コロナ渦不染日記 #51
九月十二日(土)
○午前中は原稿をし、『SUPERHOT:MIND CONTROL DELETE』を遊ぶ。
「プレイヤーが操作しているあいだだけ、ゲーム中の時間が進む」という特異な設定のFPSである『SUPERHOT』は、ステージをクリアするまでのパズルゲーム的な面白さと、ステージをクリアしたあとのリプレイ再生の、まるで映画『マトリックス』を見るような爽快感で、やみつきになるゲームだった。
『~MIND CONTROL DELETE』はその続編。前作のルールはそのままに、自動作成のステージをクリアしながらダンジョンを進む、ローグライクゲームの仕組みを取り入れた。ライフ制になり、所持弾数増加や移動速度上昇、ダメージを受けたときに周囲に手裏剣をばらまくなど、プレイに有利な「ハック」を身につけるRPG的な要素も楽しい。
敵も、接近武器で銃弾をはじいたり、奪われない武器を持ちいたりと(敵を倒すと一緒に消えてなくなる)、前作以上に手強くなっている。気がつけば数時間遊び続けていた。
○昼過ぎにでかけて、美容院で毛を刈ってもらってから、古本屋を冷やかす。ずっと探していた、野坂昭如『骨餓身峠死人葛』を見かけた。単行本で持ってはいるが、この岩波現代文庫版は、ジャケットがいい。
ところが、かんじんの表題作のところを開いてみると、ボールペンで書きこみがしてある。しかも、非常に雑な書きこみである。いくつかの単語に共通してマルがしてあり、線が引かれているものの、それも十ページちょっとで終わっている。もちろん、「骨餓身峠死人葛」は、十ページちょっとで終わる話ではない。この和製ダーク/ゴシック/ノワール小説が気に入っているだけに、この書きこみにはいちじるしく気落ちさせられた。どうせ書きこみをするのなら、手放さずにいてほしい……と考えて、いや、手放さざるをえなかったのであろうか、その意識すら、すでにこの世のものでなかったのではないか、とも思う。
○その後、岬に出かけ、相棒の下品ラビット、イナバさんと、居酒屋「五の五」で飲む。
トロもうまいが、ブリもうまい。気がつけばレモンサワーを五杯、日本酒を一合、干していた。
○本日の、全国の新規陽性者数は、六四八人。
そのうち、東京は、二二六人。
九月十三日(日)
○朝、ふと思いたって、自家製ピザを作る。
生地をこね、小一時間ほど寝かせたら、ひろげたアルミホイルのうえに伸ばし、魚焼きグリルで一分半ほど片面を焼く。焦げ目がついてきたところで取り出し、裏返した、まだ焼けていない側にオリーブオイルを塗り、シラスとチーズを乗せて、塩こしょうを振ったら、また魚焼きグリルに戻して、チーズが焦げるまで焼く。
そうしてできあがったのが、このシラスのピザである。
生地をぶ厚くしたので、ふわふわもちもちの食感がありが、それがカリカリのシラスと好相性である。下品ラビットとふたり、ぺろりと食べてしまった。このあと、ノリのつくだ煮を塗ったうえに、チャーシューとネギ、チーズをのせて焼いた和風ピザも作ったが、こちらは写真を撮り忘れてしまった。
○映画『ブラックパンサー』で主演を務めた、俳優のチャドウィック・ボーズマン氏の逝去を受け、同作で共演した、俳優のマイケル・B・ジョーダン氏が追悼文を述べたのを、翻訳し、先週公開した。
翻訳をしながら、同作の監督を務めたライアン・クーグラー氏の随想も発見していたので、今日はそれを翻訳するのに、日中の時間を費やす。来週には公開できると思われる。
○先月末に辞意を表明した、安倍晋三氏の、後任となる次期総理大臣選出にむけた総裁選が、明日、行われるという。この災禍のなかで、総理大臣を務めた安倍晋三氏の苦労やいかばかりかと思うが、それと、この災禍に即しての、日本政府のぐだぐだの対応を指揮し、かつ、その行く末もまだ定かでないのに、退任せざるをえない安倍氏に対して、いささか釈然としないものを感じるのは、けして矛盾しない。個人としてはかわいそうだと思うが、公人としては力不足だったのではないか。国民の期待を担い、それに応えるということができるキャパシティの持ち主ではなかったのではないか。
そして、彼が退いたあと、このぐだぐだを、誰ならば引き継いで、改善していくことができるのか。あるいは、そのような期待をひき受けることができる人はいるのだろうか。そのような期待をひき受けることができる人物が現れるまでの、中継ぎとしての総理大臣が選ばれるのだろうか。
○本日の、全国の新規陽性者数は、四三九人。
そのうち、東京は、一四六人。
引用・参考文献
イラスト
「ダ鳥獣戯画」(https://chojugiga.com/)
いただきましたサポートは、サークル活動の資金にさせていただきます。