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ショートストーリー《もしたむっ!》Osamu.0:おさむと仲間たち ~発生編

「う……」
 誕生日の朝。ムシッとした空気を感じて目が覚める。なんだこの異様な暑苦しさは。
 ムクッと起き上がり、寝ぼけまなこをゴシゴシこする。ゆっくり目を開くと……
「な……な……」
 目の前の光景に目を見開く俺。
「なんだこれはあぁぁぁぁっ!?」
 俺の絶叫が寝室に響く。俺の目の前の光景、それは……スーツ姿の俺が、寝室に大量に密集している光景だった。

 俺は田村修。小さなイベント会社で働いてる43歳。市内のマンションで一人暮らし中。そんな俺は、『俺』が寝室に大量にあふれかえっているこの光景をベッドの上で唖然として見ていた。
 大量の俺を数えてみる。その数、26人。どの俺も、俺と全く変わりのない俺だ。完璧なコピーと言うべきか。見間違えてしまいそうだ。
「何で、こんなにたくさん俺がいるんだよ……!?」
 戸惑う俺は、枕元に置いてあった紙切れに気づく。それをつまみ上げ、開く。
『誕生日プレゼントです。1年間彼らと仲良くしてください。神様より』
「はぁ……!?」
 まったくもって訳がわからない。こいつらは、神様からのプレゼントなのか!? なんちゅうプレゼントをしてくれたんだ、神様とやらはよぉ……!
「まあいい……おい、お前! 名前はあんのか!?」
 いちばん近くにいた俺に声をかける。するとそいつは口を開いた。
「俺は、こさむだ」
「こ、こさむ……?」
 修──「おさむ」をもじって、「こさむ」なのか!? しかも、その声までもが俺とまったく同じだ。
「じゃ、じゃあお前は!?」
 こさむの隣にいた俺に声をかける。
「俺、そさむ!」
「そこのお前は!?」
「とさむだ」
「お前!」
「のさむだよ」
 何だこいつら……こんな名前ばっかなのか!?
「まあ、そういうことで、よろしくな。おさむさん」
 最初に声をかけた、こさむが俺に言う。まだ頭が混乱しているが……こうなったらもうどうにでもなれっ!
「よしお前ら! 今から『おさむ族』結成だ!」
 そう言った俺はベッドの上に立った。
「日替わりで、俺の代わりに会社に行け! お前らにも外の世界を見せてやる!」
 俺が言うと、26人の『俺』は一斉に「おーっ!」と拳を上げた。

 こうして、俺と26人の『俺』で結成された『おさむ族』の物語が幕を開けた。

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