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【騎手】フィリップ・ミナリク元騎手の訃報: 彼の人生が教えてくれた大切なこと

先日、世界的にも有名な元ドイツリーディング騎手フィリップ・ミナリクが死去したという悲しいニュースが入ってきました。

死因は自殺ということで、重度のうつ病を患っていたことが原因という情報もあるようですね。
今回はミナリク元騎手についてと彼を死へ追いやってしまった原因と考えられている心の病について書いていきたいと思います。


フィリップ・ミナリクの現役時代

ずっとドイツ人だと思っていたので、(当時の)チェコスロバキア・プラハ出身だったことに驚きましたが、騎手だった父の影響を受けて1991年にチェコで騎手となり、1996年に父のアドバイスもあってドイツ競馬へ移籍。

そして2005年には年間110勝を挙げて初のリーディングに輝きます。
その後も2011年, 16年、17年とリーディングを獲得。G1を14勝とまさにドイツを代表するジョッキーと言っても過言ではなさそうです。

「ドイツでの成績はよくわからない」と言う方には、以前記事にもしましたサリオス・サラキア、サリエラなどの母サロミナを独オークス制覇に導いた騎手と言うことも強調しておきたいと思います。

JRAでは2014年のジャパンCにアイヴァンホウへ騎乗するために初来日。
その際に日本の競馬に感動したようで、下記のコメントを残しております。

パドックでは意外に静かでシーンとしていて、パドックから地下馬道に入って、また出た時の音のギャップは忘れられません。ヘリコプターで取材もしているし、ファンの皆さんがプログラムを使って音を出していて、サッカーのワールドカップのような雰囲気で凄く感動しました。あれは人生で忘れられない出来事でした。最終コーナーではまるで音の壁があるかのような声援を感じられました。素晴らしかったです。

それから日本での騎乗を待望して、いち早く日本で騎乗をしていたアンドレアシュ・シュタルケ経由のコネクションから2018年に短期騎手免許を取得。
落馬事故で引退した20年まで毎年のように来日し、JRAでは通算29勝と日本でも馴染みのある騎手の1人であることは周知の通りでございます。

大怪我から引退、そしてリハビリ生活

2020年の日本での短期騎乗が終了し、ドイツへの帰国後にマンハイム競馬場でレース中の落馬事故。
一時は昏睡状態となるほどの重症で、約1ヶ月半後に意識を取り戻したものの、そこからは苦しいリハビリ生活が始まります。

回復には最低でも1年かかることと、脚だけでなく脳にもダメージを負ったこともあって、騎手への復帰は叶わずに現役引退。

脳への外傷からか、騎手人生を急に断たれたショックか、それとも両方が影響したのか…詳細はわからないですが、身体が回復しアンバサダーとして競馬の魅力を伝えていたタイミングでうつ病を発症。
そのまま重症化していき、最後は自殺という悲しい結果となってしまいました。

「誰にでも起こり得る」からこそ「寄り添う」重要性

騎手という過酷な仕事を何十年と続けてこれたのだから、心は人一倍強かったのだと思います。
そして「彼の怒った姿を見たことがない」というストーリーがあるぐらい明るい良いキャラだったからこそ、筆者も含め周囲はこの急な訃報を受け入れるのが難しい状況ではないでしょうか。

ただ誰しも多かれ少なかれ「弱さ」を抱えており、強ければ強い人ほどその弱さを見せずに生きているもの。
それが奥さんや家族ですらさえも見抜けない程「強いもの」だったから、対処が遅れてしまって最悪な結果になってしまったのではないか…と勝手ながらも筆者は想像をした次第です。

筆者も中学のクラスメイト、高校のチームメイトという距離の近い友人をそれぞれ自殺で失った経験があり、それから大事にしていることとして、まずはどんなに些細なことでもサインを見逃さないこと。これに尽きると考えております。

要するに「今のアクションが最悪のケースを引き起こすかもしれない」という教習所や現場で習う“危険予知&ヒヤリハット“のようなものでしょうか。
人によってサインは大小様々で気づくのは簡単ではないのですが、最低限、自分や自分の経験ベースで危ないと感じたら声をかけること。

職場や友人の話を聞く限り、これをできない人が世の中に多いと感じます。
病死はある種原因がわかっているので、時間とともに消化できるようになりますが、自殺の場合(遺書の有無にかかわらず)筆者も数十年が経った今でも思い出して「何かできたのではないか」と思うほど消化が難しいです。

だって永遠にその原因がわからないので…
人はそれぞれの性格や立場があるので、「声をかけること」も決して簡単ではないのは重々理解しているつもりですが、失ってしまったら取り返しがつかないもの。そしてアクションを起こさなかった自分を責ることになります。

それを身をもって知ったら、いじめだって否が応でも止める側の立場になれると思うのですが…
わかっていても経験がないと中々アクションに至らないというのも、社会で生きていく中で薄々と感じておりますので、これからも何かを機にこういった記事を書いていきたいと思います。

最後になりますが、ミナリクさん
長い騎手人生、そしてリハビリ生活、お疲れ様でした。
天国でも貴方の人柄の良さで、たくさんの人を喜ばしてくれることを願っております。そしてゆっくり休んでくださいね。R.I.P.

今回も最後まで読んでいただきましてありがとうございます。

自分が大事にするものを皆さんへ共有できればと思っております。共感して頂ける方からサポートをいただけますと大変ありがたいです。