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未来は予測するものではなく創造するものである

イシューからはいる「コンサルティング」と真逆に位置する「SFプロトタイピング」。その考え方と実践方法を、豊富な実践例を交えて紹介している。作品そのものの質より、参加メンバーを既成観念から解き放ち、メンバーの「妄想」を爆発させることが貴重と主張する一方で、実際にSFプロトタイピング手法で創作した作品や著名なSF作品を例にあげつつ、良い作品作りのノウハウを多方面から紹介してくれる。
#わたしの本棚 #未来は予測するものではなく創造するものである


はじめに

「SFプロトタイピング」読了直後の2021年7月に刊行され、

即購入し、読破した。

ちょうど日本機械学会技術ロードマップ委員長の大冨先生が「いままでは従来技術の延長線上で2030年の未来を予測してきたが、2030年の技術予測は各部門に任せ、親委員会では2050年の未来予測を行いたい」と宣言し、
過去の性能向上のラインを調査し、それを未来に外挿する手法は「液晶から有機ELへ」などの技術の跳躍に対応できないと感じていた私がちょうど技術ロードマップ委員会の活動に前のめりになっていたときに刊行された。

技術ロードマップ委員会では「フューチャーデザイン」などのバックキャスティング手法による未来予測が検討され、実際にワークショップもその応用手法を用いて開催されていた時期に当たる

ちょうどその頃時宜を得て本書は刊行された。

未来は予測するものではなく創造するものである

本書の目次を見ると、章の次に大量のキーワード(見出し)が並んでいる。このうち、心に刺さったキーワードを並べておく

まえがき 未来とは「予測する」ものではなく「創造するもの」である

・馬車の発想から逃れられないうちは自動車を発明することはできない
・未来は恐れを知らぬ「楽観主義」によって創造される
・「考える自由」を取り戻すために
制約事項を取り払い、何でもありの状態から未来を<再起動>する

パート1 <SF思考>とは何か?

1.物語の力

・物語は「仮説」を共有するためのツール
・ひとは「虚構」の中を生きている

「因果推論の科学」の、人のみが仮定推論できる記述を想起した

・ストーリーをすばやく可視化するためのフレームワーク
「準備」「理解」「発散」「決定」「試作」「検証」
・優れたストーリーだからこそ再現性がない
新規性・共感性・構築性・論理性

2.オルタナティブを思考/志向する<SF思考>

・三つの分類
「教育的ストーリー=疑似小説」
「伝道的ストーリー=疑似科学」
「思弁小説=科学の方法に則ったSF小説」
・フィリップ・K・ディックによる定義
世界に対して懐疑的な精神を貫き、自分自身の固有の思考と感情を持ち続けようとする、ある一つの人間の生き方

3.世界におけるSFとビジネスの関係

・VUCAの時代、ビジネスがSFを求めている
V:変動U:不確実C:複雑A:曖昧
・国家戦略の礎
ムーンショットを想起した

・日本企業のSF活用例

パート2 <SFプロトタイピング>をはじめる

1.自由な思考・議論のためのマインドセット

・目を開けたまま夢を見るためのツール
1.SFプロトタイピングの実施
2.スコープ定義
3.設計・実装
・ブルーオーシャンに出るために
本当のイノベーションは「妄想」ドリブンでしか起こりえない
・ボールをできるだけ遠く、あらぬ方向に投げてみる
バーチャルキャスト/ドワンゴの「ちょっと間違った未来」のキャッチフレーズを思い出した

https://av.watch.impress.co.jp/docs/series/rt/1216983.html

・イシューからはじめない
1.目的を設定し、何を得たいのかを考える
2.誰か一人で作りすぎない
3.作品そのものより「チーム全員の妄想を爆発させる」ことのほうが貴重

2.SFプロトタイピングのプロジェクト進行

・作品を作る過程で起きる「議論」こそが重要
・必要なのは「純粋なおしゃべり」

目的を決める
テーマを決める
規模を決める
メンバーをアサインする
・ワークショップの実例
「中動態の世界」提起から既存メンバーだけでは絶対に生まれない視点や議論が生まれた
・作業項目
事前作業
1.SFプロトタイパーにテーマを伝える
2.SFプロトタイパーがテーマに沿ったアウトライン(数行・複数)作成
SFプロトタイピング
3.ファシリテーターが説明
4.SFプロトタイパーがアウトラインをプレゼン
5.メンバー全員でディスカッションし、アウトラインの内容を詰める
事後作業
6.SFプロトタイパーが、作品を完成・納品
7.作品にもとづき、プロダクト計画や事業計画作成に着手
・遊びを仕事にし、遊ぶように仕事をする

3.物語のアプローチを考える

①アプローチを選ぶ
フォアキャスティング
バックキャスティング
②アウトラインを作る
・WHY:最も描きたいものは何?
・WHEN:舞台はいつ?
・WHERE:舞台はどこ?
・WHO:主人公は誰?
・WHAT:現実と物語の差違はなに?
・HOW:差違はどのようにして起きている?
「変化」と「対立」を明確に描く
③作品を完成させる

・尖った物語にはセンス・オブ・ワンダー(異化作用により自分の世界観が崩壊する作用)がある
1.ワンアイデアに絞る
2.メッセージを明確化する
・物語を検証する
冒頭を読んだだけで何についての物語かわかる
要点が明確で、無関係な情報は可能な限り省かれている
視点に新規性があり「だからなに?」の問いに答えられる
因果関係が明確

4.物語を生み出すコツ

・行って帰ってくる物語
天命、決意、境界線、メンター、悪魔、変容、課題完了、故郷へ帰る
・三幕構成
冒頭:問題提起
中間:問題解決を試みるも失敗
結末:問題解決を試み、成功
・伏線
・どんでん返し
田丸雅智メソッド

パート3 <SFプロトタイピング>のケーススタディ

1.未来の服を考える「母を着る」

2.未来の都市を考える「ペーンポーイ文明における都市型演算機構の活用事例

3.COVID‐19以降の社会を考える「踊ってばかりの国」

あとがき 奇跡を信じること

SFを書くことは楽しいことで、物語を作ることは楽しいこと

おわりに

日本機械学会技術ロードマップ委員会の委員長が山崎美稀さんに代わり、ネット会議で「SFプロトタイピング手法」を紹介したら、積極的に取り入れる方向で検討していただいた。
従来手法による未来予測を強く推す方もおられたので、結局両手法を併用する形で落ち着いている。

夢の一つはSFプロトタイピングの場数を踏んで、
SFプロトタイパーになること

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