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一皿の餃子から、「人の役に立つ」ということの力を感じた【藤井屋 @水道橋(東京都千代田区)】

美味い餃子屋を探したい。いつもだったら食べログやGoogleマップを開いて片っ端から良さげな餃子屋さんを漁っていくのだが、その餃子屋探しもたまには違うアプローチでできないかと思い始めて来た。自分で探すとなると、いつも目星をつけるお店はネットで高評価のお店に偏ってしまう傾向がある気がする。そりゃそうだろう。ネットでお店を探すとき、そのお店が良さげかどうかを判断するには写真と評価点ぐらいしか材料がない。そして評価点の高いお店の餃子の写真は大体美味しそうに撮られていることが多い。ネットの評価点というのはあくまで数字でしかないということは分かってはいるものの、その評価点に頼らずに独力で美味しそうな餃子屋さんを探すことはなかなか難しいことだと思っている。


違うアプローチ、と考えて思いついたのは、インスタを活用する方法だった。自慢できるほどのことではないが、僕はインスタグラムで自分が実際に行ったお店を紹介するグルメアカウントを運用しており、もう運用開始から4年以上が経つがフォロワーは約2000人ほどいる(逆に4年もやっててそれしかいないのかよって思うかもしれないが)。加えて、僕をフォローしている人はグルメに興味があり、自身でもいろんなお店を開拓している人が多い(はず)ので、自分では見つけられない日本のどこかにある新たな餃子屋を求めていた僕はこれを活用しない手はないと思い、自身のストーリーでフォロワーからオススメの餃子屋さんを募集してみることにした。僕はさっそくインスタを開き、画面中央に「おすすめの餃子」と書いた質問スタンプを貼ったストーリーを投稿した。ストーリーの表示期間は24時間。僕のフォロワーは一体どんな餃子屋を教えてくれるのか。新たな餃子屋との出会いに期待しながら24時間そのストーリーを寝かせてみた。質問スタンプにどれくらい回答が来ているのか見てみると、6~7件の回答が来ていた。こんなに回答が来たというだけでもありがたい話である。中にはすでに知っている餃子屋さんもあったけど、聞いたことのない餃子屋さんは全部ネットで調べた。どれも美味しそうなお店ばかりだった。やっぱ、みんな色々なお店を知っているんだなあ。


回答に書いてあるお店がどれも美味しそうなので、まずは一番最初に回答をくれたフォロワーが教えてくれたお店に行ってみることにした。そのお店は、「藤井屋」。なんでも、色んな種類の餃子が食べられる餃子専門店らしい。

この回答をくれたフォロワーは亀戸にある「藤井屋」を教えてくれたが、調べてみたところ水道橋にも同じお店があるらしい。どちらかというと水道橋の方が行きやすい場所にあるので水道橋店に行ってみることにした。ちなみに、亀戸といえば「亀戸ぎょうざ」が有名だが、教えてくれたフォロワー曰く、亀戸ぎょうざより藤井屋の方が好き、とのことだった。


そのフォロワーを信じて、ある日13時ごろに水道橋にやって来た。お店は水道橋駅の東口から徒歩2分の場所にある。駅を出てGoogleマップに従って歩いていたら本当にすぐ着いた。

お店を見て、見覚えのあるお店だなぁと思っていたら、その隣のお店は過去に行ったことがあるお店だった。隣のお店は「さばめしの鯖匠」という、日本で珍しいさばめしの専門店であり、ここで食べたさばめしは専門店だけあって本当に美味しかったなぁと昔食べたさばめしの映像を頭で思い浮かべていた。そしてそのお店の向かいでは何やら若い男性のモデルさんのような人が多数のスタッフさんに囲まれて何かの撮影をしているようだった。目を凝らして被写体となっているそのモデルさんを見てみたが、結局誰なのかは分からなかった。誰だか分からない人の撮影会は置いといてお店に入店することにした。

お店の外観。隣に「さばめしの鯖匠」がある。

お店には特に待つこともなく入ることができた。空いていたカウンター席に座る。お店は40代くらいの中国人の男女2人で営まれているようで、2人ともずっと忙しなく作業をしている。特にお母さんなんて、早送りボタンでも押されたんかな?ってぐらい常に高速移動を続けていた。お店はそこまで混んでいるわけでもなかったし、何が彼女をそこまで急がせていたのだろうか。

僕は席に座ったが、まず最初に見るべきメニューの場所が分からなかった。視界のどこにも、お店のメニューが見当たらないのだ。きょろきょろとお店を見回したがやはり見つけられない。するとその一見客の様子を見かねたのか、旦那さんが僕に向かって

「メニューはカウンターの下にあります」

と教えてくれた。旦那さんに言われたとおり、カウンターの下を手でまさぐるとメニューらしき触感のものがある。取り出すと、予想どおりメニューだった。なんだ、ここに隠れていたのか。僕の後にお店に入って来た50代くらいのサラリーマンは席に着くなり注文を済ませていたので、常連客との圧倒的な差を感じてしまった。



ランチメニューの種類は8種類。ここのウリは色んな種類の餃子が食べられることだということは事前に調べていた。メニューを見るとその情報通り「元祖餃子」や「バリバリ餃子」、「黒豚餃子」といった数多くの餃子が並んでいる。しかしその中でひときわ目を引くメニューがあった。それが「全品盛り合わせ定食」。これはなんと、このお店の焼き餃子を全種類食べることができる夢のようなメニューだ。まさに一見客の僕にはぴったりのメニューである。僕はこれを注文することにした。

ランチメニュー


注文してしばらくすると、まずはご飯とスープが登場。ご飯の茶碗は少し大きめで、並々のご飯が盛られている。スープはよくあるセットスープのサイズ。一口飲んでみると町中華の醤油ラーメンとかで使われていそうなスープだ。美味い。

ご飯
スープ

その後まもなくこの定食のメニューとなる餃子の全品盛り合わせがやって来た。その姿は皿の上に4列、異なる餃子が1種類4~5個ずつ並べられている圧巻の光景だ。見た目の色は同じような色をしているが、形はそれぞれ異なる。一人前の定食で皿にこれだけ餃子が乗った光景を見ることは稀な気がした。

餃子全品盛り合わせ

お店の人はこの皿の上の餃子についてそれぞれどれがどの種類の餃子なのか、ということは教えてくれなかったので、先ほどカウンターの下から見つけ出したメニューを見ながら食べることにした。メニューにはメニュー名と写真が載っているため、これを見ればどれがどの種類の餃子なのか知ることができる。

まず最初にいただいたのは元祖餃子。元祖というぐらいだからきっとこのお店の一番スタンダードな餃子なのだろう。最初は何もつけずにそのままいただいてみた。元祖餃子は焦げ目がしっかりついてる。その焦げ目のザラザラ感、噛んだ時のパリパリ感、タネから溢れる旨味、元祖の名に相応しい美味しさだ。この餃子はニンニクが使われていないようだが本当にそうなのかと思うほどのパンチを感じる。めっちゃうめぇ。

元祖餃子

続いていただいたのはバリバリ餃子。この餃子は細長い長方形の形をしており、これが春巻きも言われても疑わずに食べてしまいそうな見た目をしている。食べてみるとその名前のとおりバリっとしたクセになる食感が印象的だ。パリパリではない。バリバリだ。中のタネは結構肉が多めで、その肉から溢れる肉汁と外側のバリバリ感が見事にマッチ。これもとても美味しい。

バリバリ餃子

次に黒豚餃子に手を付ける。黒豚餃子は形こそ一般的な普通の焼き餃子の形だが、先ほどの元祖餃子と比較すると一つ一つが少し大ぶりで、中にはタネがみっちりと詰まっている。そしてそのタネは黒豚餃子の名の通り肉の割合がかなり高い。そしてそれ故に肉汁たっぷり。食感は先ほどまで食べていた餃子とは異なり、パリッと感よりはモチモチ感の方が強く印象に残る。肉の甘さを感じられるしこれも美味しい餃子だ。

黒豚餃子

最後に手をつけたのはエビニラ餃子。こちらは丸っこい小籠包のような形をしており、箸で掴んだだけでも肉汁が飛び出てくるほどその中には大量の肉汁が入っている。肉汁の量もまるで小籠包のようだ。自分や隣の客の服に汁が付かないように気をつけて食べなければ。

エビニラ餃子

卓上調味料も割と豊富で、定番のラー油、醤油、お酢の他に変わったソースが2種類置いてある。お店の方からは当然のように説明はされなかったし貼り紙なども存在しないためこれらのソースが何なのかは結局分からなかった。でもこれに餃子をつけて食べると美味しいということだけは分かった。特に、ちょっと辛味がする方のソースが自分好みの味だった。

3種類の味付け(2種類のソースと自作ラー油&醤油)

どの餃子も文句なしに美味い。当たり前のようにご飯が進む。先ほども書いたがこれでニンニクが使われていないというのが驚きだ。特に最近は食べログ百名店にノミネートされた餃子屋さんに何店舗か行く機会があったが、それらのお店に匹敵する、あるいはそれ以上のクオリティの餃子な気がする。食べログ百名店とは一体何なのだろう、とか考えてしまうほどだった。しかもさらに驚くのが、これにご飯とスープが付いてきて880円。どう考えても安い。コストパフォーマンスが良すぎる。こんなに安くていいのですか。百名店に匹敵する美味さとサラリーマンでも常連になるような使い勝手の良さを兼ね備えた素晴らしいお店だ。


つい数日前、インスタで餃子屋さんを募集するという判断をして本当に良かった。僕のように細々とやっているグルメアカウントでも、フォローしてくれるフォロワーの中には良いお店を知っている人が多いんだなあと思った。そんなフォロワーたちのことをこれからも大事にしたいと思ったし、自分もまた他の誰かがお店を探しているときになるべくたくさんオススメのお店を教えてあげられるような頼れる存在であり続けたいと思った。そうあり続けるためには、僕は日本中に数多あるまだ未訪のお店をこれからも開拓し続けなければならない。別に誰かにオススメのお店を教えたところで、お金がもらえるわけではないし、暮らしが豊かになるわけでもない。でも人の役に立てるなら、と考えるだけでも不思議とモチベーションが上がってくる。どうやら、人は誰かの役に立つためなら頑張りたくなるように設計されているみたいだ。ただ人に紹介された餃子屋さんに行っただけなのに、ふとそんなことを考えてしまった。

僕がグルメに関する知識で人の役に立つためには、まずは一般人以上の食費を稼がなければならない。だから明日も仕事を頑張らないといけないな。ただ、職場の人には一つだけ言わせてほしい。仕事は頑張るけど、僕がたまにニンニク臭いのは許してほしい。


今回行ったお店

餃子専門店 藤井屋
●住所:東京都千代田区神田三崎町2丁目21−11
●アクセス: 水道橋駅東口から徒歩2分
●営業時間: 11:00~23:30(L.O.23:00)
●定休日: 無休
●支払い方法: 現金のみ
●駐車場:なし


頼んだメニュー

●餃子全品盛り合わせ定食 ¥880

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