迎されていないことになるから、充分に注意して、この地に敬意を払って入るようにして欲しい」

そんなこと言われたら転んじゃいそうだと思いながら、一歩また一歩と、恐る恐るヘイアウに足を踏み入れた。
周りを見渡すと背の高い木の林が広がっている。鳥がさえずり、風が気持ちいい。雲が流れ、太陽の光はいい感じに優しい。
なんかとても懐かしい感じのする場所だなと、その時に感じた想いは今でも忘れてはいない。

画像5

ヘイアウの真ん中にサークル状に石が並べられている。
アンクルはこのサークルの真ん中に立つように、と私に伝えた。
その間にアンクルはでっかい笹の葉のような葉を採ってきた。

「これはティーリーフって言うんだ」
「ティーリーフ? お茶の葉ですか?」
「違う。TEAじゃなくて、TIで、ティーリーフだ。これはハワイでは神聖な葉として聖地には必ずあるものなんだ。魔除けの葉だよ」

こんなことをアンクルは教えてくれた。
彼は私をサークルの真ん中に立たせて、ティーリーフを一枚胸の前に持って目を閉じるように言い、何やら呪文? 念仏?(チャントです!)を唱えながら、わたしの頭をつかみ、前後左右に揺さぶった。

画像6

次第に彼の手が熱くなってくるのを感じた。
同時に私は頭がスッキリしてくるのを感じていた。
どれくらいの時間だったんだろう? 2分? 3分? それとも5分? 10分? 時間の感覚が曖昧で、まったくわからなくなった。なんだか時空を超えてしまった感覚がした。この場所は私にとって、とても心地良く感じられる場所だった。

これはわたしにとっての初めてのヘイアウ体験だった。
ハワイにも神社があるなんて知らなかった。からだや心が病んでしまった時、人々が癒しを求めてやってくる場所、それがケアイヴァヘイアウだ。

ヘイアウから帰る時、雲の割れ目から金色の光がシャワーのように海に降り注いでいた。パールハーバーが金色に輝いていた。
アンクルも「凄いぞ!」と声を上げるほど素晴らしい景色だった。

画像7

この時の体験が今の私の原点だ。
きっかけを与えてくれたアンクル・デレックはもうこの世にはいない。
彼は2011年10月24日、心臓発作で還らぬ人となってしまった。
ロミロミを受けた時にいただいたホヌ(ウミガメ)のネックレスは今も大切な宝物として持っている。

画像8

何気ないひとつの好奇心が道を開くことがある。そこには未来を変えるような大きなきっかけやチャンスが潜んでいることだってある。
ハワイの神様は、いつどこで微笑んでくれて、導いてくれるかわからない。神様が運命のカギをどこに隠しているかなんて誰にもわからないのだ。
だからこそ、ワクワクしながら未知のものに飛び込んでいくこと、諦めずに動くこと、一歩でもいいから前に進むことが大切なのだ。

自分の運命を変えるのは他の誰かじゃない。きっかけは誰かが与えてくれたとしても、カギを拾って扉を開くのは自分自身なのだ。
自然はきっと人の運命の扉を開けるカギをどこかに隠している。そのカギがどこにあるかなんてわからない。でも必ず神様はヒントを与えてくれるし、導いてくれるのだと信じている。

計画を綿密に立てることも時には必要かもしれない。でもそれを無視して、ふとした直観に従って動いてみてもいいと思うのだ。もしかしたら、それが運命のカギを手にするきっかけになるかも知れない。

アンクル・デレック。運命を変えるきっかけを与えてくれた人。
ケアイヴァ・ヘイアウ。ここは私の運命を変えたハワイの聖地。
私にとっては最高のパワースポット。運命のカギを拾った場所。

12年経った今でもあの2008年10月の出来事を思い出すことがある。
きっと、死ぬまで忘れない。いや、きっと来世も。

もし気に入っていただけたましたらサポートお願い致します。クリエイターとしてさらに上を目指して頑張ります!感謝!!