秋元康の歌詞が情けない


タイムマシーン乗って
2人が出会う前に行こう

君に話しかけずに通りすぎてしまおう


乃木坂46の11枚目シングルのカップリング曲、「君は僕と会わない方が良かったのかな」(以下:君僕)のこの歌詞が、何年もずっと咀嚼出来なくて聞く度に苦しくて辛いのに、何故か愛おしささえ感じてしまう。

この曲はタイトル通り、恋人と別れた男子が恋人が自分と出会わずに幸せになれた世界線を歌ってる。
曲から推測できる情報は、

・2人はまだ学生
・付き合ってる間に何度かすれ違いが起きてしまい、気づいたら信用を取り戻すのは難しい状態になってしまった
・男子側から電話で別れを告げた
・男子側は今も彼女が好き

この情報だけでもどうも男子側が情けなくて、普通に聞いていたら共感すらできないだろうのに私はこの「僕」の気持ちを考える度に泣きたくなる。

何がダメだったのかは分からないけれど、2人はもう修復が間に合わないところまで追い込まれてたみたい。
それでも彼女から別れを告げることはなくて、最終的に直接は言えないけれど「僕」が電話で一方的に別れ話をして。「僕」は項垂れながらなんとなく道を歩いてはカフェの中の恋人を見て心を傷める。

正直、何してんの?と思ってしまう。

私は女子だから男子のこういう気持ちが一切理解できない。
というよりは女子は双方の感情を第一に重きにおいて、そこから理性的に恋愛をするけど、男子は理性と欲望の間で恋愛をしてるイメージ。

自分一人で最後の結論まで出して、きっと彼女の意見も聞かずに別れたにも関わらず一丁前に悲しんで、「だって、今も好きなんだ」なんて言う「僕」はあまりにも身勝手すぎる。
その上「君は僕と会わない方が良かったのかな」「僕よりもっと大人の誰かと恋をしてたら」なんて言うんだから、彼女はたまったもんじゃない。

彼女から別れを告げなかった時点で彼女はきっと、僕との時間を愛おしく思ってたし幸せだと感じていたと思う。
お互いにズレが生まれ始めて彼女自身も不安に思うことが沢山あっただろうけど、それでも彼女から離れることはなかった、という事実を全て無視してでも僕は別れる必要があったのだろうか。

まあ身も蓋もない話をすれば、いずれは別れる2人だと思う。
それでも彼女は「今」別れることを選択してなくて、彼女からしたら修復可能範囲の関係だったのかな。

分からないけど、直接別れも言えない僕に待ってる未来なんて全部同じなのかも。

これは自分の経験も含むけど、男子側って完全に嫌いになる前に別れを告げることが多い。
話し合いもロクにせず、自分一人でぐちゃぐちゃ考えた結果が「これ以上にはなれない」とか、「これ以上一緒にいたら嫌いになる」とか空想の話とか理想論とか。
なんか、うるせ〜!やかまし~!黙ってついてこい!!って言いたくなるような理由で別れてくる男がこの世にどれだけいるか。
そしてすぐ後悔してSNS頼りに連絡をとってくる。
馬鹿なんじゃないか。あのときまともに話もしてくれなかったやつが今更何言ってるんだ。
そう思うのに、私は冒頭の歌詞を嫌いになれずにいる。

”タイムマシーン乗って2人が出会う前に行こう”

本当にどうやって生きてたらこんな考えになるんだろう。

幸せを知って痛みを知るくらいなら、最初から知らない方がよかった。

そういうことなのかもしれないけど、私からしたら愛した人から得た痛みすら愛おしくてこれからの自分を育ててく重要な経験の1つなのに。

”君に話しかけずに通り過ぎてしまおう”

ここに「男」が全て詰まってる。
経験を全てなかったことにしてしまう、つまりこれって、経験値を貯めてレベルアップしたのに負けそうだからデータリセットしてやり直します。ってことでしょう。
それじゃあ一生成長しないよね。

きっと「僕」はずっと苦しい思いに気が付かないふりをして、すぐに新しい恋人を作るのだろう。
そして彼女は時間をかけて、「僕」よりもっと素敵な誰かと出会っていくんだろうな。

情けないなぁ。
でもこれだけ感情を揺さぶられる歌詞に驚いちゃった。

この時期の康の歌詞、本当にどれも好きなんだよね。同じシングルだと立ち直り中とか。
それこそ確かこの一、二年以内くらいに欅がデビューして人気爆発した気がするし。

個人的に1番歌詞が好きなのは今、話したい誰かがいる。
いっぱい好きなフレーズがあるんだけど、ひとつ上げるなら

林檎を剥くとき、母親の指先が滑って切ってしまいそうで嫌いと嘘ついた。

かな。
わたしは康の下手くそすぎる優しさの歌詞が好きなんだ。

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