在宅勤務で本当に良かった【信越北陸一人旅①】

今年の9月15日から19日にかけて信越、北陸地域に一人旅に行って来たのでその旅行記を綴っていくことにした。


最近、資格の試験を受けて来た。「国内旅行取扱管理者」という資格だ。名前のとおり旅行に関する資格であり、れっきとした国家資格である。試験では旅行業法に関するものやJRの運賃計算、国内の観光地に関する問題が出題される。この資格は主に旅行会社に勤めるような人が取る資格だ。

試験が開催されたのは9月の頭。試験の結果はまだ出ていないが、試験を受けた日に家でネットの解答速報を見ながら自己採点したところその結果は合格基準点を大きく上回っていた。試験勉強に2ヶ月費やした男が安堵した瞬間だった。僕は旅行関係の仕事をしているわけではないが、「これで旅行のプロの仲間入りだ」なんて大それたことを思ったりもした。

試験は1年に1回しか開催されない。つまり不合格なら再受験は翌年。丸一年棒に振ることになる。その十字架から解放された気になった男はすぐに旅行の計画を建て始めた。今の自分には仕事以外背負うものがない。仕事が休みならどこだって行ける。解放感に満ち溢れた男は部屋のデスクに置かれたモニタ上にGoogleマップを広げ、闇雲に日本中を移動した。とにかくどこかへ行きたい、その気持ちだけが先行して右手に持ったマウスは四方八方に動いていたが結局その日は特に何も決まらなかった。


次の日、スマホで何気なくインスタを見ていた。僕はインスタでグルメアカウントを運営しているのでインスタに映る投稿はほとんどが食べ物に関する投稿だ。スワイプしてもスワイプしても現れ続ける美味しそうな料理たち。どれも見事にインスタ映えしている。インスタでグルメを紹介しているアカウントは非常に多く、他のアカウントに勝つためにはいかに自分の投稿を「映えさせるか」が非常に重要だ。今やインスタは「映え」の戦国時代であり、映えさせなければいいねやフォロワーを獲得することは難しいのだ。

そんな無数の「映え料理」の中で一際映えていると感じたのは、あるグルメアカウントが投稿していたモンブランの写真だった。白い皿の上でマロンクリームが美しい繊維を作り輝いている。僕が見たそれはまさに「インスタ映え」していた。そのモンブランが一体どこで食べられるのかについては今まったく思い出すことはできないが、その映えモンブランを見てとにかくモンブランが食べたくなった。そしてそう思ったのと同時に、あることが頭に浮かんだ。

それは、これから栗の季節がやって来る、ということである。


栗といえば秋刀魚や松茸に並ぶ秋の味覚の中のエースだ。そんな栗の旬がやって来る。僕は部屋の中でその事実に気づいた時、自然と「そうだ栗の季節じゃん」と呟いていた。そして次に考えたのは、栗といえばどこだ?ということである。全国的に栗が有名な町。資格の試験ではそんな問題は出てこなかったが、頭の中で一つ思い当たる場所があった。

小布施。長野県の小布施。

その町の一番の名物が栗だというのは以前テレビで観た記憶があった。今と同じか少し後ぐらいの時期に芸能人何人かがお店に立ち寄り、名産の栗を使ったモンブランを食べて「ん〜〜〜〜!!!」といった大げさな食リポをしていた気がする。美味いもの食べて叫ぶなんて普通ありえないだろといつも思う。そんなことを思う僕は長野県には何度か行ったことがあるが、小布施町には行ったことがなかった。当然、小布施の名産である栗も食べたことはなかった。小布施でモンブランを食べる。今回の旅の目標はこれにしよう。


旅の目標が決まった後は何日かかけておおよその旅のスケジュールを建てた。カレンダーの3連休と有給を組み合わせて作った4連休。この4日間で小布施でモンブランを食べつつ知らない世界を見に行こう。誰も連れて行かない一人だけの旅。一人旅は今まで散々して来たので慣れてはいるものの、その出発日が近づくたびに「もうすぐ始まる」という緊張と期待が胸の中で台風のようにぐるぐると大きくなっていった。



出発の日、起きたのは朝6時ごろ。この日は在宅勤務だ。いつもならポロシャツに着替え、リュックを背負って駅まで向かわないといけないのだが、この日の朝は車に乗り込み近所のガソリンスタンドに向かった。給油をするついでに洗車とタイヤの空気圧のチェックを済ませた。雨、降らないといいなぁ。
家に戻り用意した着替えと寝袋、エアマットを車に詰め込む。仕事開始まで余った時間は部屋の掃除をした。掃除が嫌いな僕にしては珍しく、この日はトイレの掃除をがっつりやった。旅行を終えて帰る頃にはこの綺麗なトイレが僕を待っている。トイレクリーナーを流した時はとても清々しい気持ちだった。

この日の仕事は順調も順調。前日に残業して仕事を進めておいた甲斐があった。おかげでトラブルもなく午後5時に仕事は終了。エアコンと電気を消したことを確認しつつ、まだ車に積んでいなかった荷物を持ち、家を出た。しばらく家を空けるので家を出る前に一応トイレの電源をコンセントから抜いておいた。これでどれほどの節電効果があるのかは分からない。

駐車場に着くと、仕事をしている間に雨が降ったようで車が少し濡れていた。さっき洗車したばっかりなのになぁと思いながら車に荷物を積んだ。運転席に乗り込み、車のエンジンをかける。このエンジン音こそが、一人旅の始まりを意味するピストルである。まだアクセルは踏んでいないが小刻みに震える車とは別のリズムで自分の体は震えているような気がした。

ギアを「D」に切り替え、ゆっくりと車は動き出す。これからの4日間はこのアパートからはオサラバだ。嫌な仕事のことも考えなくていい。とんでもなく軽い身体になったであろう僕を乗せた車は、高速道路の入り口に差し掛かる。


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