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養う女、養われる男日記(5)

養う女

2022/11/14

ギブアンドテイクは第三者の介入できないものである。


夏に、外科矯正の手術をした。
嚙み合わせを治すために上下の顎の骨をぶったぎって動かしてしまおう!という大胆不敵な手術で、しかも保険適用というのだから驚きだ。
その手術の後はしばらく顔にさわれないというので、長く通っているエステに数か月いっていなかった。もはや施術以上に、ギャルで破天荒で波長の合うお姉さんが最高に癒しで、大好きな場所である。
そのお姉さんに、4か月ぶりに会ってきた。
お姉さんにTとの関係を報告すると、養うことを即断した私の行動力を「春田さんカリスマじゃあん、決断力鬼」とべた褒めしてくれた。包容力と優しさが鬼。
その会話の中で、Tとは「ギブアンドテイク」が成立している、と言うと、「出た、ギブアンドテイク」と何やら嫌そうにしている。
どうしたのかと聞けば、最近付き合いだした彼氏と、ひと悶着あったのだという。

お姉さんが友だちと食事する際に、彼も同席することになった。
お姉さんと友だちが久しぶりの再会を喜び、彼の紹介なんかもひとわたり終えたところで、友だちが、お姉さんへの手土産を取り出した。
かわいいキャンドルホルダーとアロマキャンドルのセットか何かで、お姉さんはもちろん喜んでお礼を言い、にこにこ受け取った。
そしてそのまま楽しく食事に入ろうとしたところで、彼が憤然と、「こういうのって俺我慢できないんだよな」と言い出したらしい。
「俺は人間と人間の付き合いはギブアンドテイクだと思ってるんだよね。この場でお返し渡せないんなら、LINEギフトとかで返した方がいいよ」
お姉さんは、また会った時にエステをしてあげることでお返しにしたり、何がしかまた会った時に手土産を、と思っていたものだからびっくりした。
当然友だちも、ただ久しぶりに会う友だちへ手土産、と持ってきたところに、ギブアンドテイクは断固その場で成立させるべき、と主張するギブアンドテイク原理主義者が突然登場したものだから、それはそれはドン引きしていたらしい。
結果気まずい晩になったらしく、お姉さんは、人それぞれの価値観だからほっておいてほしいとガツンと言ったらしいのだけれど、それ以来ギブアンドテイクという言葉がちょっとうさんくさく感じるという。

ギブアンドテイクという言葉は不思議だ。
持ちつ持たれつ、もらった分をきちんとお返し、というと気持ちのよいもののように感じるけれど、こうやって急に必ずギブアンドテイクを完遂すべし、という主張が出てくると、途端に義務のように感じられて、抵抗感みたいなものがわいてくる。

結局思うのは、ギブアンドテイクは、当事者間で成立していれば良いもので、第三者から見た正しいギブアンドテイクなんか存在しないんじゃないか、ということだ。
たとえば、お姉さんと友だちとの間で、久しぶりに会うからと贈り物をし、そのお返しを次に会った時にする、だからその場でお返しが発生しない、というのは何の違和感もない自然な流れである。
これは2人が友だちという関係性にあるから成立している。
そこに関係性のない他者が口をはさむと、おかしなことになる。
たしかに、目の前の2人だけ見れば、贈り物をした人と、お返しをしない人、が存在していることになり、ギブアンドテイクが成立していない、ということになるのだけれど、贈り贈られる2人の関係性を除外して介入しようとしているから、頓珍漢なことになる。

これは、私とTのギブアンドテイクにも言える。
Tには才能があり、その才能の価値への対価として、私はお金を払っている。
でもこのギブアンドテイクは、第三者から見れば、おかしいんじゃないか、ということにもなる。
お金というのはすでに価値が保証されているものだから、将来性を含む才能とのギブアンドテイクは、成立していないように一見見えるのだと思う。
でもこのギブアンドテイクも、結局は当事者間で納得していれば問題のないものなのだ。

お姉さんは、ギブアンドテイク原理主義者の彼と、まだ付き合ってはいるらしいが、すでに不穏な空気が流れているらしい。私とTがその彼に見つかったら、Tはとんでもない量のLINEギフトをその場で購入させられる羽目になるんじゃないかと、ちょっと怖くなった。
私はその場でTの絵や文がいかに素晴らしいかを見せつけて黙らせる気満々だし、なんならお姉さんを不快にした分も、どつき回してやる気満々なので、会ってみたい気もするのだけれど。
世の中には人からみてちょっと変わったギブアンドテイクを成立させている2人もいれば、ギブアンドテイク原理主義者もいるのだなあと、学んだ話。

そんな変わったギブアンドテイクを成立させているTと私で、Podcastをはじめました。
本当にこいつら実在してんのか、どういう関係性なんだ、そもそもTとは春田が脳内で作り上げた架空の存在なのでは、と興味をもたれた方、ぜひきいてみてくださいね。
(聴いていて気になったことがある方はぜひコメントでご質問いただけると嬉しいです。)


養われる男

2022/11/13
ついさっきまで春田さんの家に居た。
帰ってすぐに彼女がnoteを投稿すると言っていたので僕も同じように日記を付ける。
まだ、初めて会ってからよくよく考えてみると5回ほどしか会っていないような気がする。
近況報告をしたり、2人で新しい活動をしてみたりとしているが、僕が1番大切だと思っていることはお互いの価値観の擦り合わせだと思っている。
「僕を養っていて大丈夫ですか?」
このシンプルな問いをほぼ毎日していて、会う度、必ずしている。
養われていて物理的に働く時間が減っているのにも関わらず一日が長いと感じたことをまだない。
それが良いことなのか悪いことなのか僕にも分からないけど、アルバイト以外のことを以前と同じように取り組んでいるようでは僕自身が納得できないと思う。
恐らく彼女は以前より多くの時間働いている。
僕のために働いている時間分働かずに家で好きなことをしようと思わないのか聞いても「そうは思わない」と言う。
僕も同じ量「そのままで周りは納得しますか?」と問う。
僕は毎回「NO」と心の中で答える。
他人からの一方的な応援が自分の背中を強引に押す。
それが居心地が悪いとことではなく、僕はそうじゃないと継続して頑張れない。
僕はぐうたらで社会的に何か貢献できている訳では無いけれど自分の身の丈に合ったことはしてみようと思う。
一言で言うと、応援されると頑張れるよねと言うことです。
はい。




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