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東京で激ウマの餃子に出会った話【餃子の店 おけ以 @飯田橋】

「餃子の店 おけ以」に行った時の話。


「餃子の店 おけ以」は東京都は新宿区、飯田橋駅近くにある昭和29年創業の有名な老舗町中華。かつて『マツコ有吉のかりそめ天国』で紹介された餃子ランキングで1位を獲ったお店であり、その影響もあってか行列必至の人気店になっている。ちなみにこの番組は『怒り新党』の時代から好きな番組だ。

飯田橋駅を降り、西口側のスクランブル交差点を渡る。一つ目の交差点を右に曲がればすぐにお店だ。近い。

僕がお店に訪れたのはお昼の開店時間の5分前、11時25分だ。この日は少し雨がぱらついていたが、そんなことは関係なくすでにお店の前には5名のお客さんが開店を待ち望んでいた。

僕も含めて並んでいるのは男性だけ。僕のすぐ後ろに並び始めた彼もまたスーツを着た男性だった。

本当に11時半ちょうどでオープン。お店のおばちゃんが1人ずつ店内へと案内を始め、我々は吸い込まれるようにお店へ入って行く。

入店した際にぱっと後ろを振り返ると新大久保あたりにいそうな若い女の子3人もこの入店の列に着いて来ていた。なるほど。ここは若い女の子からも注目されているお店なのか。ということはつまりこのお店を知っていればもしかしたらモテるかもしれない。女子グループをたった1組見ただけなのに、僕の心のスクランブル交差点では食欲と下心が常に行き交っていた。


そんな僕の気持ちなど察していないお店のおばちゃんは僕をカウンター席に案内。カウンターでは先に入った5人の男たちが横並びに座っていた。

さてさて、メニューを見ようかと僕がメニューを開こうとしたのも束の間、前に並んでいた男たちがすでに注文を始めている。辺りを見渡したが、この店の壁にはメニューは書かれていない。

僕は彼らがメニューをまったく見ずに即注文しているということをすぐに察した。彼らはこのお店における本物の猛者だ。僕にそんな真似は到底できない。しかしまずい、このペースでは僕もすぐに注文を聞かれてしまう。

本能的に危機を感じた僕は急いでメニューを開く。時間はないが焦りは禁物。焦りは人間の判断を鈍らせ、本来の実力を半減させる。危機的な状況での判断力こそ、男の器が試されるのである。

僕は先ほど驚きながらも前のお客さんの注文は大体耳に入れており、彼らのほとんどは「餃子」と「チャーハン」を注文していた。そのためもう僕の中でこの二者は確定だ。町中華におけるチャーハンと餃子の組み合わせは個人的に黄金コンビだ思っており、なおかつ常連たちがそれを揃って頼むのであれば間違いない。

本来ならこの二者でターンエンドするのが無難中の無難だと思うのだが、メニューには「懐かしの中華ソバ」という町中華好きなら魅力を感じざるを得ない文字がかれている。

頼みたい…本当はめちゃくちゃ頼みたい…!
でも食べ切れるかな…!


この「懐かしの中華ソバ」を注文するかどうかの焦点である胃袋のキャパの見積もりは簡単に提出できそうにない。僕が頼むメニューを決めあぐねている間も、注文を聞くおばちゃんの声はどんどん近くなってくる。そしてついにおばちゃんはついに僕の左隣の男性、つまり外で僕の一つ前に並んでいた男性の注文を聞き終えた。注文を終えた彼の表情からは焦りの「あ」の字も感じない。脱帽である。

そしてついに僕の番…と思ったら、デメキンのような目で必死にメニューを凝視している情けない一見客の姿が目に入ったからだろうか、おばちゃんは僕に注文を聞かずに厨房に戻って行った。

厨房に消えて行くおばちゃんの背中を見て、僕の心拍数は20くらいは下がった気がする。

それから1〜2分経った時、おばちゃんが僕に注文を聞きに来てくれた。結局僕は「餃子」「玉子チャーハン小盛り」「懐かしの中華ソバ」を注文。僕は僕の胃を信じると決めたのだ。


注文を終えた後、店内を軽く見回してみる。僕の次に入店したスーツの男性は僕の右隣で何やら女の子と仲睦まじげなSMSを送り合っていた。SMSとはプレイの一種ではない。ショートメッセージの略だ。LINEでの連絡が当たり前になっている昨今、ビジネス以外の関係性でSMSでやりとりをするなんてなかなか珍しい。LINEは交換してもらえなかったけど電話番号はゲットできたのか、はたまたその子がガラケーしか持っていないのか果たしてどっちなのだろう。


反対方向を振り返ると店の天井近くにはテレビが置かれている。放送されているのは本当にただの普通のニュース番組。町中華ではよく流されがちだ。でもなぜか町中華のテレビで観るニュースは家で観る時の何倍も味のある番組に感じる。僕の左隣のお兄さんはイヤホンをしているにもかかわらずその目線はテレビに釘付けだ。


後ろにはテーブル席も何席かある。町中華といえば「赤」のイメージが強いが、このお店に関しては外の看板も含めて「緑」が使われているところが多い。これはこれで目に優しくて良いじゃないか。次第にこれらの空席は埋まっていき、僕が入店して10分後には店はすでに満席になっていた。

ほどなくして料理の登場だ。まず最初に登場したのは「チャーハン 小盛り」だ。

玉子チャーハン 小盛り ¥670

注文した時のイメージとしてはよくある町中華の半チャーハンぐらいの量を想像していたが、いざ目の前に現れてみると予想以上に小盛りな見た目をしている。イメージしていた半チャーハンの半分くらいの量だと思う。言うならば半々チャーハンだ。


そして付け合わせのスープも一緒に登場だ。僕は中華ソバを注文しているから付け合わせのスープは来ないだろうと思っていたが甘かった。しっかり器に注がれたスープが目の前に置かれている。まもなくラーメンがやって来るというのに。

このWスープ現象は町中華ではあるあるなのだが、この現象は出くわすたびに「あっ、来ちゃったか…」という心の声が聞こえる。

チャーハンの付け合わせのスープ

とはいえまずはスープから頂く。塩分が控えめで優しいお味だ。昼食の開幕宣言をスープで行えるという状況はどう考えても幸せである。


続いてレンゲをチャーハンに移し、一口。

食べてみるとこちらも塩分はかなり控えめ…と言いたいところだがはっきり言ってかなり味が薄い。

チャーハンは何人分かまとめて作っているだろうから僕が食べた箇所だけ塩が行き渡っていなかったのだろうか?とにかく味が薄くて物足りない。さすがに「優しい味」と肯定できないほどだった。ちょっと残念。

念のために言っておくとこれは個人の感想であり、美味しく食べている人を否定しているわけではないことはご認識いただきたい。ほら、味の好みって十人十色、千差万別じゃん?


チャーハンを半分くらい食べたところでいよいよここの名物であり僕がここに来る目的としていた餃子が登場。

餃子 ¥650

これがマニアに一位と言わしめた餃子である。まったく、綺麗な並びしてやがる。

まずは何もつけずにそのまま一口。

何もつけてないのにめっちゃ美味い。


まず感じるのは表面のカリッと感。表面は野球部がグラウンドを整備した後のようにサラサラで心地よい舌触り。そして噛んだ時に感じる中毒性のあるカリカリ感。焼き加減が絶妙過ぎる。

一口噛むと中から肉汁が溢れ出る。これまで数々の餃子を食べて来たが、この肉汁の量はトップレベルだろう。まさに餃子界のアマゾン川だ。


そして小皿に作っておいたタレ(多めのラー油、醤油、酢)につけて食べてみよう。

気絶しそうなほど美味い。

先ほど何もつけずに食べた時に感じた肉汁が、タレと合わさるととんでもない美味さになる。生地のカリカリ感、タネの詰まり具合、ニンニクに頼り過ぎないパンチ感、どれをとっても非の打ち所がない。これが一位の実力というやつか…!


あまりの餃子のクオリティに感動していると、
「懐かしの中華ソバ」が到着だ。

懐かしの中華ソバ ¥730

僕が頼むかどうか散々悩んだ「懐かしの中華ソバ」。目の前に現れた瞬間「頼んでおいてよかった」と安堵した。このラーメンは見た目から町中華感と個性が溢れ出ている。スープは「懐かしの」というフレーズをつけるに相応しい色であり、少し太めな麺が町中華にしては個性的だ。コイツが果たしてどんなエッセンスを見せてくれるのか楽しみだ。

うむ、ベースはさっき飲んだ塩分控えめのスープと同じだ。だが返し醤油の強さがさっきよりも強く、チャーシューが入っているというのもあるからかパンチのある味になっている。美味いぞ。

そして最初に目についた太麺。これがまたまたモチモチで美味い。町中華なのに町中華じゃないみたいなモチモチだ。スープの味も持ってくるし美味い。「餃子の店」なのにラーメンも美味いじゃないか。

とにかく餃子が美味し過ぎる。いつまでも食べていたい餃子であり、最後の一個を食べる時は箸で持ったそれに心の中で「さよなら」と告げ、別れを惜しみながら口に入れた。噛んでいる時は脳内で小田和正が流れていた。

餃子をもう1枚頼むという発想が一瞬頭をよぎったが、外ではきっとこの餃子を待ち望んで並んでいる客たちがたくさんいるのだろう。彼らにも早くこの感動と幸せを共有してあげたい。また食べたくなったらここに戻ってこよう。


最後はラーメンのスープを満足いくまで飲み続け、席を立ちレジへ。正直町中華のランチで2000円も使うなんて滅多にないためレジで会計金額を聞いた時は一瞬のどよめきを感じたがたまにはこういう日があっても良いだろう。ちなみにこのお店でPayPayが使えるのは意外だった。


会計を終え外に出ると、入る前にぱらついていた雨は止んでいた。横を見ると、僕がお店に着いた時よりもさらに長い行列ができている。こんなに人気で感動的に美味しい餃子をほぼ並ばずに食べることができた僕の心は晴れやかだった。



■今回行ったお店

●餃子の店 おけ衣
・住所:東京都千代田区富士見2-12-16
・アクセス:「飯田橋」駅西口から徒歩3分
・営業時間:11:30~13:50(L.O.)/17:00~20:30(L.O.)
・定休日:日曜・祝日・第3月曜日
・駐車場:なし
・支払い方法:現金、クレカ、PayPay、d払い


■頼んだメニュー

●餃子 ¥650
●玉子チャーハン 小盛り ¥670
●懐かしの中華ソバ ¥730

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