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お城はカップルが自撮りをするためにあるわけではない【GW近畿一人旅②】

こちらの続き。


道の駅の駐車場で朝食を済ませた私は事前に調べていた「丸山千枚田」を目指して車を走らせた。


丸山千枚田は、日本に数ヶ所ある棚田の中でもかなり有名だろう。名前だけは聞いたことある人も多いはず。私もこれまでその名前だけは聞いたことがあったが、所在地についてはよく分からずにいた。

それが「熊野市 観光」でググってみたところこの丸山千枚田が見事にヒット。

「お前〜ここにいたのか〜!」

と迷子になっていたペットを抱きしめる飼い主のような気持ちになった。


道の駅から車を走らせること約40分。途中、車1台がギリギリ通れるほどの狭い林道を通り、丸山千枚田の展望台に辿り着いた。

展望台には駐車スペースが4台分あり、一応田んぼの集まりということで農業をするための地域にもかかわらずちゃんと観光客のためのスペースも用意されている。

今はゴールデンウィーク、かつこれだけ有名なビュースポットであるにもかかわらず、停まっていた車はゼロ。本当にこの日はゴールデンウィークだったのだろうか?おかげで駐車がめちゃくちゃスムーズに済んだ。

車から降り、後ろを振り返るとご覧のパノラマビュー。

目の前には田んぼ。田んぼ。田んぼ。
それもただの田んぼではない。今目の前にあるのは我々が小学1年生の頃に習う田んぼの「田」とは似ても似つかない田んぼ達。一つ一つが不規則なクランク状の形になっており、それが階段状になることで大地に幾何学的で芸術的な模様が生み出されている。まさに自然と人工物の調和だ。

遠くに見える山々も見事なハッピーセットになっている。この大地で吹く風はマックデリバリーのバイクがクランクを颯爽と翔けるように私のTシャツを靡かせていた。


また目を凝らしてよく見ると、田んぼの中では農家の人達が農作業をしていた。
そうだ。ここはただのビュースポットではない、稲を育てるためのれっきとした田んぼだ。いずれ季節が変われば稲が育ち、この景色もずいぶん違ったものに見えていただろう。

私がのんびりこの景色を独り占めしていると、駐車場に車が1台やって来た。
ナンバープレートを見ると大阪ナンバー。そうかここは関西なのか。車のマフラーから「何やねん」とか聞こえて来そうだ。

車の中を覗くと乗っていたのは50代くらいの夫婦。
先に奥様が車を降り、一人でこの景色を堪能し独り言ながら「すごい〜」と口にしていた。

一方の旦那さんは駐車後すぐには降りずに
少しの時間カーナビを操作してから2、3分後に降りて来た。
彼は車から降りるなり持っていたタバコに火をつけ、一服キメ始めた。

ここでタバコを吸っていいのか?という疑問は頭の中で生まれたが、
この景色の前で吸うタバコはきっと美味しいに違いない。
私も過去に喫煙していた経験があるのでこの旦那さんのタバコの味が如何かは容易に想像がつく。灰皿のない場所での路上喫煙はあまり褒められたものではないがね。


所要時間で言うと10分くらいだが十分に景色を堪能したので私は千枚田へ別れを告げ次の目的地へと車を走らせた。


山道を車で移動すること約20分。次に私がやって来たのは「赤木城跡」だ。

例えば「大阪城」と聞けば「あ〜大阪城ね〜」となる人は多いと思うが、赤木城と聞いて、「あ〜赤木城ね〜」となる人はよほどの城好きでもない限りほとんどいないだろう。

そんな城に私がなぜ来たのか、それは私が歴史が好きであり、城が好きだからだ。実は城好きの間では、この赤木城は「続・日本100名城」にノミネートされていることで有名なお城である。細かい説明はいろいろと省かせてもらうが、要するに日本に数多ある城の中で食べログ百名店的な賞にノミネートされている城の一つってこと。城好きを名乗るなら、せっかく熊野まで来たのに赤木城に寄らないのは
もったいない、っていうそういうお城なのである。


駐車スペースに車を停め、いざ入城。まずは案内板を読もうではないか。

こういうお堅いフォントで長々と説明されると頭が痛くなるって人のために私がnoteのやや柔らかめのフォントを利用して超ざっくり簡潔に説明すると、当時、あの秀吉がこの地を支配する時にこの地に住んでいた住民達に厳格な税金を課してたわけだが、当の住民達は

「税金が高すぎて、払えな〜い!」

と怒り心頭。秀吉に反対するための暴動がたびたび起きていたらしい。

そんな民達の暴動を抑えるための拠点として築かれたのがこの赤木城である。
税金を取るために税金を使って城を作るとは、なんとも秀吉らしい豪快なやり方だと私は思う。


そして、この場所には大阪城とか名古屋城みたいにインスタ映えするでっかい天守閣とかあるの?と聞かれると、答えはNO。

残念ながら建物という建物はまったくない。あるとしたら駐車場に建てられた公衆トイレのみ。だって「城跡」だからね。

城とは歴史なんて微塵も興味ないカップルがストーリーで旅行自慢をするための自撮り写真を撮るために存在しているわけではないのだ。れっきとした軍事施設なのだ。

この城を攻める兵(ここの場合一揆を行う農民)の気持ちになって入城するといかに城が軍事施設であるかがよく分かる。

城の入り口で例を言うなら、ただでさえ上り坂になっているのに、カーブになっているため兵のスムーズな進行が妨げられる。さらにその上には土塁が作られており、坂を登っている最中に土塁の上から矢の雨が降ってくることが想像できる。のっけからなかなかハードな城である。

上り坂を登り切ると右側に本丸が見える。この石垣は当時のものらしい。この石垣が築城当時から残り続けているというだけで心が動かされる何かがある。

本丸に登ってみる。本丸からは民が住む大地が大いに見渡せる。反撃の狼煙を上げようものならすぐに臨戦体勢に移ることが可能だ。

城に関してはまだまだ書きたいことはあったのだが、これ以上書くと長くなる&マニアックな話になりかねないのでこの辺にしておく。

農民相手の城というのが理由だからか、城の規模は大きくなかったので10分くらいで散策が終了した。ちなみにこの城を散策していた人は2、3人だった。この日は本当にゴールデンウィークだったのだろうか?


その後車に戻った私だが、赤木城の散策時間が予想以上に短かったため寄り道をするバッファが生まれたことに気づく。

そんなわけで、Googleマップで赤木城から一番近い温泉を探し、ヒットした「湯ノ口温泉」に向かった。車での所要時間は大体30分くらいだった。

「湯ノ口温泉」は熊野市の端っこの山中にあり、どうやらその歴史は南北朝時代まで遡るらしい。

今回の旅行で初めての温泉ということで興奮しながら入湯。露天風呂も名物のようだが内湯がいい具合に熱く、源泉掛け流しということでしっかりと温泉を感じる良いお湯だった。この施設もゴールデンウィークとは思えないほど空いていた。


ひとっ風呂浴びた後は近くにあった道の駅「道の駅 熊野・板屋九郎の里」に寄ってみた。実はこの場所、湯ノ口温泉に行く途中に通ったのだがその時間はまだ営業時間だったのでいったん通り過ぎた場所である。

ここに来た目的は大きく二つ。

一つは、赤木城の御城印をもらうこと。「御城印」とは、神社やお寺で見かける「御朱印」のお城バージョン。これをコレクションしている城好きも少なくない。金額は一般的な御朱印と同様、300円。御朱印集めが好きな人はこれを機に御城印も集めてみてはいかがかと。

赤木城の御城印

もう一つの目的は、「続・日本100名城スタンプラリー」のスタンプを押すことだ。

先述したように、日本には「続・日本100名城」というものが存在する。そしてその100名城を巡った軌跡を残せるように、スタンプラリーが存在するのだ。

私もこのスタンプラリーを始めて約5年。そんな私が赤木城のスタンプを逃すわけにはいかず、わざわざ湯ノ口温泉で時間を潰してここにやって来たということだ。

続・日本100名城スタンプ帳

無事赤木城のスタンプの押印も成功し、ここでのミッションも完了。とはいえせっかく道の駅まで来たので少しぶらついてみた。

外には、「九郎兵衛・お菊の夫婦石」が立っている。

道の駅の名前にもなっている「九郎兵衛」とはなんなのか、
説明板があったので暇な人は読んでみてほしい。
この説明の「勘違い」が指しているのは「お菊が不倫をしていると九郎兵衛が勘違いした」ということらしい。

ひねくれ者の私は「なんでギャンブル好きでこんな短気なヤツが慕われていたんだろう」と素直に疑問に思いつつ、私は次の目的地に向けてエンジンをかけた。私と愛車は北山川を渡り、和歌山県へと入るのであった。

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