見出し画像

中国のコロナ経済対策「新基建」とは?

今回は、中国の対コロナ経済対策について簡単に纏めてみます。

中国経済のコロナ影響

中国において新型コロナウイルスによる肺炎が流行し始めたのが昨年12月と言われています。ウイルスの出所については諸説ありますが、武漢から中国全土、ひいては世界各地に拡大していったのは間違いありません。

世界経済がこの新型コロナウイルスにより甚大な影響を被っていますが、中国経済はどのような状況なのでしょうか?以下記事に詳しく書かれています。

中国、初のマイナス成長 1~3月6.8%減
実質で前年同期と比べて6.8%減った。19年10~12月(プラス6.0%)から大きく落ちこみ、四半期の成長率としては記録がある1992年以降で初めてのマイナスだった。

中国の統計が本当に正しいのかという問題は置いといて、1992年の四半期統計以来で初めてのマイナス成長ということで、中国にも甚大な影響を及ぼしているのが分かります。

尚日本への影響に関して言えば、日経記事に基づくと日本の実質GDPで20年1〜3月期は前期比-1.4%、20年度は前年比-4.0%との予測もあります。こちらは4月下旬の予測ですので、更に下振れる可能性もあるでしょう。

新基建とは?

さてコロナ禍による経済的打撃に、中国はどの様な対策を講じているのでしょうか。まず2月上旬に低金利融資等の金融政策を始めた他、その後財政政策として減税や社会保障費支払の免除等を進め、財政出動の規模はGDPの1.2%まで拡大しています(詳細はこちらを参照)。

これらの政策はあくまで対症療法的ですが、中長期的視野に立った経済政策として打ち出されたのが「新型基础设施建设(新基建)」です。日本語で言えば新型インフラ建設ですが、新型インフラとして掲げられているのは以下の領域です。

・5G、AI、データセンターなどの情報インフラ
・次世代交通、スマートエネルギーといった、従来型インフラとの融合形
・科学技術やイノベーションを生み出す為のインフラ
(出典: 新基建図解)

内容を見ると、中国の製造強国入りを目指し2015年に掲げられた「中国製造2025」の重点領域をなぞった様に見受けられます。そもそも新基建自体はコロナ対策として急遽考案されたものではなく、元々2018年12月の中央経済工作会議(共産党中央や国務院主催の会議)で打ち出されていました。

中国経済への効果

さて、この新基建ですが、中国経済にどのような効果をもたらすのか検証します。リーマンショック時の財政対策、いわゆる「4兆元政策」、並びに日本政府が掲げる対コロナ経済対策と比較してみました。それぞれの政策ラインナップ、財政支出規模、GDPとの比較を以下の表に纏めましたので、ご覧ください。

中国 新基建

(出典: 新基建、4兆元政策、日本の新型コロナ対策

08年の「4兆元政策」はケインジアンの見本的政策であり、インフラを中心とした公共事業に政府支出を集中させ需要を生み出し、経済を回復させました。この時は世界経済回復の牽引役として中国は世界から注目を集めていましたが、実は弊害も大きく中国国内ではインフラ関係の過剰投資、地方政府の債務拡大に繋がり、いわゆる過剰債務の問題が顕在化しました。

新基建ではまだ正確な財政支出額は分からず、地方政府支出だけでも約34兆元(510兆円)規模との記載もあります。一方で、4兆元政策との違いは単なる公共事業・インフラ整備ではなく、中国製造2025などを踏まえた中長期的視野に立った経済対策であるという点です。中国政府側には再度過剰債務問題を引き起こしたくないという危機意識があるものと推測されますが、「新基建」の政策ラインナップに高速鉄道等が含まれる記事もあり、恐らく政府内でも政策内容をめぐり議論が続いているものと思います。

終わりに

中国では5月22日から全人代(日本の国会に相当)が始まります。本来は3月5日から開催予定でしたが、コロナ対策を優先して延期されていたものです。全人代等を経て、この新基建の詳細な内容・財政支出額が明らかになるものと思います。

翻って日本政府は、対症療法的政策は打てていますが、afterコロナの政策検討はこれからという状況です。既に対コロナの各種対策は遅れに遅れている印象で、今後の展開にも不安を覚えざるを得ません。日本政府には政策立案・実行にはこれ以上遅れを取らず、中国のスピードに置いていかれることのない様に祈りつつ、今回の記事を終えたいと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。ご意見・ご感想、また間違っている箇所等ありましたら、コメント、もしくはTwitterにご連絡頂けるとうれしいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?